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今後のBtoBプロモーションの勝ち筋は、オフライン広告にあり!:Relic北嶋氏×テレシー土井氏対談

 コロナ禍で対面の営業がしづらい昨今、BtoB企業はプロモーションの方法を変える必要性を感じることも多い。こうした中、BtoB企業はどのように顧客との接点を持てば良いのだろうか? 新規事業開発を支援しイノベーションマネジメント・プラットフォーム「Throttle」などを提供するRelic代表の北嶋貴朗氏と、運用型テレビ広告「テレシー」を運営するテレシー代表の土井健氏は、オンライン施策と併せてタクシー広告などのオフライン施策を組み合わせることで成果を上げている。本記事では両者に、BtoBプロモーションに関する知見と成果を出すための使いこなし方について伺った。

100万円から始められる運用型テレビCM

――まず、お二人のプロフィールと両社の事業についてお聞かせください。

北嶋:私は組織人事や新規事業開発に特化したコンサルティングファーム、ITメガベンチャーのDeNAにおける新規事業開発やオープンイノベーションの責任者を経て、Relicを創業しました。弊社では、大企業やスタートアップ企業の新規事業開発や事業のグロースに特化した事業を展開しています。3本柱の事業の1つが「インキュベーションテック事業」で、企業の新規事業開発支援に特化したSaaSプロダクトを複数提供しており、その代表格が企業における新規事業開発を総合支援するSaaSであるイノベーションマネジメント・プラットフォームThrottle(スロットル)です。これは、一言で言うと導入先の企業に継続的に新規事業が生まれる仕組みを作るためのプロダクトです。

 他にも、企業の課題に合わせてオーダーメイド&一気通貫で新規事業開発を支援する「事業プロデュース」と、スタートアップ企業やベンチャー企業に投資をしたり、大企業との共同事業やJVによる事業開発したりなどを行う「オープンイノベーション事業」を展開しています。

土井:私はネット広告畑で長らくアドテクノロジーの領域に携わってきました。1年ほど前に、我々VOYAGE GROUPと電通とで運用型テレビCMのテレシーを一緒にやることになり、同社の代表に就任しました。

 テレシーは、テレビCMを100万円から出稿でき、ネット広告では当たり前だったPDCAを回すことができるサービスです。たとえば、いくら使うとどれくらいのインプレッションが取れて、CPMはどのくらいになるかといったことを事前にシミュレーションすることができます。また、放映後の成果もCPAやCPIといったネット広告に馴染みのある指標で見られます。

株式会社Relicホールディングス/株式会社Relic 代表取締役CEO 北嶋貴朗氏

――北嶋さんは本を出版されたそうですね。

北嶋:はい。『イノベーションの再現性を高める 新規事業開発マネジメント ――不確実性をコントロールする戦略・組織・実行』という、企業内で新規事業に携わる方に向けた本を出版しました。大変ありがたいことに発売から2ヵ月で第4刷まで重版がかかるなど、ご好評いただいています。

土井:新規事業に関することが体系的にまとめられています。たくさんの図がちりばめられており、読み応えのある1冊で、私自身も勉強になりました。

BtoB企業のプロモーションにおける変化

――Withコロナ時代になりデジタルシフトが進んでいますが、BtoB企業におけるプロモーションはどのように変化してきているでしょうか。

北嶋:大きく2つの変化があると思います。1つはコロナ以降、低リスクのデジタル施策により多くの企業が取り組むようになり、競争が激しくなっています。そのため、以前と同じ取り組みを続けているだけでは、当然ですが効果は悪化していきます。

 2つ目は、対面営業がしづらいことにより、ニーズが顕在化していないマーケットのマーケティングが難しくなっているように感じます。Throttleも、「イノベーションマネジメント・プラットフォームって何?」と思われる方がまだまだ多く、今はマーケットを創っているフェーズです。そのため決裁者の方と対面で文脈を含めてしっかりお話をしたいのですが、難しい状況です。細かい例ですが、アウトバウンドコールをしても、リモートワーク下のため会社に誰もおらずつながらないことも増えましたね。

土井:我々が代理店を務めるタクシー広告やエレベーター広告もそうですが、ここ数年で新しい広告媒体が増えてきました。マーケットを広げようと考えた時に、これまでは決裁者に知ってもらうための手段が新聞・専門誌への出稿や展示会への参加など非常に限られていました。

