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MarkeZine Day 2019 Autumn(AD)

CDPでパーソナライズを実現するとはどういうことか JTB他先進企業による一貫したCX提供事例を公開

マーケアクションから逆算し理想の顧客分析、統合テータ基盤を構築

 セッション後半では、日本におけるトレイルブレイザーの代表者として、JTBの福田晃仁氏と山上亜紀氏が登壇した。

JTB Web販売部 戦略担当部長 Data Science Central 統括 福田 晃仁氏
JTB Web販売部 戦略担当部長 Data Science Central 統括 福田 晃仁氏

 福田氏と山上氏が所属するWeb販売部では、データドリブンを実現するために、「データサイエンスセントラル」という組織を立ち上げている。これはデータマーケティングの中核組織となり、「統合データ基盤」「顧客分析」「マーケティングアクション」の3つの部門によって構成されている。

 「データドリブン組織に向けた変革のため、3つの組織を有機的にむすびつけています。よくある失敗として、システム部門からスタートすることがありますが、データサイエンスセントラルは、マーケティングアクションとしてやるべきことから遡って、どんな顧客分析を行うべきか、そのためにはどのようなCDPが必要か、という順に考えて組織設計を行っています」(福田氏)

 JTBが考えるデータドリブンには、「量的分析」と「質的分析」がある。量的分析はパフォーマンスベースで、統計解析による各種アルゴリズム構築など数学的に行っていくものだ。同社が重視している「質的分析」は、パフォーマンスではなくコミュニケーションベースとなる。これはセグメントごとに1to1のコミュニケーションを作るためのもので、顧客をコンテキストで分類していく。

 セグメントを切るために、コンテキストが重要なのはこれまでも論じられてきたことだが、実際に施策に移すためにどうしていくべきか、手法の話があまりされてこなかったと福田氏は話す。

 たとえば、旅行先として人気のハワイでいえば、「ワイキキ周辺で1週間過ごすファミリー」と、「北部まで移動してプライベートビーチへ行くファミリー」が存在したとき、2つはまったく違うセグメントだ。前者は「ハワイ初心者」といえ、彼らはオーシャンビューの部屋を希望するのに対し、後者は「ハワイ玄人」で、宿にはあまりこだわりがないという背景がある。その場合、2つのセグメントに同じWebサイトを見せては思ったような効果は得られないと予想できる。

 「この例のように『玄人度』という切り方ができたときに重要なのは、この2つのセグメントは年齢でも、購買力でも分類できないということ。『購買文脈』で顧客の特徴を捉えてセグメントを切るのに比べたら、年齢や購買力といった『属性』でセグメントを切ることには意味がありません」(福田氏)

 では、購買文脈に応じてセグメントを切るためにはどうすれば良いのか。実際に作成されたセグメント例として、「出張女子」の切り口が紹介された。

JTB Web販売部 戦略担当課長 Data Science Central 副統括 山上 亜紀氏
JTB Web販売部 戦略担当課長 Data Science Central 副統括 山上 亜紀氏

 これまで漠然と出張は男性がするイメージで、男性目線の広告コミュニケーションが実施されていたが、実際の出張ニーズを調べてみると、女性の出張も少なくなく、平均購買単価が男性より10%ほど高いことも判明した。

 男性がホテルを選ぶときは「駅から5分」、「コンビニが近い」など機能購買をする傾向が強い一方、女性は女性専用フロアやシモンズベッドの部屋などを選びがちで、いわゆるサービス購買をする傾向にあることがわかった。

 男女の購買行動の違いが見えてきたので、出張女子の求めるものをマインドに合わせて丁寧にコミュニケーションに落とし込んだところ、CVRが約145%向上する結果が得られた。

 「調査によって、匂いに対するクレームが女性には多いこともわかったし、ヨガやトレーニングなど日常の習慣を旅先でも続けたいニーズなどにも気づかされました。コミュニケーションを行う中での嬉しい誤算としてあったのが、出張女子に向けてラグジュアリーな落ち着ける部屋のクリエイティブを投げたところ、子どもがいて禁煙を求める家族連れが反応してくれたこと。ファミリーと出張女子に一致するコンテキストを発見できたのは嬉しかったです」(山上氏)

 他のセグメント例としては、連休の初日に一人で高級宿に泊まるような女性を表す「東京貴族」、50~60代が同窓会で旅行する「おじさま」などがあり、これまでに100ほど編み出しているという。

 「JTBとしての1to1コミュニケーション戦略のゴールは、顧客構造を明らかにすること。どんな種類の顧客が、どの程度いるのかを明確にしたい。そのために、個々の施策を手で打つのは不可能なので、発見したセグメントに対して、セールスフォースのMAを用いてシナリオを設定し、自動的に運用していくのが今後の目標です」(福田氏)

 日本におけるTrailblazerたる福田氏と山上氏の取り組みには、企業がいかにCDPを活かして1to1コミュニケーションを実現するかのヒントが詰まっているといえそうだ。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/10/28 12:00 https://markezine.jp/article/detail/32123

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