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カスタマージャーニー研究プロジェクト(AD)

One to Oneの紙DM制作までを自動化 ディノス・セシール流、MA活用の最前線

メールからLINE、紙のDMまでチャネルを横断

 同社は、この仕組みをマーケティングやMDなど、他部門にも共有。積極的にアイデアを寄せてもらうよう呼び掛けて、ECチームのCRMの発想を適宜織り交ぜながら実行しているという。「ツールの技術面や細かい設定を完全に理解しなくても、『こういう訴求なら響くのでは』というアイデアを共有してもらい、すぐ形にできるようになったのは大きいですね」(原氏)

 いずれのシナリオも、顧客が受け取りやすい形式やタイミングで情報を提供する、チャネルを横断したアプローチを順次展開している。まずメール配信、メールが開封されなければLINE、それも届かなければ紙のDMを郵送する、という流れだ。

 「かつては我々のタイミングでシーズンごとのカタログを送り、それが購買のトリガーになっていました。ですが今、購買のトリガーは完全に顧客の側に移っています。その状況下で、当社都合で『このチャネルでしか情報を届けられない』というのはあり得ない」と石川氏。「Marketing Cloud」を本格稼働して1年ほどで、開封率やCVRは確実に向上しているという。それだけ、受け取った人が価値を感じ、次のアクションを起こしていることがわかる

 ちなみにカート放棄や個別商品購入後にオンラインでリーチできない場合、デジタルプリンティングも「Marketing Cloud」と連携しているため、One to OneのDM制作まで一気通貫で回るようになっている。そのため、Journey Builderによって顧客のアクションに応じた、オフラインも含めたチャネル横断のシナリオを自動的に走らせることができるというわけだ。その仕組みの構築には、システム的な難しさ以上に、部数によって単価を管理している従来の印刷会社との商習慣を変えることに大きな苦労があったそうだ。

ツールをハブに、施策に“血が通った”

 実は「Marketing Cloud」の導入と運用によって、社内のデジタル意識の向上と部門間コミュニケーション量の向上という副次的な効果もあった。前述の“デジタルツールで効率化が叶っていると思われがち”なのは、対外的にだけでなく、社内的にも同様だという。オンラインのみで購買が完結する顧客も増えてはいるが、今でも年間2億部ものカタログを発行している同社の軸足は、まだオフラインベースのビジネスにある。

 だからこそ、「半ばポジショントーク的だが、『デジタルは魔法の杖ではない』と言い続けている」と石川氏は明かす。

 「MAツールをただ導入するだけでは無理ですが、それをインフラとして、MDの頭の中にある商品に関するナレッジを吸い上げるスキームが生まれれば、MD側の意識が変わるはずだと思っていました。実際、部門間のコミュニケーションが活発になり、それがお客様へのアプローチの充実につながっています」(石川氏)

 原氏も「MDとマーケティング部門を交えてコンテンツや伝播の仕方を考えるようになって、商品の魅力をより掘り下げて伝えられるようになってきています。見えやすいデジタルの数字から施策を企画しがちだったECチームも、個別商品に注目するようになり、新しいアイデアがどんどん生まれています。『Marketing Cloud』がハブになって、デジタルと人の知恵が融合した、血が通った施策が実現できるようになってきました」と語る。

 少人数ながら、デジタルを発端とするマーケティングを全社的な動きへ展開できるよう挑戦しているディノス・セシール。テクノロジーの力を最大限に生かしながら、それに甘んじず、原氏の言葉を借りれば“泥臭く”アナログな強みを掛け合わせて顧客への価値提供に努める姿勢が強くうかがえた。

カスタマージャーニー研究プロジェクトチームのコメント

大島:バイヤーの持つ膨大な商品知識から「消費者が本当に必要になる瞬間」を見出しシナリオに落とし込んでいるという点は、一般的なレコメンドを超えた独自性を感じます。ツールに詳しくない人からもアイデアをもらえるように仕組み化しながら、人が考えるべきこととツールで実現することの区別が徹底されています。「チャネルが限定されるのはあり得ない」としてチャネル横断を実現するなど、“顧客に提供すべき自社の価値”を追求する姿勢と実現する情熱について、見習うべき点の多い事例です。

安成:WebサイトからDMまで、デジタル×アナログのチャネルを横断したOne to Oneマーケティングの実現は、多くの企業が長年向き合っている課題です。「Marketing Cloud」をハブに、購買を含めた顧客データの施策を実践しているディノス・セシール。その真の強みは、マーケティングプラットフォームの基盤を整えた上で、“商品起点”という自社ならではのカスタマージャーニーを描き、シナリオに落とし込んだ施策を高速で実行している点です。カタログ通販というオフラインベースのビジネスに軸足を置く同社が、引き続きどのようにデジタルと人の知恵を融合した施策を実現していくのか、楽しみです。

カスタマージャーニー研究プロジェクトとは?
「カスタマージャーニー」、顧客の一連のブランド体験を旅に例えた言葉。デジタルやリアルの接点が交差し、顧客の行動が複雑化する中、「真の顧客視点」に立って、マーケティングを実践する重要性が増してきました。
カスタマージャーニーに基づいたマーケティングの必要性は、その認知が進む一方で、「きちんと“顧客視点に基づいたシナリオ”を作成し、運用できている企業はまだまだ少ない」多くのマーケターに意見を聞くと、そのように認識されています。
今回、安成率いるMarkeZine編集部とセールスフォース・ドットコムでB2Cカスタマージャーニーシニアスペシャリストとして、データに基づいたカスタマージャーニーの設計・検証・再現などを追求してきた大島彰紘氏を中心に、共同でカスタマージャーニー研究プロジェクトを立ち上げました。本プロジェクトでは、「顧客視点のマーケティング」における成功例を取り上げ、様々なアプローチ方法をご紹介していきます。その他の成功例はこちら

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

大島 彰紘(オオシマ アキヒロ)

株式会社セールスフォース・ドットコム  マーケティング本部 B2Cカスタマージャーニーシニアスペシャリストコンテンツマーケティング専業企業およびデジタルマーケティング企業にて、コンサルタント、マーケティングプランナー/ディレクターとして多数のB2B・B2C企業を担当。2018年よりセールスフォース...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/10/25 11:00 https://markezine.jp/article/detail/31971

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