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検索は「コンバージョンへの王道」、ゴルフダイジェスト・オンラインの「検索・インフラ改革」のすべて

ゴルフ場予約・情報サイト「ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)」では、検索機能をリニューアルすることでユーザー行動が劇的に変化した。ゼロスタート社と取り組んだ検索機能の改善と、ゴルフ情報サイトとしてのブランディングについて話を聞いた。

「利用者は男性が9割」、3つの事業でゴルファーにリーチ

― 「ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)」は、ゴルフ場予約をはじめとするゴルフ関連サービスを提供してこられた老舗であると同時に、オンライン・マーケティングに注力してこられた企業としても知られています。まず、展開している主要サービスについてあらためておうかがいできればと思います。

加藤 我々はゴルフ関連サービスということで主に3つの事業をやっています。ひとつが私の属しているゴルフ予約ビジネスで、ゴルフ場から送客人数に対する手数料をいただいています。もうひとつはEC。ゴルフ用品の販売です。そして、3つめがゴルフに関するニュース記事の配信で、こちらは広告収入ビジネスになります。

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン ゴルフ場ビジネスユニット サービス開発部 販売促進チーム マネージャー 加藤一輝氏

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン 
ゴルフ場ビジネスユニット サービス開発部 販売促進チーム
マネージャー 加藤一輝氏

この3事業は会社の立ち上げたときから手掛けています。これを「トライシクルモデル(tricyclel:三輪車)」と呼んでいるのですが、3つのゴルフ関連サービスを同時に手掛けていること、これが他社にない特徴だと思っています。

― 利用者の中心はゴルフ・プレーヤーですね。

加藤 お客様としてはやはり30代から50代が中心で、男性が9割です。おそらく一般的なECやウェブサービスと比べると年齢層が高めで、40代・50代が非常に大きなウェイトを占めています。また、ゴルフというサービスの特性上、世帯年収が非常に高い方が多いという特徴があります。

― 女性の利用者の割合も増えているのでしょうか。

加藤 ECについては女性の比率がもう少し高くなりますが、ゴルフ場の予約に関しては何年も前からほとんど比率が変わっていません。ゴルフ場を利用する方は、ゴルファーの中でもそれなりにゴルフに慣れてる方になるので。我々は、昭和38年創刊の専門誌「ゴルフダイジェスト」を出版している、ゴルフダイジェスト社とは関係会社であり、ユーザーの中には古くからのゴルフファンも多く、他社と比べると、少し上級者、ゴルフに対してのヘビーユーザー層が多いのではないかと思います。

― 利用者のデバイスの変化についてはいかがでしょうか。

加藤 スマートフォンからのアプリとブラウザを含めたアクセスは、アクセス全体の半分ぐらいに来ていて、年内には半数を超えると思います。スマートフォンならどこにいても利用できるとはいっても、昼休みにならないとスマホをいじりにくいのでしょう。スマートフォンで12時の昼休みにピークが来る傾向は強くなっています。一方で夕方のピークはPCのほうが早い。スマートフォンで予約する方は、帰る時間まで我慢して、電車の中などで検索しているのでしょう。PCよりも1時間ぐらい遅れて19時くらいにピークが来ます。

膨大なデータ処理をいかに高速化するか

― ゴルフ場を探して予約する際には検索機能を使うわけですが、ユーザーが使いやすい検索を実現するためにどんな工夫をしているのでしょうか。

加藤 ゴルフ場は、プレー日とスタート時間を指定して予約をします。ひとつのゴルフ場で1日に数10枠というように「スタート枠」を提供してもらいます。予約の際には、「食事付」といったプランも選択できます。「ゴルフ場」×「プラン」×「日にち」×「時間」……というふうに条件を指定して絞り込んでいきます。

ゴルフ場は全国に2400コースほどあり、GDOで予約が取れるのは1900コースくらいです。一般的なECサイトと比べて商品点数としては、決して多くありません。その代わり、1つのコースが複数のプランを出しており、1日にたくさんの時間枠があるため、結果としてデータ量は多くなります。

