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統括編集長インタビュー

経営統合、それは結婚だ―VOYAGE GROUP宇佐美氏が描くCCIとの初めの一歩


 先日発表された、VOYAGE GROUPとCCIの経営統合。テクノロジーに強みを持つ企業と、大手メディアレップとの組み合わせによって、両社はどのような価値を生み出そうとしているのだろうか。VOYAGE GROUPの代表取締役社長兼CEO宇佐美進典氏に、統合の狙いや今後の展望を伺った。

お互いの得意領域を掛け合わせ、新たな価値を生み出す

押久保:始めに、経営統合の経緯をお聞かせください。宇佐美さんは創業経営者としてのマインドもお持ちであり、独立してやっていく道も存在する中で、なぜ統合を選ばれたのでしょうか。

宇佐美:今回の経営統合は結論ありきではなく、緩やかに進みました。会話が始まったのは1年前くらいでしょうか。最初は経営統合という考えはなかったのですが、CCIの新澤さん(※)はじめ経営陣と具体的なスキームや、経営統合後について会話を重ねる中で、リアリティがでてきました。

※CCI 代表取締役社長 新澤 明男氏

株式会社VOYAGE GROUP 代表取締役社長兼CEO 宇佐美進典氏
株式会社VOYAGE GROUP 代表取締役社長兼CEO 宇佐美進典氏

 我々が一番こだわっていたのは、経営の独立を担保するということ。持株会社の名前「CARTA HOLDINGS(カルタホールディングス)」にも、その決意を込めています。「CARTA」には、ポルトガル語で「海図」という意味がありますが、もうひとつ、イングランドの民主主義の礎となった「マグナ・カルタ(大憲章)」も意識しています。2つの会社が対等な立場で、常識に捉われることなく新しい海図を描いていこう、という気持ちでつけた社名です。

 私は創業者のひとりですが、2001年にサイバーエージェントさんの連結子会社になって、その後MBOしてという間、ずっと株式のマジョリティを持ったことがない。シェアを持ち続けることに、あまりこだわりがないのです。株式のシェアで会社をコントロールするのではなく、経営者としての実績や、株主の信頼の中で経営を任されていけばいいなと思い、今回の座組になりました。

 電通グループの傘下になったんですかという側面から見られがちですが、自分たちがやりたいことをやるために統合して、その結果電通さんが株を持たれた、というのが正しい認識です。

押久保:統合の狙いは端的に言うとどこにあったのでしょうか。

宇佐美:一言でいうなら「お互いの得意領域を掛け合わせ、新たな価値を生み出す」です。

 当社はこれまで、ゲーム系を中心に、サービスや通販の広告主さんに提供する、パフォーマンス重視の広告を強みとしてきました。ところが最近、デジタル環境の一般化にともない、パフォーマンス重視の運用型広告と、ブランディング目的のブランド広告の境界線が曖昧になっていると感じます。アドベリフィケーションやブランドセーフティーに対する声が大きくなっているのも、その表れです。今後はブランド系広告主さんも、運用型広告的な発想でブランディングを行うケースが増えていくのではないでしょうか。

 この需要に応えていく必要性を感じていましたが、これまでつながりが弱かったお客様のところへ、自分たちだけで乗り込んでいくのは難しい。ブランド系広告主さんと深いお付き合いをされているCCIさんとタッグを組めば、この伸びしろにアプローチできると考えたのです。

 我々のSSPにブランド系の広告主さんが入ってくることで、メディアに対してより単価の高い広告が配信できるようになります。そうするとメディアとの関係が強くなりますし、より幅広い広告主さんに利用してもらえるようになる。これが、今回の補完関係で生まれる新たな価値のひとつです。

統合への漠然とした不安はコミュニケーションで解消

押久保:統合について、社内ではどのような反応がありましたか?

宇佐美:社内にはリリース前に、2段階でオープンにしました。まず、関係幹部層に。最初は気持ち的にでしょうか、少しネガティブな反応がありました。しかし、事業として補完関係があることを説明すると、「確かに」となってきて。未来の部分がイメージできるようになると、「それちょっとおもしろいかも」と反応が変わってきた。

 そういったこともあったので、当日の15時に社内全体へ告知したときは、「未来を一緒に作れるんだよ」「ネット広告領域において圧倒的な存在になっていくんだ」というポジティブなメッセージを伝えました。

 一方で、経営統合という言葉のもつ漠然とした不安、わからなさもあります。「本当に変わらないの?」「変わらなくていいんですか?」「変わるとしても何が?」というような。だから、労働環境や人事制度といったものは変わらない、その上で事業としての可能性は広がるということを伝えました。スモールミーティングを開いたり、飲みに行ったりして、個別にそういう話をして。

押久保:社員の方と直接コミュニケーションをとる方ですか?

宇佐美:とりますね。330~340人なので。全員には難しいですが。

押久保:業界内ではどのような反応がありましたか?

宇佐美:みんな驚いていましたね。「マジで!?」みたいな。今回の経営統合は仕組みが複雑で、スキームもわかりづらいので「おめでとう!」という反応もあれば、「おめでとう……でいいんですかね?」みたいなニュアンスもあり、様々でした。

押久保:藤田さん(※)ともお話はされたのですか?

宇佐美:事前には言えないですが、リリース直後に電話連絡しました。開口一番「おお、マジで」という反応でした。ただ最近はAbemaTVと電通、博報堂DYメディアパートナーズの資本業務提携などの件もあるので、引き続きよろしくというお言葉を頂きましたね。

(※)サイバーエージェント 代表取締役社長 藤田晋氏

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/11/21 18:17 https://markezine.jp/article/detail/29706

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