個人の利用も増加中 プラットフォームの規制強化が背景に
――サービスを開始した2013年から現在までで、企業の音楽活用に変化はありましたか?
やはりここ数年、コロナ禍の影響もあってか非常に盛りあがってきたと感じています。いままでは直接会って行っていたお客さまへの製品の説明を動画で行うなど、リモートワークをはじめとした対面ではないコミュニケーションが増えたことも大きいでしょう。
また、可処分時間の中で家にいる時間が増えたことによる巣ごもり需要の影響もあると思います。2013年にAudiostockのサービスを立ち上げた当初、YouTubeもIT好きな人が利用するサービスといったイメージでしたし、売上がなかなか伸びない時期も長かった。それが一般の方たちも当たり前に動画を観るようになったことが、ここ数年の変化ではないでしょうか。
Audiostockはアーティストの音楽を聴くためにApple Musicを利用するといった文脈ではありません。そのためサービス開始当初は、個人で制作した動画に音楽を入れるために個人の人がお金を払うのかという点に懐疑的でした。
ただ、さまざまな方がYouTubeによる発信を行っており、数万人、数十万人の登録者がいるYouTuberさんはマネタイズもできている。そういった方たちが、Audiostockを利用してくださるケースもとても増えています。また、YouTubeも音楽の規制が厳しくなってきており、著作権の問題でアカウントを消されてしまうリスクもある。そのリスクを減らすために、月々2,200円のスタンダードプランを利用している方も多いように思います。売上は8割くらいが法人ですが始めたころは約99%が法人だったので、当初よりは個人の方の利用が増えていますね。
――ユーザー企業の特徴や、利用されている音楽のトレンドについて教えてください。
放送業界の企業さんにお使いいただいていることも多いですが、IT関連の企業さんでは、自社サービスの使いかたに関する動画制作に活用いただいていたりと、ユーザー企業さんの業種はバラバラです。
コロナ禍になって以降の変化で言えば、フィットネス関連の企業さんに利用していただくケースも増えました。フィットネスは基本的に人が集まらなくてはいけないため集客に苦戦。その打開策として、オンラインレッスンを始めたそうです。そんなときに無音だと味気なくなってしまうものの、JASRACの音楽は権利上オンラインで配信することはできないため、Audiostockを利用することになさったそうです。
また学校法人さんの契約も非常に増えました。2020年~2021年ごろはやむなく中止になってしまった学校見学会の代わりとして、大学や専門学校が学校紹介用の動画をつくるために音楽を活用したいというニーズも多かった。あらゆるものがオンライン化したことで、そういった新たな需要が生まれましたね。
トレンドで言えば、2021年にいちばん検索された言葉は「和風」でした。やはり東京五輪の影響でしょう。日本のことを紹介する際の音楽として、ダンスミュージックのメロディーに三味線が入っていたり、エッセンスとして和の要素が求められることが多かったのだと思います。それをのぞけば「ピアノ」、「ギター」、「ジングル」、「爽やか」といった定番のワードが並びますが、その前は「ダブステップ」、さらにその前は「EDM」などが上位に入っていたこともありました。
――日本の音楽コンテンツにはどういった特徴があると思いますか?
たとえばアメリカのビルボードチャートと日本のオリコンランキングを比較すると、ランクインしている曲の雰囲気はまったく違います。おそらくアメリカはダンス文化があるので、音楽は踊るためのものというイメージもあるのでしょう。そのためサビがどこにあるかよりも、上手く音楽にのれるかが重視される傾向にあると思います。一方日本の音楽についてアメリカの方に聞くと、「メロディーをはじめとした構成がしっかりしている」、「転調なども多くテクニカルだ」という印象を持っている。この違いが、日本独自のものなのではないでしょうか。