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購入まで約2年、長期購入サイクルの顧客分析にアトリビューションを活用したCRM事例

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2011/11/14 08:00

 2011年10月19日~21日に米国ニューヨークで開催されたデジタルマーケティングのイベント「eMetrics:Marketing Optimization Summit」。2日目午後には「Attribution: Everybody’s Doing It」と題した発表が行われた。日本では広告の間接効果として語られることが多い「アトリビューション」について、CRM的な視点での取り組みが紹介された。

 登壇したのは、ダイレクトマーケティングやデータベースマーケティングを手掛けるHarte-Hanks社のアナリティクス担当シニアVP、ダン・ルビン氏。1995年から同社のアナリティクス部門を率いてきたベテランだ。

Harte-Hanks社アナリティクス担当シニアVP ダン・ルビン氏
Harte-Hanks社アナリティクス担当シニアVP ダン・ルビン氏

アトリビューションを組み込んだ予測モデルを作成、その意義とは?

 セッションでは、実際には3人のスピーカーが登壇したのだが、最も興味深かった『Predicting Engagement to Drive Purchase(エンゲージメントを予測することで購買につなげる方法)』と題した発表について紹介したい。テレビから携帯電話まで幅広い製品を抱える家電メーカーの事例が紹介された。

 このメーカーの場合、製品の購入サイクルが平均で21.7か月と比較的長いため、次の購入タイミングまで顧客の興味関心を維持する必要がある。

 そのためには、確実にエンゲージメント(レスポンス)につながる施策を継続的に実施する必要があるが、興味関心を十分な期間維持できないと機会損失につながり、長すぎると過剰投資になるのが難しい、とルビン氏は背景を説明する。

同社の実施したポイント

 この事例で重要なのは、以下の3点だろう。

1. エンゲージメントを中間ゴールとして設定

 約2年後に予想される購買をゴールとして設定すると、施策の結果を評価するまでに時間がかかってしまい、PDCAサイクルを回すことが難しくなる。そこで、「継続的なエンゲージメントが最終的には購買につながる」と仮定し、エンゲージメント(顧客から企業への働きかけ、レスポンス)を中間ゴールとして設定したのだ。

 つまり、“キャンペーンなどの施策に反応する確率を高めることによって、着実に購買へつなげていく”という考え方だ。エンゲージメントに至らない施策は失敗であり、顧客の興味関心を次の購買タイミングまで維持できなくなってしまう。ECサイトにおける中間的なゴールとしてのマイクロコンバージョンに近い。

2. エンゲージメントをスコアリングにより定量化

 さらに、この「エンゲージメント」を明確に定義し、各種の計測可能なアクションに重み付けをする(スコアリング)ことにより、エンゲージメントの定量化を可能にした。

3. 予測モデル作成による顧客の選別

 エンゲージメントしやすい条件(過去の行動、各種調査への回答内容、デモグラフィック情報など)を洗い出し、回帰分析を行うことで、将来のエンゲージメント率と高い相関を示す条件をモデル化した。この結果、オプトインした顧客全員を対象に同じ施策を打つのではなく、確実なエンゲージメントにつながる顧客を抽出したターゲティングが可能になった。

 これらの3点によって、施策の精度を高めつつ、定量的な評価が可能になっただけでなく、中間ゴールとしてのエンゲージメントを継続させることにより、着実に購買へつなげていくことが可能になったのだ。各ポイントについて、詳細を紹介していこう。

エンゲージメントの定義とスコアリング

 まずは、前述の(1)(2)のポイントに関する解説内容を紹介していこう。「今回は、エンゲージメントを『購買以外の計測可能なインタラクション』として定義した」とルビン氏。具体的には、以下のような行為が含まれる。

  • メールの開封率
  • クリック率
  • Webでの登録率
  • Web上での閲覧行動パターン
  • ソーシャルネットワーク上での関係性(「いいね!」やフォローなど)

 「これらのインタラクションを個別にモデリングすることもできたが、それぞれに重み付けをして合算した値をエンゲージメントスコアとしてシンプルに扱うことにした。(中略)まずは仮説としてのモデルが正しいことを検証し、その後にデータを蓄積してモデルを精緻化していけば良い」とルビン氏は主張する。

 下図のように、メールキャンペーンにおける開封やクリックなどの行為に重み付けをして加算することで、顧客ごとのエンゲージメントスコアを算出した。これは施策の評価に使う数字であり、Eコマースに置けるコンバージョン率と同じように扱うことができる。


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著者プロフィール

  • 清水 誠(シミズ マコト)

    Webアナリスト/改善リーダー。1995~2004年まで凸版印刷・Scient・RazorfishにてWebコンサルティングやIA・UI設計に従事した後、事業会社側へ転身。UX/IAやデジタルマーケティングの導入による社内プロセス改善の推進と事例化を行っている。ウェブクルーでは開発・運用プロセスを改善し上場を支援、日本アムウェイでは印刷物のデジタルワークフローとCMS・PI...

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連載:eMetrics Marketing Optimization Summit, New York, 2011

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