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リクルート坂本氏、コントロールエーの谷本氏が語るコミュニティパネルのビッグデータ活用

 12月4日に「データサイエンティストサミット」が開催。リクルートテクノロジーズとコントロールエーのセッションでは「リクルートのコミュニティパネルのビッグデータ活用について」と題し、リクルートテクノロジーズの坂本千映子氏と、コントロールエーの谷本秀一氏が、顧客のリサーチ新手法「コミュニティパネル」を通じたビッグデータの活用事例を紹介した。

“顧客の声”を商品開発に生かし売上1.4倍に

株式会社リクルートテクノロジーズ 坂本 千映子 氏
株式会社リクルートテクノロジーズ
坂本 千映子 氏

 リクルートテクノロジーズは、リクルートグループのITとネットマーケティングを横断的にサポートしている企業だ。午前中のパネルディスカッションに登壇したデータサイエンティストの西郷彰氏など、ビッグデータ活用のスペシャリストも多数在籍する。坂本氏は、2011年からコミュニティパネルR&D 推進を担当。これまで短納期開発スキームのプロジェクトや、サイトUI改善でコンバージョンを最大化するR&Dなどを担当してきており、サイトのUXやデザインに関するスペシャリストと言える。

 坂本氏によると、コミュニティパネルというのは「ソーシャルメディア上にカスタマーコミュニティを構築し、カスタマーと企業がインターネット上で対話しながら消費者意識を調査すること」で、マーケティング調査の最新手法だという。一回ごとに参加者が変わる市場調査ではなく、特定の関心を持ったオンラインコミュニティ上で、一定期間メンバーが交流することが特徴で、MROC(Marketing Research Online Community)と呼ばれることもある。

 「サービスの立上期、成長期、成熟期では、顧客を理解するための課題が変わってくる。特に、成熟期に入り、これまでとは違う概念を持った新しい価値を提供する場合、顧客が何を考えるのかをよりスピーディーに深く知ることが求められる。その答えがコミュニティパネルにあると考えて取り組んでいる」(坂本氏)

 具体的なコミュニティパネルの例としては、通販サービス「赤すぐ」での展開がある。ママ隊と呼ばれる赤すぐの商品開発に協力してくれるママを中心としたコミュニティを通して実際の商品開発を行った。コミュニティの活動は、2013年3月~9月までの半年間にわたり、人数は219名、無償で協力したという。

 坂本氏によると、コミュニティパネルのメリットは「カスタマーの本音が聞けること」、そして「多様で唯一無二のデータが得られること」だ。これは、カスタマーとの継続的な関係があることや、自宅というリラックスした環境から参加できること、メンバーとのやりとりがあることが背景にあるという。たとえば、「冬に使いたいマタニティパジャマについて」の質問では、「どんなものを使用しているか」「良い点、悪い点は何か」「ほかにどんなものを使っているか」など、だんだんと深堀りする質問を対話形式で行い本音を理解する。

 これにより、今までの調査では発見できなかった情報が聴取可能になる。たとえば、「子供との寝方」「旦那さんとの育児参加」「お金の使い方」「教育の方針」「夫婦関係」「イノベーターかアーリーアダプターかといったタイプ(性格や気質)」などだ。

 そうした顧客理解の手法のもと半年間で10個の商品を実現。そのうちの1つに、おしりふきのパッケージのデザインをコミュニティのメンバーの投票で決めたという例がある。このケースが興味深いのは、売上に直接貢献したことだ。ほかの条件をできるだけ変えずに比較したところ、前年同月比で売上は144%(5・6月)の伸びを示したという。

 この理由として、赤すぐママ隊の活動を通して76%のユーザーの好感度が改善し、約2割のユーザーは購入頻度が増えたことが挙げられる。また、興味を持ったユーザーの半分が友人にエバンジェリストとして宣伝してくれ、そのうちの7割が商品に興味をもってくれたという。

 なお、コミュニティパネルでの分析には、Hadoopを使ったテキストマイニングと画像解析を組み合わせて行っている。坂本氏は、コミュニティパネルにビッグデータ解析を組み合わせることの価値として「バイアスを排除したユーザーの深い理解が可能になることだ。同じ行動モデル、同一の価値観など似たカスタマーごとに意見の違いを分析することでそうした理解が可能になる」と強調した。

収集すべきデータを見極め、まずはスモールスタートを

株式会社コントロールエー 代表取締役 谷本 秀一 氏
株式会社コントロールエー
代表取締役 谷本 秀一 氏

 続いて、実際にコミュニティパネルの開発構築を手がけたコントロールエーの谷本氏が登壇。ビッグデータ活用にはまだ誤解が多いことや、データ活用における設計の重要性、データを収集するためのプラットフォームについての考え方などを紹介した。

 コントロールエーは、ビッグデータ解析を専門に行う会社ではなく、消費者データの収集と分析、活用を得意とする会社だ。コミュニティパネル/MROCを構築するためのシステムやタブレット調査システム、マーケティングパネルシステム、会員DB管理システムなどを提供するほか、それらシステムの運営やリサーチ、さらに、マーケティングプロモーションの支援も行っている。

 谷本氏によると、実務レベルで相談を受けるなかでも、ビッグデータについてはまだまだ誤解があるという。たとえば、「大規模データがないので、ビッグデータの活用はできない」や「集められるデータをかたっぱしからすべて収集すべきだ」「ビッグデータ活用には膨大な投資が必要」などだ。

 「データ分析には必ずしも大量のデータが必要なわけではない。また、たくさん集めたからといってその収集や保存コストに見合う結果がでるわけでもない。重要なことは、データ活用全般における『設計』だ」

 設計というのは、システムの設計ではなく、課題や目的を明らかにすることやどのように事業に活用するかといった取り組みを全体のことを指している。具体的には、そもそも何のためにデータが欲しいのか(課題・目的)、どのようなデータを収集し、どうやって統合するか(収集・統合)、どのような分析を行うか(最適な分析)、結果をどう事業へ活かすか(活用)という大きく4つの取り組みが重要になる。

 「1つめの事業の課題と目的がはっきりしていれば、4つめの活用もおのずと決まってくるはずだが、意外に最後の部分が抜けているケースが多い。結果をどう生かすかを踏まえた設計が大切だ」(谷本氏)

 最後に谷本氏は、同社が提供するビッグデータ収集プラットフォームを紹介しつつ、「しっかりとした設計を行えば、既存のデータを連携させてスモールスタートすることも可能だ。かならずしも莫大な投資は必要ない。集めるべきデータは何なのかを見極め、取り組んで欲しい」と締めくくった。

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この記事の著者

齋藤 公二(サイトウ コウジ)

インサイト合同会社「月刊Computerwold」「CIO Magazine」(IDGジャパン)の記者、編集者などを経て、2011年11月インサイト合同会社設立。エンタープライズITを中心とした記事の執筆、編集のほか、OSSを利用した企業Webサイト、サービスサイトの制作を担当する。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2014/01/08 13:01 https://markezine.jp/article/detail/19105