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D2Cブランドの成長を支えるデジタル×マス融合の可能性

消費財メーカーのマーケターから見た、D2Cというトレンド

 本連載では、ユニリーバ・ジャパンにおいてLUXやDOVEなどの消費財マーケティングに従事し、現在は同社のグループ会社であるラフラ・ジャパンのCOOとしてD2Cビジネスにも向き合う木村氏が、両者の違いや共通点を基に、広告宣伝やブランディングについて解説します。第1回となる本記事では、D2Cブランドに共通する特徴と、マス広告との融合の可能性について取り上げます。

消費財メーカーのマーケターから見たD2Cトレンド

 私はユニリーバ・ジャパンに新卒入社以来、10年以上在籍し、マーケティング業務に従事してきました。そこではテレビCMのようなマス広告をメインに活用し、ドラッグストアを中心とする小売店で商品を販売します。デジタルを活かした新しいビジネスモデルに対して、「旧来型」と呼ぶ人もいる形態です。

 2018年からユニリーバの英国本社で勤務しましたが、その間、ヨーロッパやアメリカでD2Cというビジネス形態が流行りはじめ、有名なベンチャーキャピタルが投資しているという話を聞き興味を持ち始めました。

 その後その流れはより大きくなりました。ユニリーバも世界各国で、D2Cをビジネスモデルの核とする企業をグループ化しています。2016年、Dollar Shave Clubが10億ドルでユニリーバの傘下に入ったことは、D2C業界では大きなニュースになりました。

 そして2019年には、ラフラ・ジャパンという日本の化粧品会社がユニリーバの傘下に入り、私はこの4月より同社のCOOとして経営に携わるようになりました。ラフラ・ジャパンは、ユニリーバにとって今後の戦略において重視しているスキンケアのカテゴリーにおいて、「旧来型」に加えて「D2C」のビジネスモデルを併せ持つ企業です。

 D2Cは私のような「旧来型」のマーケティング従事者には新しく見えた一方、消費財業界で長年に渡り蓄積されてきたマス広告の手法やブランド・エクイティを構築し高めていく手法は、D2Cにおいても役立つのではないかと考えるようになりました。そこで本連載では、旧来型のマーケティングを経験し現在はD2Cにも向き合っているという立場から、広告とブランドについてお話ししたいと思います。

D2C企業の多くに共通する「デジタルチャネル」「一点突破」

 実は私はラフラ・ジャパンに参画する前から、D2Cビジネスを知る機会を得ていました。英国本社勤務を終えて日本に帰国後、外部顧問という形で、D2C事業者にECカート機能であるecforceを運営するSUPER STUDIOに参画し、そこで様々なD2C事業者さんと話すことができたのです。

 2010年以降に立ち上がったD2C事業者を見ると、いくつかの共通点がありました。中でも特徴的なのが(1)デジタルチャネル(2)一点突破の2点です。

(1)デジタルチャネル

 デジタルチャネルといっても、ecforceのようなECカートを用いて自社モールを構え、GoogleやFacebookなどの広告を駆使して集客するパターンもあれば、Amazonや楽天といった巨大ECモールに出店し、集客するパターンもあります。共通しているのは、リアル店舗ではなくECで、そして集客単価が安いデジタル広告に予算を寄せて、ユーザーを獲得するというものでした。

 こうしたやり方が可能になった背景には、GoogleやFacebookをはじめとするデジタルプラットフォームの成熟があります。サービスがユーザーを大量に集め広告媒体としての価値を高め、配信面をもつ広告プラットフォーマーとなりました。これがデジタル広告のはじまりです。「誰でも」「簡単に」「少額から」試せるため、利用する事業者が爆発的に増えました。

 上述のような特徴をもつデジタルは、資金力を持たない小さなD2C事業者にとっては特に重要なチャネルです。とにかく広告集客費が安いチャネルに広告予算を投下し、事業を成長させることがセオリーとされています。IT業界出身のD2C事業者はこのような広告活動を「ハック」と呼び、集客費の安いバナーや、ランディングページ(LP)を見つけるために、A/Bテスト(2種類以上の広告を表示し、費用対効果がよいものを探すこと)を繰り返しています。

 私が経験してきた「旧来型」のマーケティングで用いられる、テレビCMに投下し、小売店で買い物をしてもらうというプロセスは、検証するのが難しく、また検証できたとしても、膨大な時間とコストがかかっていましたが、D2Cはデジタル上で完結するが故に、短いサイクルで多くの検証ができるようになっています。

 ユニリーバに在籍していたときにはEC化の進捗やデジタルの投資増を実感する場面はそれほど多くありませんでしたが、D2Cと呼ばれる業態を展開する事業者と話すなかで、彼らがデジタル広告を活用し、EC化の波にのっていることを感じていました。

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この記事の著者

木村 元(キムラ ツカサ)

株式会社Brandism代表取締役ユニリーバに2009年に入社。約12年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360°のプロモーションから、グローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にてダヴを担当し、グローバル全体のブランド戦略設計をリードした後...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/06/18 08:00 https://markezine.jp/article/detail/36135

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