その膨大なデータ量をさばいて、正しく検索して素早く結果を返すということに、我々は非常に苦労していました。最初は検索エンジンを内製でやっていたのですが、高速化という部分が大きな課題となっていました。検索条件の掛け合わせがどんどん増え、ユーザー数も増加し、自社でやっていくのに限界を感じるようになり、高速に検索をする技術を持っている会社を探しました。複数のベンダーを検討する中で、われわれの要望に応えられるソリューションとして、ゼロスタートの商品検索エンジン「ZERO ZONE SEARCH」を導入したのは4年ぐらい前ですね。

― 高速性というのが重要なポイントなのですね。

加藤 一番のポイントはやっぱりスピードだと思っています。誰かが予約をすれば枠は減るわけで、それなりのリアルタイム性を持った状態で数十万件というデータを検索しなければならない。しかしながら「ZERO ZONE SEARCH」の導入前には、大量のデータを素早く検索するというノウハウがわれわれにはなかった。カスタマイズ性や検索性能、スピードについての課題があり、パートナーとしてお手伝いいただいたというのが始まりですね。

導入後は、レスポンス速度を維持するために徐々にサーバリソースを増加して対応をしていました。最近のリニューアルでAWS(Amazon Web Services)にインフラを載せ替え、スケールアウトが容易になりました。そのメリットを最大限活かすために商品検索エンジンを改修して、われわれとの連携の見直も図り、データの更新頻度が劇的に改善しました。

機能改善で劇的に変化したユーザー行動

― ユーザーインターフェイス(UI)についてはどうでしょうか?

加藤 2010年からゼロスタートの検索エンジンを使っていますが、導入から1年間はデータを蓄積/分析する事に専念し、大きなUI変更は行ないませんでした。その後、蓄積したデータをベースにユーザーテストやデータ分析をして、UIを大きくいじったのが2年ぐらい前です。

― 改善によって、どのような変化が生まれましたか?

加藤 検索を利用する人の数が増加するなかで、検索結果にたどり着くまでの検索回数が、UIを変えたことによって大幅に減りました。そこは非常によかったところかなと。UIを変更する前は、日にちや料金を入力したあと、検索条件を変えるともう一度最初から絞り込んでいくドリルダウン方式でした。それをチェックボックスで選べるようにして、条件に該当する件数を表示するようにしたのです。

それまで1500件あったのが、「昼食付」という条件をつけると1000件に変わる。件数がリアルタイムにわかるようになったことで、適切に絞り込んだ状態から検索をかけていくというように、ユーザー行動が変化しました。その結果、クエリの回数が減ったのです。目に見えてユーザーの行動は変わるなというのは感じましたね。

ゼロスタートとのパートナーシップ

加藤 インフラをリニューアルするときに、実は検索エンジンについても、ほかの業者やオープンソースを使った開発について検討しました。ゴルフ場予約における検索サービスというのは、コンバージョンに至る王道なわけでして、まさに主導線なんですね。そこに対してどれだけ良いものを作れるかというのは常に考えています。

― ゼロスタートとの複数年に渡るパートナーシップについて、いま振り返るとどんな印象をお持ちでしょうか。

加藤 当初は価値観の共有ができていないと感じるときがありました。しかし、担当者に足を運んでもらって認識を共有する中で、機能やUIについての提案をいただけるようになったのです。

検索が止まったら、その日の売上がほとんどゼロになる、いやゼロにはならないんですけれども(笑)、それくらいの覚悟がわれわれにはあります。というのも、検索エンジンを通してゴルフ場の情報を出しているので、検索ができなくなるとほとんどのページが機能しなくなってしまう。このことをゼロスタートと共有できたことが一番大きかったと思いますし、またそれを実現できる製品でもありました。

