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号あたり部数は3年で9%増!フリーペーパー『SUUMO 新築マンション』がデジタル時代も強いワケ

“鉄板記事”に異変が!?それでも休刊にしなかった理由

――ここ10年ほどで、お客様のメディア利用環境も新築マンションの購入市場も変化したと思います。それにともない、フリーペーパーの活用戦略も変えていったのでしょうか。

佐々木:そうですね。地価の高騰や物件価格の上昇にともない、購入者の平均世帯年収は1.5倍上がりました。人々が住まいに求める条件も変わっています。

坂田:ラックに置いたときに非常に多く手にとっていただける特集――私たちは「鉄板記事」と呼んでいるのですが――にも、変化が出てきました。以前は「マンションvs戸建て」「住宅ローンの種類」「買う VS 借りる」などの新築マンションの購入に関するノウハウ記事に人気があったのですが、ターゲットとする層の情報感度が高くなり、ノウハウ情報はネットで検索すればすぐわかるようになったこともあって、一時期、手に取っていただける部数が減ってしまったことがありました。

――部数が減ってしまった場合、休刊・廃刊にするという決断を下すと思うのですが、コンテンツを変えて巻き返しをはかろうと考えたのはなぜでしょう。

坂田:実は休刊も経験しているんですよ。10年ほど前、名古屋版を休刊にしたことがありました。

 ところが休刊にしてみると、名古屋エリア全体でモデルルームへの来場者が軒並み減ってしまったのです。名古屋エリアのマンション供給クライアント様たちからも、「早くフリーペーパーを復刊して欲しい」というお話を聞き、その後復刊に至りました。

ペルソナ変更から着手しブラッシュアップ

――アンケートでは見えにくかったものの、フリーペーパーには確かに効果があることがわかったのですね。

坂田:はい。このときわかったのは、フリーペーパーはラックインフラと情報の一覧性を強みとして、「検討カスタマーの購入意欲喚起」という重要な役割を担っていたのだということ。新築マンションマーケットの創造をも担っているということがわかり、フリーペーパーを止めるのではなく、ブラッシュアップして続けていこうという事業判断をすることになりました。

佐々木:現在『SUUMO 新築マンション』首都圏版の発行部数は、2週間で4万9,000部です。モデルルームの来場者数は、2週間で1万4,000件くらい。そう考えると、かなりの数のお客様にリーチしていることになります。

――再始動にあたって、まずは何から行ったのでしょうか。

坂田:まず読者のペルソナ設定を大幅に変えることにしました。10年前は、マンションに広さや眺望といったスペックを求める方々が多かったので、「より豊かな暮らしをしたい専業主婦世帯」が主なペルソナでした。

 しかし今は共働き率の上昇もあり、新築マンション検討者の世帯年収も上がっており、都心へのアクセスや子育て環境、時短という項目が、重視されるようになってきたことから、「共働きで世帯年収1,200万円くらいのパワーカップル」を、メインのペルソナとして置き直しました。

“1秒4文字”が勝負!表紙タイトルの磨き込み

―― 誌面作りでは、どのようなことを大切にしていますか。

坂田:メインターゲットである「世帯年収1,200万円以上のパワーカップル」に向けて、街に焦点を当てた記事を中心に制作しています。

 パワーカップルたちは、物件の広さや価格などのスペックはもちろんのこと、通勤アクセスや子育て環境など、「街」という観点も重要視していることがわかってきました。そのため、たとえば「住み心地ランキング」「東京23区学校力調べといった、多角的に街を紹介する企画に取り組んでいます

佐々木:表紙タイトルの言葉選びが勝負ですA/Bテストや手に取られた部数の集計から、響くワードと響かないワードを分析するようにしています。

 たとえば「学校力」は部数が伸びるけれど、「中学受験」「保育園」はそれほど伸びない。中学受験や保育園といったテーマは、関心のある時期が一過性のため、読者との接点を狭めてしまうのが要因のようです。

 それから、人間が1秒に認識できるのは4文字くらいまでと言われているので、スマホを見ながら道を歩いていても手に取りたくなるような言葉選びをするようにしています。記事の中身とメリットが、歩きながらでもわかるように極力3~4文字に抑えるよう気をつけています

――現在、効果測定はどのように行っているのでしょうか。

佐々木:どれぐらい手に取ってもらえたかという、いわゆる「号あたり部数」を見ることが第一です。それから、モデルルーム来場者に取っていた紙のアンケートをiPadによるデジタルアンケートに切り替え、データを収集しています。

 先ほど、モデルルーム来場時のアンケートで接触した媒体としてフリーペーパーを挙げる人が少なかったとお話しましたが、アンケートでは、やはり記憶に新しい「最後に閲覧したメディア」のみを回答される方が多く、検討の初期段階で手に取られるフリーペーパーの貢献度は、低く見積もられてしまっていたようなのです。

 そこでデジタルアンケートでは、選択肢と一緒に『SUUMO 新築マンション』の表紙写真を載せるなどして、どのメディアに接触したかをより正確に思い出してもらえるようにしています

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この記事の著者

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/03/30 17:57 https://markezine.jp/article/detail/32947

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