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『MarkeZine』(雑誌)

第99号(2024年3月号)
特集「人と組織を強くするマーケターのリスキリング」

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私たちMarkeZineは本当の読者の姿が見えているのか?「顧客起点マーケティング」を実践してみた

 今年4月に翔泳社より発行した『実践 顧客起点マーケティング』は、マーケターはもちろん、非マーケターのビジネスパーソンにも広がりつつある。そこで本書を参考に、MarkeZine編集部でも「MarkeZineの顧客ピラミッド」の作成に挑んでみた。マーケター向けメディアというニッチな市場で、どのような顧客分析ができるのだろうか? 本稿では、著者の西口一希氏によるレクチャーの模様をレポート。具体的な分析や議論の仕方を参考にしていただきたい。

MarkeZineの読者分析をネット調査でやってみた

安成:2019年4月からMarkeZine編集長に就任した安成です。西口さんの著書『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』、私も制作段階から読ませていただいて、これはぜひMarkeZineでも取り組みたいと思いました。

 私は2012年からMarkeZineに携わって8年目になります。ずっと読者のことを考えてきて、一番理解していると自信をもっているものの、ふと考えてみると、これまで本格的な読者の分析に取り組んだことはなかったな……と気づいたのです。

 私はマーケティングの実務に深く携わった経験はないのですが、顧客(読者)のことを知りたい」という思いを持っていれば誰でも顧客起点マーケティングを実践できるのではないかと思い、まずやってみました。

『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』
著者:西口一希/発売日:2019年4月8日(月)/価格:本体2,000円+税

本書について

ターゲット市場の全体と各セグメントの人数を数値で推計した上で、“たった一人”のインサイトを深堀りする「N1」インタビューを実施。そこから独自性と便益のある「アイデア」を見つけ、有効かを検証して拡大実施するという一連のフレームワークを解説している。

西口:メディアでしっかりとユーザー分析をしているところは、あまり多くないかもしれないですね。本書の多くは、僕のBtoC領域での製品マーケティング経験をもとにしているので、BtoBやニッチな領域、メディアの場合などを詳説できませんでしたが、十分応用はできます。ただ、やはり多少のコツは要りますね。

安成:おっしゃる通り、まずはWebマガジンの『MarkeZine』の顧客ピラミッドを作ろうと思ってネット調査をかけたのですが、その時点でいくつか疑問点が浮かんでしまいました。今回は、そもそものセグメントや顧客ピラミッド作成の方法について、レクチャーいただければと思います。

書籍収録:顧客ピラミッドの図

西口:了解です。「顧客起点マーケティング」では、まず自分たちのプロダクトが対象とするターゲットを定義するところから始めます。書籍で取り上げた「肌ラボ」の場合は20~40代で化粧品を一週間に一回は使う女性、スマートニュースなら20~60代男女でスマホを保有している方々だったのですが、BtoBの商材や専門メディアだとかなり狭まりますよね。

 まずネット調査をかけたとのことですが、そこでは顧客、つまり読者をどう定義したのですか?

安成:はい、次の2つで定義して、スクリーニング調査をしました。

1.仕事でマーケティングにかかわっている
2.広告業界の営業

「ターゲットは誰なのか」を決める議論

西口:それで、ネット調査の結果はどうだったんですか?

安成:書籍で利用されていたのと同じ、安価に利用できる一般消費者対象のネット調査を使って、最初の調査対象「20~60代男女」4,016人に前述の2項目のスクリーニング調査をかけたところ、いずれかに該当する人は計327人いました。

 ここから、Webマガジン『MarkeZine』および私たちがベンチマークしている競合メディアについて、(1)媒体を読んだことがあるか、(2)定期的に読んでいるか、(3)人に勧めたいか、を確認してみました。

 (3)のお勧め度合い、いわゆるNPSについては、書籍では「自分が次に使いたいか(=ブランド選好)と人に勧めたいかの傾向は異なる」という解説がありましたが、次に使いたいかを正確に定義できなかったこともあって、ひとまずここでは人に勧めたいかをNPSの指標とし、調査をかけました。

 その結果、前述の2つの条件にあてはまる人のうち、MarkeZineを読んだことがある人は27.5%、定期的に読んでいる人は25.4%、という状況がわかりました。認知度は、これらを合算し、52.9%と把握しました。また、NPSは50.3%でした。

西口:なるほど。

安成:今回は初めての読者分析なので、ターゲットを広く取るとそれだけぼやけてしまうかなと思ったのと、私たちがメインに情報を届けたいマーケター層にどのくらいリーチしているかを知りたいという意図があったので、前述の2つの条件を設定しました。……ただ、そもそも実態に照らし合わせると、この2つで切っていいのか? というところから実は迷いがありました。

西口:たしかに、その条件だと、たとえば経営層だったり、マーケターという職種には該当しないけれどマーケティングを勉強したいECやデータ周りの担当者は外れてしまいますね。

安成:ご指摘の通り、このネット調査の結果を編集部で共有したら「そもそもこの母集団の絞り込みで合っていたのか?」という議論になりました。

西口:でも、とっかかりとして「狭めた中での数字を把握したい」というのは理解できますし、議論のきっかけにはなると思います。もちろん、仮にネット調査が数万円だといっても無限に予算はないですし、事前に話せたらよかったかもしれないですが、まずはやってみる姿勢が大事です。それを議論のたたき台にすればいいんです。

 読者の定義をどうするかは、要はMarkeZineさんの戦略策定ための出発点なので、まずは一旦、決めればいいだけです。で、それはそもそもMarkeZineが「どんな価値を提供するメディアなのか」「どんな人に情報を届けたいメディアなのか」によりますね。競合メディアに対する独自性と便益は何なのか。

 ただし、これらの問いは創業時に決めるだけなく、常に立ち戻る質問です。時間の経過やビジネス環境の変化と共にマーケットは変わり続けるので、読者の定義や範囲は変わっていくはずなのです。最初は決めでいいですが、その後は、競合環境によって相対変化する自社商品の独自性と便益とそれらを支持してくれる潜在的な読者層の組み合わせをデータを使って数量的、理論的に修正していくことが大切です。

安成:それでいうと、2006年に開設した当時からデジタルマーケティングにフォーカスしてきましたが、当初に比べて今は“デジタル”の存在感がぐっと増し、扱う話題も各論ではなくマーケティング全体だったり経営に関する話にまで広がっています。私たち編集部の中では視点がそろっていたつもりでも、読者の方にきちんと整理して打ち出していなかったですね。

西口:そこは、自分たちにしかない価値を見極めて、ちゃんと打ち出したほうがいいフェーズに差し掛かっているのかもしれないですね。

安成:たしかに、そう思います。……そうすると、複数のマーケター向けメディアの中で、私たちがこだわっているのは「実務に活かせる」情報ですね。

【ポイント】BtoBの商材など顧客層が限られている場合、調査対象をどう設計すればいいのか?

戦略策定のための顧客の定義は、まずは決めの問題。思い込みや一般的な区分で顧客セグメントを作成する前に、顧客データを洗い出して既存顧客の状況を把握し、自社の独自性と便益を整理した上で調査対象を設計する。

次のページ
MarkeZineの独自性は「実務」「実践」「再現性」

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/09/09 07:00 https://markezine.jp/article/detail/31856

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