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ファンを軸としたマーケティングの設計図~熱量を生み、育て、広げるには

外出自粛の親子にワクワクを届けた#レゴからの宿題シリーズ/社員の遊び心がファンとの関係構築に結びつく

 トライバルメディアハウスの高橋氏が、ファンと触れ合う場を設計し、マーケティング成果につなげるための方法を解説する本連載。今回からはファンとのリレーション構築を積極的に推進しているブランドの担当者に取材し、その実践を紐解いていく。登場いただいたのは長年にわたって親と子どもの心をつかんで離さないレゴジャパン。外出自粛中に行ったSNSでの発信やオンラインイベントを中心に、自社のファンとつながり続けるための工夫について聞いた。

いつの時代も「子どもセントリック」を徹底

高橋:これまでファンを軸としたマーケティングを行うための方法について、寄稿連載としてお伝えしてきましたが、今回からはブランドの取り組みにフォーカスしていきたいと思います。初回はレゴジャパンの寺門さんに、コロナ禍で展開した「ファンとつながり続けるための活動」についておうかがいしていきます。まずは寺門さんのご担当業務を教えていただけますか。

寺門:公式ソーシャルメディアやアプリ、デジタル広告やデジタル上でのイベントやキャンペーン企画などデジタルマーケティング全般を担当しています。

高橋:レゴには熱量の高いファンが世界中にいらっしゃいますよね。実は5歳になるうちの息子もレゴが大好きで、夢中になっているんです。ブランドを作る上で大切にしてきたのは、どんなことなのでしょうか。

(左)レゴジャパン デジタルマーケティングマネージャー 寺門久美子氏(右)トライバルメディアハウス チーフコミュニケーションデザイナー 高橋遼氏
(左)レゴジャパン デジタルマーケティングマネージャー 寺門久美子氏
(右)トライバルメディアハウス チーフコミュニケーションデザイナー 高橋遼氏

寺門:子どもたちを真ん中に置いて考える、ということを最も大切にしています。

 レゴは1932年にデンマークのビルンという小さな村にいた家具職人のオーレ・キアク・クリスチャンセンが始めたブランドです。当時、世界恐慌が巻き起こった時に、辛い思いをしている子どもたちに何かできないかと考えたのが、家具職人の知識と技術を生かして、手元にある木材でおもちゃを作ることだったのです。その2年後、今も続くレゴ社が設立されました。レゴという社名の由来は、デンマーク語の「LEg GOdt (よく遊べ)」 から来ています。

 現在も「世界の明日を創造していく未来の担い手を育成する」という理念を掲げていて、商品開発、営業活動、社員の働き方やCSRに至るまで、すべてこの理念を軸に動いています

高橋:マーケティング活動をする上でも同様だということですよね。

寺門:はい。子どもたちに安全に楽しく遊んでもらうことを最優先にしています。デジタルマーケティングに関しても、2000年にアメリカで制定されたCOPPA(児童オンラインプライバシー保護法)に従っており、デジタル広告を出稿する場合も、出稿先のプラットフォームやメディアが本当に子どもにとって安全なのかを、厳格に判断しています。

高橋:どんな時も、子どもたちに楽しんでもらうことを第一に考えてきたブランドなのですね。創業時の世界的な恐慌に見舞われていた状況と、コロナ禍の困難な状況は似ているようにも思えます。

寺門:私も改めてレゴグループの歴史を紐解いた時に、今と似ているなとしみじみした気持ちになりました。

社員の遊び心が、ファンとの関係構築に結びつく

高橋:レゴグループでは、今回のコロナ禍において「#LetsBuildTogether(#一緒につくろう)」という1つのタグラインに沿って、様々な施策を展開されていましたよね。これはどのような経緯で実現したものだったのでしょうか。

#LetsBuildTogetherのコンセプト
#LetsBuildTogetherのコンセプト

寺門:最初に動き出したのは「#レゴからの宿題シリーズ」で、これはレゴジャパンが独自で考え実行したものでした。日本で全国の小・中・高校に休校要請が出されたのが2月末のこと。その翌週の月曜日から日本中の子どもたちが急に家にいなければならなくなり、学校にも行けなければ外で遊ぶこともできず、もちろん友だちにも会えないという状況になってしまいました。

 この状況で「レゴに何ができるだろう」と社内でディスカッションしたところ、営業メンバーからアイデアが出てきたんです。自分たちの子どもも含む、日本中の子どもたちが家で退屈したり不安でいるだろうと考え、どうやったら子どもたちを少しでも楽しませることができるかを模索している中、彼らが、レゴでどれだけ長いクルマが作れるのか、チャレンジしていたことがきっかけです。これをSNSのお題として毎日チャレンジできるようなコンテンツにしたら、家で困っている親子の助けになるのではないかと考えました。

 そこでまず3月7日に、TwitterとFacebookで「なが~いクルマを作ってみよう!」というお題を出してみました。

寺門:すると私たちの期待通り、チャレンジした親子ができた作品を写真に撮ってアップしてくれて。そこから少しずつ「地球のいきものみんなが喜ぶ、エコなクルマをつくってみよう!」「ジェットコースターのない遊園地に、きみがデザイナーになってジェットコースターを作ってあげよう 」といったお題を出していきました。

高橋:実は私も、自粛期間中にこの「レゴからの宿題シリーズ」にとても助けられまして。息子が毎朝「今日の宿題は何?」って楽しみに起きてきて、私がTwitterで検索して「今日はジェットコースターだって!」とかいいながら、一緒にレゴを作ったんですよ。やっぱり一斉休校になって何をしたらいいかわからないという中で、「これいい!」とユーザーとしての目線で思いました。

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この記事の著者

高橋 遼(タカハシ リョウ)

1983年生まれ。2010年株式会社トライバルメディアハウス入社。クリエイティブディレクター。ファンを軸としたマーケティング戦略・実行に従事し、これまでに航空会社、ファッションブランド、スポーツブランド、化粧品ブランド、飲料メーカーなどを担当。著書に『熱狂顧客戦略』(翔泳社)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/07/16 09:00 https://markezine.jp/article/detail/33526

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