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CXの経営ごと化はチャンス CMOは売り上げにコミットし部門のカベを越えたマーケティングを主導せよ

 顧客体験(CX)というキーワードが経営課題として浮上している。製品を売るだけでなく、売る前から購入後までの一貫した体験を提供するにあたって「マーケティング責任者は役割を拡大しなければならない」と主張するのが、アクセンチュア インタラクティブ マネジング・ディレクターの望月良太氏だ。CX時代に求められる先駆的なCMOの役割、現状とのギャップを解決するためのアプローチを聞いた。

なぜCXが経営の最重要課題なのか

――CXという言葉をビジネスメディアでもよく目にするようになりましたが、なぜ今CXがビジネス課題として注目されているのかは必ずしも自明ではないように思います。望月さんはどうして多くの経営者がCXを最重要課題として位置づけているとお考えでしょうか。

 CXの定義は様々だと思いますが、顧客が商品を知り、購入し、購入後も使い続ける――この一連の接点の集合体がCXと定義できると思います。いかにして一貫したブランディングを行い、企業のメッセージを伝え、顧客に感じてもらいたいものを提供できるか、そのためには全体をコントロールする必要があるという認識が高まっています。

 背景として、製品や商品のコモディティ化が進んでおり、差別化できる点が減ってきていることがあります。消費者側も、モノへのニーズはそこそこ満たされており、モノ消費からコト消費、さらにトキ消費へと生活者の要求がシフトしています。モノ単体ではなく、それを使った時にどんなに気分が上がるのか、満足できるのかが新しい基準になっているのです。

 新しい消費者は、以前の消費者に比べて、製品や商品を選ぶための基準の範囲が広くなっています。たとえば、ミレニアル世代と言われる若い人たちは、企業が社会に関わる姿勢でブランドを決める傾向があると言われています。また、特定の決済手段・配送手段が使えるか、接客やお店の雰囲気がよいかなども選択基準の中に入っています。

 製品や商品を選択するための基準が広がった消費者の心をつかむために、一連の接点の集合体であるCXを魅力的にすることが重要なのは明らかで、フォレスターの調査結果によるとCXスコアが1ポイント上がると年間収益が1,000万~1億ドルも増加することが明らかになっています。これこそが、CXが経営課題となっている理由です。

アクセンチュア インタラクティブ 望月良太氏
アクセンチュア インタラクティブ 望月良太氏

経営層を巻き込まないと実現しないキャンペーンが増えてきている

――CXが重要になる中で、CMOのあり方はどのように変化しつつあるのでしょうか。

 狭義のマーケティングから広義のマーケティングへのシフトが進んでおり、マーケティングKPI(重要業績評価指標)からビジネスのKGI(重要目標達成指標)へとコミットが変わりつつあります。

 これまでのCMOはブランドオーナーであり、広告・広報が主な担当でした。狭義のマーケティングにおける責任者で、広告代理店やプロダクションをパートナーとし、コミュニケーション領域に特化していました。

 現在はCMOが関与する領域が広がっており、広告やコミュニケーションだけではなく、購買、アフターセールスも領域に入ります。最近は二次流通市場が大きくなっていますが、そういったことも関係してくるでしょう。このように領域が広がると、CMOが商品自体に意見を持つ必要性も出てくるかもしれません。

 また、クリエイティブやコミュニケーションの領域であっても、マーケティング部門だけでは実現できず、CEOや営業部門長を始めとする経営層を巻き込めたからこそ実現した、大胆なキャンペーン事例が増えてきています。

 たとえば、NikeのDream Crazy("Just Do It" 30周年キャンペーン)が好例です。このキャンペーンは、アフリカ系米国人に対する警察の暴力を批判するために、国歌斉唱中に起立を拒否して国論を二分するセンセーションを引き起こした人気アメフトプレーヤーのコリン・キャパニック氏を炎上覚悟で起用するなど、マーケティング部門だけでは決断できないようなリスクをとって破格の成功を手にしました。

 他の例としては、米国のアウトドア用品ブランドREIが、ブラックフライデーに店を閉めるキャンペーン(#OptOutside)を展開しました。「ショッピングするのではなく外に出てアウトドア活動を楽しもう」というメッセージですが、米国で最も商品が売れるブラックフライデーに店を閉めるというキャンペーンは、営業を管掌する経営層の理解なくしては実現不可能だったはずです。

 このようにクリエイティブやコミュニケーションのアウトプットを大きくするためには、CMOだけでなく、他のCクラスの理解や決断が必要になります。卓越したCMOとは、担当領域も責任範囲も従来より広くとるものだと言えます。

全体最適の視点で社内のサイロを打破できるか

――ビジネス指標に関わる施策をマーケティング部門が実行するためには、CMOはどのような立ち回りをすべきなのでしょうか。

 マーケティングの領域が広がっていることを意識し、マーケティング部門のトップは全体最適の視点を強く持って動く必要があると言えます。

 たとえば人材。デジタルマーケティング部門を作ってもジョブローテーションがあるためにせっかく育成した人材も別部署に異動してしまい、またデジタル知識の乏しい社員が入ってくる、するといつまでも「新人」しかいない、という話はよく聞きます。

 ジョブローテーションは人事マターであって、マーケティングの責任者の範疇ではない。そんな部門間のカベを越えて、マーケティングのトップが、デジタルマーケティングの部署では人事組織のルールを変えてくださいといった要求を言えるか・言えないかで大きな違いが生まれます。

 システムやデータも同じです。自分の部署の管轄ではないので特定のデータが使えないから分析が浅くなる、という問題はよくありますが、マーケティングのトップがリーダーシップをとって社内のサイロやファイヤーウォールを壊せるかどうかが大事なのです。

今はコラボレーション主導型CMOになれるチャンス

――CMOは宣伝・広報責任者という立ち位置に留まるのではなく、顧客視点で社内のサイロを乗り越えて変革を実現していく先導者になる必要があるのですね。

 CMOはCXを軸に事業部門間をつなぐ役割が期待されています。そこで我々は新しいタイプのCMOを「コラボレーション主導型CMO」とし、とるべき4つのアクションとして、(1)顧客の声をCクラスに浸透させる、(2)企業内でコラボレーションを促進する、(3)顧客ニーズにあわせたテクノロジーを用意する、(4)イノベーション文化の創造を提示しています。

――「CMOの役割が変わる」という御社のレポートで「マーケターを志すには絶好のタイミング」とあります。これは日本のマーケティング責任者にも当てはまるのでしょうか。

 日本ではそもそもCMOという役職を作るかどうかの問題もありますが、時代の方向性として、CMO的な立ち位置の責任者が全体最適の視点を持つことが認められつつあります。会社の業績へのコミットが許されるようになれば、これまでは口を出せなかったところに対しても関わることができるようになる。そういった点で、最高のタイミングです。裏を返せば、そうせざるを得ない状況とも言えます。

もっと詳しく知りたい方に

アクセンチュア インタラクティブについて
調査レポート:CMOの役割の再考
調査レポート:新時代のCMO

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日本のマーケティング責任者が直面する課題

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この記事の著者

末岡 洋子(スエオカ ヨウコ)

フリーライター

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/08/30 10:00 https://markezine.jp/article/detail/31841

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