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[横山×田島対談]大手広告代理店ではトリプルメディア・キャンペーンをやりきれない? デジタル・マーケティング全盛時代のコミュニケーション開発とは

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 先進企業のメディアコミュニケーションは、トリプルメディアの活用が当たり前になりつつある。一方で、それをサポートする広告代理店側の態勢は整っているのだろうか。デジタルインテリジェンスの横山隆治さんと、リクルート 住まいカンパニーでSUUMOのブランドマネジメントを担う田島由美子さんに語ってもらった(進行:MarkeZine編集長 押久保剛)。

トリプルメディア・コミュニケーション開発は、広告主がディレクションするしかない?

デジタルインテリジェンス代表取締役 横山隆治さんと
リクルート 住まいカンパニー ブランドマネジメントグループ 田島由美子さん

――まずは、最近田島さんが取り組まれたキャンペーンのご紹介と、課題として感じられたことをお話しいただけますか。

田島:わかりやすくお話しするため、前回の「ドンスーモ」の例からご紹介しますね。前提として、住宅は低頻度商材ですので、顕在層だけを狙ってもSUUMOサイトの利用経験率を向上させるには限界がありました。そこで、ドンスーモという新キャラクターをフックに、「新しい顧客層を開拓し、SUUMOサイトの利用経験率を向上させる」というミッションを持ち、潜在層にブランド体験を積んでいただくマス×Web×ソーシャルの統合ブランドコミュニケーションを展開しました。

 そもそも統合ブランドコミュニケーションとは、単純に別々のメディアで同じクリエイティブを展開するというものではなく、それぞれのメディアの特徴を活かして行うものです。マスメディアは「リーチパワー」があるけれど、1回での接触時間と表現力が限られています。Webサイトは、「高い表現力」からカスタマーに実際に体験してもらう力が強いものの、その体験を広げていく力は弱い。「拡散力」があるのは、ソーシャルメディアです。この3つのメディアすべてを通して、1つのメッセージを体験していただくことを狙いました。

 今回は新キャラクターとして「スモミ」を登場させました。キャンペーンに参加された皆さんにいわゆる「神の手」になっていただいて、「スーモとスモミをエージェントから救い出す」というもの。毎日逃げるスーモとスモミを助けるというブランド体験を通して、エンゲージメントを深めていただきました。

 結果、ミッションの「SUUMOサイトの利用経験率」を自社で調査したところ、潜在層に対するブランドコミュニケーションはもちろん、顕在層の利用率も上げることができました。以上が簡単ですが、キャンペーンの概要と成果です。

横山:マス×Web×ソーシャルということですが、コミュニケーション開発の仕組みをどうやって組み立てられました? 昔からのやり方で、広告代理店からマーケティング、クリエイティブ・ディレクター、営業だけが来ても難しいでしょう。誰を呼んで、どうやって仕切って、オリエンテーションされていますか?

田島:現在は、大手広告代理店さんとお取引させていただいています。そのチームで統合ブランドコミュニケーションに取り組むのは3回目だったのですが、こちらである程度企画骨子を固めてご依頼しないと、なかなか意図どおりの提案をいただけないということがありました。

 企画の骨子を作る際、統合ブランドコミュニケーションでは「世の中の流れに乗る」ことを重要視しています。ドンスーモやスモミなど、新しいキャラクターをフック、Webでゲームを体験をしていただくことが、ブランド体験につながりそうだという仮説は見えていました。

 スーモとスモミが逃げるという設定にしたのは、『逃走中』が流行っていたこと。それから、実際にかくれんぼができる遊園地ができて話題になったこと。これを受けて、「鬼ごっこやかくれんぼが世の中に浸透している。それを使ったゲームにしてほしい」というオーダーを出したんです。

 また、前回のキャンペーンを分析した結果、Web上でユーザーに体験していただくことが大事だという知見を得ていたので、今回は「Web体験を促すマス広告とはどういったものなのか」とご依頼しました。これまでの考えでは、マスを先に考えて、Webはそれを受け取る存在でした。でも、マスから考えるだけでは、Webにうまく接続できないことがありました。だから今回は、Web体験を促すためのマス広告という考えで位置づけて、代理店のクリエイティブ・ディレクターの方にご提案いただきました。

横山:御社の場合は、そこまでわかっていらっしゃるからそういうオリエンテーションをされて、なんとかできるんですよ。代理店は言われたとおりにすればいいから。でも、本来はそうではなくて、コミュニケーション開発の段階から発想してほしいですよね。

 なぜそれができないかというと、コミュニケーション開発はもう、CMのような作品を作るんじゃないんです。ユーザーサービス的なやりとりの枠組みを作って、走らせながら良いほうにもっていく。CM職人さんは15秒、30秒の中で完結した作品づくりをしようとするのですが、それは今、すごく小さい領域になっている。

 Web体験が重要となると、ユーザーの反応を見ながら継続的に良いほうに持っていくという全体像が発想できないと難しい。代理店でなく、「人」から選ばなければならない状況になっています。だから、ある程度のトータルなコミュニケーションのコンセプトワークは、広告主さん側でおやりになっているという。

田島:横山さんのおっしゃるとおり、前回のキャンペーンの反省点は、「CMの15秒で完結」してしまったこと。本当にメッセージが完結してしまい、Webに人が来なかったんです。そこで今回、「まずWeb体験から考えてほしい」とオーダーしました。そういったオーダーは、これまであまりなかったようですね。


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著者プロフィール

  • 押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

    メディア編集第2部 部長 兼 MarkeZine編集部 編集長 1978年生まれ。立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、『MarkeZine(マーケジン)』の立ち上げに参画。2006年5月のサイトスタート以降、MarkeZineの企画・運営を一...

  • キベジュンイチロウ(キベジュンイチロウ)

    福岡生まれ。大学新聞部での取材をきっかけに写真を始める。在学中から、フリーランスとして仕事を開始。大学卒業後は、ベンチャー企業で5年間フリーペーパー・WEB・Eラーニング教材などの制作業務に従事した後、独立してフリーランスに。得意な被写体は「人」。「看護」「医療」分野の経験が豊富。写真ではないが、I...

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