 しかし、タクシー広告やエレベーター広告、タワーマンションのサイネージといった新しい媒体の登場が、BtoBのプロモーションに大きな変革をもたらしているのではないかと思います。

テレビCM・タクシーCM・アドトラックの効果

――自社のサービスにおけるプロモーション活動でどのような課題を抱えていますか。

北嶋:繰り返しになりますが、Throttleは前例のない新しいプロダクトでニーズが顕在化していないため、限られた顕在層に対するオンラインでのインバウンド系施策をやり切った後は、メールマーケティングやフォームマーケティングといったオンラインでのアウトバウンド系の施策と事例を活用した広報を組み合わせて効率良くアプローチしていこうと考えました。しかしこれもある程度やっていくと、上限が見えてきます。そこから先はより広く、より強く潜在層に向けて啓蒙する必要があるため、こちらもよりリスクを取るアプローチをしていく必要があります。

――土井さんもテレシー自体のプロモーションに取り組まれているそうですが、いかがでしょうか。

土井:運用型テレビCMの中でテレシーは後発のサービスのため、いかに認知を取っていくかということが課題でした。そのためには、それ相応の広告投資が必要だと考えていました。

株式会社テレシー 代表取締役 土井健氏

CVは462%!決裁者にリーチしやすい、オフライン施策の強み

――オンライン施策と併せてオフライン施策を検討されたきっかけと、実際にどのような取り組みを行ったかお聞かせください。

北嶋:最初はオンライン施策に取り組み順調に導入社数を増やしていきましたが、マーケットが未成熟なこのタイミングでは500社くらいが限界かなという手応えでした。そのため決裁者に訴求しやすく、リーチできる人数もある程度多い媒体をと考え、オフラインでの広告を検討し、テレシーさんにご支援いただくことになりました。

 Throttleは大企業の決裁者や中小企業の経営者がメインターゲットだったので、タクシー広告とエレベーター広告がそこに一番効率良く届くと考えました。

――成果はいかがでしたか。

北嶋:2021年6月から約1ヵ月間実施して、タクシー広告で約1,400万円、その時期に被せて約3ヵ月のエレベーター広告を約300万円で行い、トータルで約1,700万円の予算をかけました。反響はとても大きくて、LPへの流入数は370%、オーガニックでの流入数が272%、コンバージョン数は462%と大幅に増加しました。

 短期的に見てもこれだけの成果が出ていますが、中長期で見ると、リードの質が変わったというメリットがありました。従来はWebで情報収集するのは現場の担当者の方が多く、そこからアポを取っても導入まで時間がかかることも多かったのですが、オフライン広告では大企業や有名メガベンチャーの決裁者の方からの問い合わせが多く、リードタイムが短くなりました。

 また、認知が広がることで営業がやりやすくなったり、成約率が上がったりという副次的な面でも効果があり、様々な観点から、実施して良かったです。Throttleの導入企業が他のプロダクトや事業プロデュースを利用するという効果にもつながりました。

土井:テレシーは、2020年の12月に約2,000万円タクシー広告を出稿し、CPAは10万円強ほどでした。これは3・4ヵ月でペイでき、うちとしては費用対効果が合う数字です。決済者の方が多く見てくださり、資料請求や問い合わせからの商談化率が通常のインバウンドリードの2~3倍高くなりました。

 また、今は検討するタイミングではない場合でも、半年後にテレビCMを打とうとなった時に想起してくれるというような、副次的効果も感じられました。そのため、タクシーCMはずっと続けていくのがいいと考えています。ただ、同じクリエイティブを1年使うと効果が枯れてくることもわかり、新しいクリエイティブにしたところまた成果が上がってきました。

 2021年4月からまたタクシーと併せてエレベーターやタワーマンションのサイネージなどにも出稿しました。9月から10月にかけては、テレシーを利用してテレビCMも打ち、最近はアドトラックも利用しています。BtoB企業でアドトラックを利用しているところは少ないですが、ある程度認知が取れた段階で見られると印象に残るようで、コスパはいいと思います。

タクシー広告で効果が出やすい3つの条件

――BtoB企業の中でも、オフライン広告と相性の良い企業というのはあるでしょうか。

土井:タクシー広告においては、効果が出やすい3つの要素があります。1つは、BtoBの企業であること、そして2つ目が、ビジネスの対象企業がある程度広いこと。北嶋さんの新規事業も弊社で手がけるプロモーションも多くの企業にとって必要となるものですよね。そして3つ目が、LTVが高いことです。この3つがそろっている企業は、タクシーCMは高い確率で効果が合うと思います。