ゴルフというスポーツに貢献していきたい

― 「ゴルフダイジェスト」という歴史のある名前を掲げ、これまで実績を積み重ねてきたなかで、GDOというブランドについてはどのようにお考えでしょうか。

加藤 われわれには「ゴルフで世界をつなぐ」というキャッチフレーズがあります。ゴルフ専門の企業として、他社にはできないことをやっていく。ゴルファーのための会社で、自分たちもゴルフが好き。そういう部分をサービスに乗せて表現したいと考えています。そうした価値観がブランドとしての差別化につながってるといいなと思っています。

― 今年の5月には、ゴルフ場の送客人数が過去最高を記録しました。

加藤 ゴルフ場予約には100人弱の人間が関わっています。その数字を作るためには、UIの改善だけでなく、対ゴルフ場の営業を担っている人間の努力も大きいのです。我々のビジネスにとって、ゴルフ場から、どれだけ枠を出していただけるかは非常に重要です。商品がなければ売れないですから。

― ゴルフ場との信頼関係というのも大きいですね。

加藤 そこは担当者が一生懸命がんばってるところで、週3日はゴルフ場を何コースか回っています。非常にフェイス・トゥ・フェイスな、ある意味ちょっとウェットな世界、人間関係が大事な世界なのです。

われわれとしては、ゴルフ自体にも貢献をしていきたいという気持ちがあります。ゴルフ場が適正な利益を取れるようにする。われわれのようなサービスが料金のたたき合いをして、料金が下がっていかないよう、ゴルフ場の価値をしっかり伝えていく。ただ値下げするのではなく、特色を出したプランを出して集客をしましょうといった工夫をしています。

― 有名な名門コースがある一方で、さまざまな特色あるコースが全国にある。多様なコースを検索対象として選べるという前提があっての検索サービスだということですね。

加藤 もともとゴルフ場予約ビジネス自体は、非常に参入障壁が高いビジネス。その先駆者としてゴルフ場との関係をいち早く築き、全国1900コースと提携をしたことがビジネスモデルとしては成功要因だと思います。

一部の名門コースはわれわれと提携しておりません。本当にメンバーしかプレーできないようなゴルフ場というのはわれわれと提携する意味がないからです。ですから、2400コースのうち1900コース、残り500コースというのは、そういうメンバーシップの強いコースが残っています。逆に言えば、それ以外のところとはほぼ提携させていただいてるということですね。

小金井カントリー倶楽部も超名門コースですが、そういうところでも1日限りのイベントではありますが、プレー枠をいただいて「GDO OPEN CLASS」というイベントを開催しています。そういうことができるのも、われわれが長くゴルフの業界の中でやってきたことの意味なのかなと思いますね。

ゴルフ場に新しい集客手段を提供する

― 2013年6月には事前決済型の予約サービスを始めて、非常に好調だということなのですが。

加藤 ゴルフ場は天候などに左右されやすいこともあって、確実な収益を得るのがなかなか難しい状況です。ゴルフ場で空いている枠があり、料金を下げてもプレーしてもらいたいという場合に、こういったサービスを提供することで、プレーヤーとゴルフ場のニーズがマッチする。その代わりに事前に決済していただくということですね。クーポンサービスやフラッシュマーケティングのゴルフ版というイメージで考えたサービスですが、ゴルフ場に新しい集客手段を提供したいというところからスタートしています。

― これからチャレンジしようと、アイデアを温めているものはありますか?

加藤 検索まわりでいきますと、検索結果のパーソナライズや、よりお客さまが便利だと感じる検索結果の出し方に取り組みたいと思っています。降水確率や予想気温などの天気予報の情報を検索軸に加えるとか。今年のテーマであるインフラの変更が終わって運用も落ち着いてきているので、これからまた来年に向けて、新しいことにチャレンジしていきたいなとい考えているところです。

― 検索の重要性とともに、ゴルフというスポーツの世界の一端を知ることができました。ありがとうございました。

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2014/12/15 11:53 https://markezine.jp/article/detail/21231