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リゾームマーケティングの時代

AISAS提唱者、元電通顧問秋山氏との会食から3年……代理店はリゾーム化社会と対峙せよ

 AI、ロボティクス、IoT、音声認識……テクノロジーの進化が止まらない。ソサエティー5.0という言葉も生まれるなど、社会のあり方が急速に変わりつつある。その中で企業のマーケティングはどう変化していけばいいのか。それを読み解くカギは「リゾーム」にある。本連載ではリゾーム化社会および、その社会に対応するために必須なリゾームマーケティングについて論じていく。

リゾームマーケティングの時代

 「マス広告は死んでないよ!

 その声は部屋の空気を引き裂いた。決して大きくはなかったと思う。だが、落ち着いた、しかも、脊髄から出すような声で、その人は、鋭利な刃物のように、語り掛けてきた。

 私の背中に冷たいものが走った。「しまった。怒らせたか?」。私はその瞬間、息を飲んだ。

 その声の主は、元電通顧問の秋山隆平氏。2004年に電通が提唱した「AISASモデル」の考案者で、電通デジタル・ホールディングス社長など要職を歴任した人だ。

 2015年10月のある朝、私は新幹線で京都に向かった。電通役員の方の計らいで、秋山氏と会食をすることになっていた。私は明らかに緊張していた。私にとって秋山氏は「仰ぎ見る存在」で、憧れの対象だった。しかも、親子ほど年の差があり、さらに、ほぼ初対面だった。

 秋山氏が作った「AISASモデル」を、私は勝手に改変し「Dual AISAS Model®」を作っていた。その改変したモデルを、ありがたいことに、電通と一緒に商標登録することになった。

 電通の役員の方のアドバイスで、秋山氏に事の顛末を説明し「ご承諾を得る」のが、京都訪問の目的だった。

 東京から同行した電通スタッフと一緒に料亭の個室で秋山氏を囲んだ。そして、しばし歓談が続き、本題に入るために「Dual AISAS Model®」の資料を出し、私は説明を始めた。

 話の流れの中で私は、マス広告の「Attention」の力が弱くなってきたことなどを理由に、マス広告は機能不全に陥っていると持論を展開した。

 「そんなことはわかってるよ」と秋山氏は思っていたかもしれない。その微妙な空気を感じながらも、沈黙していた秋山氏を前に、私は一方的に話し続けていた。

 そして、少し私の気が緩んだ頃、あの鋭利な声が突き刺さってきた。それは、「マス広告は死んだという人もいます」と私が軽口を叩いた瞬間だった。

 私の心臓は一瞬、凍死した。「あー、失敗した。どうやって切り抜けるべきか?」と自問しながら、秋山氏の反論を聞いていた。

 そして、ちょっと間があったときに、部屋の静寂を嫌い、私は「リゾームマーケティング」という単語を口走ってしまった。結果的に、秋山氏の話を遮り、彼は一瞬、ムッとしたように見えた。

 しかし、秋山氏は大人の対応で、また黙って耳を傾けた。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/02/16 09:00 https://markezine.jp/article/detail/27867

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