――オフライン広告の中でも、媒体ごとの特徴はありますか。

土井:タクシー広告を出したら、ここ数年で上場した会社やスタートアップ企業の経営層の方からの問い合わせが増えました。その後テレビCMをやった時には、大企業の管理職クラスの方からの問い合わせも増えたのが特徴的でした。

 テレビCMに関しては、いきなり利用するよりもタクシー広告やエレベーター広告などから始めて、手応えを得たタイミングで使い始めるのが良いと思います。

 タクシー広告も、まとめてやろうと思うと1,000万円以上必要になってきますが、たとえば大阪だけなど地域を絞れば1週間50万円ほどでできます。タクシー広告をやるなら3~4週間は必要なので、予算としては100~200万くらいです。それで大阪だけで回して成果が良ければ全国や東京でやろうというように、低予算から試していくこともできます。

――テレシーは100万円から出稿できるということですが、それまではあまりテレビCMを利用していなかった中小企業にも利用されていますか。

土井:はい、今までテレビCMをやっていなかった方々をテレビの領域に連れてこられたという自負があります。私も最初は懐疑的でしたが、実際に効果が出ることが利用してわかりました。100万円で成果が出ればもっとやりましょうという話になるので、結果的にはそれだけでは終わらない場合が多いです。

北嶋:タクシー広告やテレビCMのように一定のお金がかかる媒体に出すことで、それだけ体力があるならばきちんとした会社だろうという安心感をもってもらえるのではないかと思います。

土井:それはあります。実際にテレビCMもタクシー広告も審査がとても厳しいので、それをクリアしているという点が安心感につながると思います。

これからのBtoBプロモーションは「点ではなく、面で捉える」

――今後、BtoBのプロモーションはどのように変化していくと思いますか。

北嶋:これまで以上に、プロモーション施策を点ではなく、線や面で捉えていくようになるのではないかと思います。以前は単一の効果の高い施策を続けて成果を出すこともできましたが、今は人と接触するタッチポイントや届けられる情報・コンテンツがどんどん細分化したりしていて、施策同士のつながりを考えて設計していくことがより重要になっていると思います。

 また、企業での意思決定プロセスも複雑化していて、一人に話せば良いというものではなく、様々な立場の人に適切にリーチしなければいけないことが増えています。そうした意味でも、オンライン・オフライン含めて施策に取り組み、広告・プロモーションに限らず広報なども含めて統合的に考えるべきだと感じています。

土井:今後クッキーレス時代になりリターゲティングができない世界がやってくるかもしれない中で、新しい広告媒体やプロモーション手段に取り組む重要性がより高くなっていくのではないかと思っています。我々も新たな媒体の開発をしています。

――最後に、それぞれ今後の展望をお聞かせください。

北嶋:タクシー広告とエレベーター広告をやってみてとても手応えがあったので、タイミングを見てテレビCMも検討できたらと思っています。あらかじめそれも見据えて、テレビCMに耐えうる品質のクリエイティブを制作しました。

 引き続きリスクを取って投資し、Throttleだけでなく、Relicが提供する世界でも類を見ない新規事業支援のプロダクトやソリューションを統合的に展開することで「インキュベーションの民主化」を実現し、1,000の大義ある事業と事業家を創出することを目指します。

土井:我々は、テレシーというサービスを提供する側でありながら、自分たちでもテレシーを始めタクシー広告やエレベーター広告などを広告主として利用しているという特殊な立ち位置にあります。実際に予算を出して利用して知見を貯めているので、「御社であればこれくらいの予算でこのくらいのCPAが取れると思います」ということを実体験に基づいてお伝えできるのが強みです。

 BtoB企業でオフライン広告のプロモーションを検討している方は気軽にテレシーに問い合わせてきて欲しいですね。我々の実例をもってどの媒体が合いそうというコーディネートができると思います。

 その強みを活かして、世の中にまだ知られていない良いものや良いサービスを広げるお手伝いをやっていきたいと思います。

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この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行...

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MarkeZine(マーケジン)
2021/12/17 10:00 https://markezine.jp/article/detail/37878