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Owned Media Report~オウンドメディアマーケティング戦略の潮流

「企業視点ではなくユーザー視点を持つことが大切」
東芝のB2Bオウンドメディアにおけるインバウンドマーケティング


 企業のオウンドメディア活用の実態をお伝えする「Owned Media Report」。今回は「スマートコミュニティ」サイトを運営する東芝を訪ねました。インバウンドマーケティングを成功させる秘訣とは?(聞き手:松矢順一氏)

今回お話を伺ったのは…
株式会社東芝 営業統括部 広告部 参事
荒井孝文氏

東芝に入社後、地方支社、本社の営業企画部、情報処理・制御システム事業本部、官公情報システム部、iバリュークリエーション事業部等で、スタッフ業務や営業など幅広い業務を経験した後、2006年10月、広告部に異動。現在に至る。マス広告からインタラクティブなWEBサイト等のデジタルマーケティングを手がけ、最近ではインバウンドマーケィング/コンテンツマーケティングに注力している。 

グローバル展開を見据えインバウンドマーケティングへ取り組む

 ── スマートコミュニティサイトをはじめた背景、目的を教えてください。

 東芝グループ(以下、東芝)は、環境への配慮と快適な生活の両立をはかる「スマートコミュニティ」の実現に貢献していく方針があり、東芝のスマートコミュニティ事業をグローバルで推進していくためにサイトを立ち上げました。

 「スマートコミュニティ」とは、情報通信技術(ICT)を活用しながら、再生可能エネルギーの導入を促進しつつ、電力、熱、水、交通、医療など、あらゆるインフラの統合的な管理・最適制御を実現し、社会全体のスマート化を目指すものです。

 グローバルでのB2B事業展開はお客様の顔が見えづらく、新規顧客獲得における課題もさまざまです。時間の制約がないオンライン上に効果検証も図りやすいデジタルコンテンツを用意することが最良と考え、「スマートコミュニティ」サイトを起点としたインバウンドマーケティングに取り組みはじめました。

スマートコミュニティ」トップページ
スマートコミュニティサイト

グローバルなB2Bオウンドメディアで見込み顧客を確保する方法

 ── グローバルでのマーケティングとなると、国内のマーケティングとはまた違った苦労があったのではないでしょうか。

 はい、その通りです。日本では東芝ブランドは認知されていますので、シーディング(参考,ITpro)をすれば情報が広がりやすい環境です。一方、グローバル環境となるとさまざまなメーカーが存在し、その中で東芝がブランド力があるとは決して言えません。グローバル展開では、まずB2B事業の東芝を知ってもらう必要があります。

株式会社東芝 営業統括部 広告部 参事 荒井孝文氏
株式会社東芝 広告部 デジタルコミュニケーション統括担当 参事 荒井孝文氏

 スマートコミュニティ事業を推進していく方針が打ち出された際にまず、「スマートコミュニティ」というワードで検索をしてみたところ東芝が検索上位に表示されず、サイト・コンテンツに到達できないという1つ目の課題が浮き彫りになりました。当時はスマートコミュニティに関連したコンテンツを発信していなかったため、オーガニックでの検索にヒットしなかったのです。マス広告を出稿し検索を促しても東芝としてオンライン上にコンテンツがなければ訪問してもらうことはできません。まずはオウンドメディアにコンテンツを保有する必要があったのです。

 そこで2011年に情報発信用のオウンドメディアとして「スマートコミュニティ」サイトを立ち上げました。既存の映像コンテンツの活用や新規コンテンツを作りFacebookやTwitter、ニュースリリースなどで拡散し、その結果「スマートコミュニティ」と検索すると東芝のコンテンツが上位表示されるようになりました。

 次に2つ目の課題にぶつかります。サイト訪問者は増えたものの訪問者を増やすだけではビジネスにつながりません。B2Bでのオウンドメディアの役割は何かという議論が社内であり、その結果グローバルなB2Bの「スマートコミュニティ」サイトは、情報発信だけではなく見込み客を獲得すべきという、今にして思えば当たり前の結論に達しました。

 そのために必要な要素を整理したところ、SEOの再強化、コンテンツ更新負荷を軽減するCMS導入、B2Bに必要なソーシャルメディア連携、リード獲得のためのメール配信システムなどがリストアップできたのですが、それら全部を組み合わせるのは非常に大変な作業であり、業務効率が落ちかねません。

 そこで導入したのが統合管理ツールのHubSpotです。HubSpotはコンテンツ管理、SEO強化、メール配信、ソーシャル連携など必要なことが全部できます。ツール導入と同時にLinkedInやSlideShareなどのソーシャルメディアとも連携しました。

 現在は、ソーシャルメディアの効果も検証し、サイト誘引と情報発信、双方を見ながらSEO対策も行っています。ブログの効果も見て、さらにニュースリリースも活用し被リンクを増やすことも続けています。もちろん日本語版だけでなく、英語版も同じように実施展開しています。半年のデータを精査したところ、ニュース配信やブログ投稿の影響でリード獲得数は確実に増えるということが分かってきました。

 ── 情報の発信量とリード獲得数は相関関係になっているのでしょうか。

 はい、半年間の数字を見る限りその傾向が顕著に出ています。発信量を増やすための工夫もしました。例えばブログは、タレントブログのような面白く柔らかい内容の投稿をイメージしてか、堅い雰囲気の社内では敬遠されていましたので、ニュースリリースを噛み砕いて書くだけで十分ブログコンテンツになるということを伝えました。

 ── まさにインバウンドマーケティングに取り組み、それを成果へつなげているお手本のような話だと感じます。インバウンドマーケティングの有効性についてどう感じますか。

 従来の広告を活用したコミュニケーションは、広告主側がメディアに合わせたクリエイティブを制作しターゲットに合わせた広告枠を買い、配信するという考え方のもとに運用されてきました。インバウンドマーケティングはその逆で、広告主側がオウンドメディアで適正なコンテンツを数多く保有し、コンテンツへ検索エンジンやソーシャルメディア経由で訪問してもらうことが基本的なコンセプトとなります。コンテンツ、つまり製品・ソリューションに興味関心の高い見込み客をより効率的に獲得していくには、優れた方法だと感じています。

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この記事の著者

松矢 順一(マツヤ ジュンイチ)

株式会社アサツーディ・ケイ クロスコミュニケーション局を経て、伊藤忠商事株式会社情報産業部門でデジタルマーケティングを担当し、株式会社ADKインタラクティブ取締役就任。その後、楽天株式会社メディア事業副事業長を経て株式会社Tube Mogul執行役員就任。著書には共著で『次世代広告コミュニケーション』『トリプルメディアマーケティング』。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/02/07 15:45 https://markezine.jp/article/detail/19119

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