検索行動の変化によって求められるビジュアルの多様化
写真や動画などのビジュアルデータを活用するSaaS型プラットフォームを提供し、これまでに400社以上の「映える」コンテンツ作りを支援してきたvisumo。
「直近の2~3年でビジュアル活用の状況が大きく変わった」と語るのは、長年ベンダーの立場からECサイトの構築に携わってきた井上氏だ。

Googleによれば、ネットショッピングをする生活者の50%が、意思決定の前にビジュアル情報を得ているという。ひと昔前まではテキスト情報しかなかったGoogleの検索結果ページには、商品の写真が数多く並ぶようになった。
また、「ググる」のではなく「タグる」ユーザーが増えたことも大きな変化だ。たとえばスニーカーについてググる場合、まずはブランドの公式サイト、次に小売店のサイトが表示され、順位が変動することはほとんどない。一方、同じ情報をタグる場合、関連するハッシュタグのついたスニーカーの情報を、リアルタイムで得ることが可能だ。情報に鮮度を求める生活者のニーズにより即した検索手法といえる。
こうしたユーザーの検索行動の変化は、Webコンテンツの在り方自体にも影響を及ぼしている。最近の消費者の目を集めるコンテンツといえば、Instagram経由やYouTube経由のビジュアルを表示するような「映える」コンテンツだ。ビジュアルコンテンツの導入によって、サイト全体のトラフィックが5~10%も上がったような事例も出ている。
「カスタマージャーニーにおいて、ユーザーがアテンションを取るタイミングは、興味のあるものを探している、いわばウィンドウショッピングのような状態です。この段階のユーザーは、テキストよりもビジュアルから情報を深掘りする消費者行動を取るため、今後はビジュアルの多様化がより重要になると考えています」(井上氏)

ファンマーケティングでビジュアルの多様性を保つ
では、ビジュアルの多様化とは一体何なのだろうか。
ビジュアルの多様化によってコンテンツの充実を図っている好例がワークマンの事例だ。同社ではUGC活用の一環として、Instagramに投稿された商品の写真を自社ECサイト上に掲載している。「ワークマン女子」「釣り」「アウトドア」など、タブ別に並んだ写真や動画から商品紹介ページへの遷移を促すことで、ビジュアルを起点にユーザーの回遊を生み出す仕組みだ。

たとえば同じパーカーでも、人によって着用するシーンは様々だ。シンプルな商品写真だけを掲載するのではなく、シーン別の着用例を見せることで、ユーザーは自分が実際に購入した後のイメージを想像しやすい。このように、従来のカタログにはない訴求力が、ビジュアルの多様性の本質といえる。
とはいえ、自社でビジュアルを量産化するのは時間もコストもかかる。また、従来のような商品特集ページでは、作成後に更新性を保つのが難しい。これらの課題を解決するためには、第三者の力を借りてビジュアルの多様性を保つ「ファンマーケティング」が重要になってくる。

UGC活用において、ビジュアルの使用許諾を取ったり、着用サイズや身長などの+αの情報を獲得したり、ユーザーとのコミュニケーションは必要不可欠だ。
「お客様は、好きなブランドからのお声がけに対しては非常にポジティブです。専任の担当者を添えてお客様とのコミュニケーションを強化し、そこから得た情報をマーケティングや商品開発に活かす、といった施策を実践する企業様は増えてきていると思います」(井上氏)