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MarkeZine Day 2020 Spring

「データは事実だが、真実ではない」 分析のプロが失敗談を交えて語る、データマーケティングの落とし穴

データだけを見て、ユーザーを知った気になってはいけない

 では、見えないものを視るために、マーケターは実際どのような思考を持つべきなのか。

「ユーザー目線を起点」とした仮説構築

 千葉氏は、「ユーザー目線を起点」とした仮説構築を推奨した。データ上では成果が出ている項目に対し、プラスオンの施策を行う際に適した手法だという。実際、千葉氏もユーザー目線を起点とした仮説構築で成果を挙げている。

 IBMでは、各サービスの資料をダウンロードしたユーザーに対し、ナーチャリングメールを送付している。中でもIBM Watsonの数値は良く、開封率42.8%、クリック率14.9%と非常に好調だった。ここからさらに改善するには何を変えるべきかを考えた時、千葉氏はメールの文面に着目した。

 「以前から、IBMのメールなどの文章がかたいなと一人のユーザーとして思っていました。もっと親しみやすい文面の方が読まれるのではないかなと考え、ナーチャリングメール6種類の文面をすべて柔らかくしてみたんです」(千葉氏)

 その結果、開封率は32.7%、クリック率は13.9%と大幅に成果が落ちてしまった。

 ここから、「実は、多くのユーザーはIBMに硬い内容を求めているのでは」と仮説を立て、今まで以上に硬い文面に変更したところ、開封率51.9%、クリック率16.3%と大幅に改善された。

 ユーザー目線を起点にしてPDCAを回すと、データだけで判断しているだけでは出せない成果が得られるんだと実感したと千葉氏は語った。

ユーザーの心理に寄り添う

 中川氏は、購買前・購買中・購買後という、一連の「活動チェーン」を前提に考えるべきだと提言した。当然、顧客は商品を手にすることが目的ではない。自分の悩みを解決するための手段として商品を購入している。企業側は、商品を購入してもらうまでのステップを重視しがちだが、むしろ購入後のフォローが重要だ。顧客が課題解決できるまで、ユーザーに寄り添う姿勢を崩してはいけない

 実際、中川氏は活動チェーンを前提に設計した施策で成果を上げている。某印刷通販サービスのロイヤルユーザー育成施策を請け負った際、まず既存顧客向けに「印刷商品の注文過程にどのような期待を持ち、何を悩みに思っていたのか」「実際の購買体験でその問題は解決したのか」をアンケートで調査。

 当然、何に期待し、何が解決されたのかは人によって異なる。中川氏は、ユーザーの傾向を4つに分類し、それぞれの課題解決をサポートするための情報発信を行った。

 「もともとのあなたの期待はこうでしたよね、当社のこのサービスを使っていただければよりご満足いただけますよという内容のメールを、1年間送り続けました。すると、ロイヤリティ指数高ランクユーザーは120%増加、アクティブユーザー率は13.7ポイント向上したんです」(中川氏)

 商品購入後の課題解決までフォローすることで、ロイヤリティが向上し、ブランドへの愛着も深まる。逆に、顧客の課題や悩みなど、見えない部分をないがしろにすると、購入した段階でユーザーから見切りをつけられる可能性が高い

データがない時にどう意思決定すべきか?

 松本氏からは、意外な言葉が飛び出た。菅野氏から、「ほとんどデータがない状態でも意思決定しなければいけない場合はどうすればいいのか」という問いに対し、松本氏は「勘に頼ったほうがいい」と回答したのだ。

 「勘も、個人の経験によって蓄積されたデータをもとにしていますからね。江戸時代の商人なんかは、データなんて使わなくても経営判断できていた。そもそも、100%データが十分そろっている状況なんてあり得ないわけです。データありきで施策を考えるとか、データがないと判断できない、というのはやや矛盾していると思います。データがなくても、自分の責任の範囲内で腹をくくって判断できるかが重要です」(松本氏)

 では、勘はどう磨けばいいのかというと、とにかく経験していくのがベストなようだ。

 「将棋のルールを理解したからといって、すぐプロに勝てるわけではない。勝敗を左右するのは、どれだけ場数を踏んでいるか。どんなに小さな施策でもいいからとにかく実行して、洞察する機会を増やしていけばいい」(松本氏)

 データ分析のスペシャリストだからこそ、データだけを盲信するリスクと、データ化できない部分の価値を実感しているのだろう。3名の話を受け、菅野氏は最後に、とある名作の一節を引用して場を締めた。

 「1943年に出版された『星の王子さま』という小説に、“一番大事なことは目に見えない”という一節があります。どれだけ時代が進んでも変わらない、普遍的なことだと、今日のセッションで実感しました」(菅野氏)

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

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