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WHO/WHATを解き明かす、上流マーケティングの10ステップ

正しい「セグメンテーション」で事業の成功確度を引き上げる──ターゲット、潜在ビジネスサイズの捉え方

 現役でユニリーバのマーケティングから経営まで実行している木村元氏が、自身の経験をもとに開発したWHOとWHATを正しく設定していくためのフレームワーク「WHO/WHATの10ステップ」。本連載では、事例とともに同フレームワークの使い方を解説していく。今回は、ステップ1と2にあたる、WHOの「セグメンテーション」と「潜在ターゲットサイズ」の具体的な進め方について、実務で使える形に落とし込んで解説していく。

なぜ「セグメンテーション」を行うのか

 前回の記事では、WHOとWHATを明確にしていく10のステップの全体像について説明させていただきました。

WHO/WHATの10ステップ

STEP1:セグメンテーション
STEP2:潜在ターゲットサイズ
STEP3:獲得難易度チェック
STEP4:ブランドセンスチェック
STEP5:優先順位付け
STEP6:デプスインタビュー(N1インタビュー)
STEP7:インサイト発掘
STEP8:タスクマップ
STEP9:コンセプトライティング
STEP10:コンセプトテスト&ロック

 本記事では、その中のステップ1と2にあたる、WHOの「セグメンテーション」と「潜在ターゲットサイズ」に関して実務で使える形に落とし込んで解説をしていきます。

「WHO/WHATの10ステップ」は上記STP分析の工程を、より詳細に10段階の工程に分解したもの(クリックすると拡大します)

 セグメンテーションは、誰に自社のプロダクトやサービスを買ってもらうかという、ターゲットを定めるために設定します。

 明確なセグメンテーションを行わなかったことで、ターゲットの定義がぼんやりとしてしまった経験がある方も多いのではないでしょうか。

 ある仮想のプロダクトを例に挙げてみましょう。たとえば、オーガニックのスキンケアブランドを立ち上げることになったとします。

 ターゲットを「Z世代で環境に意識が高く、ナチュラルメイクを好む女性」とします。完全にゼロから立ち上げるブランドであれば、一見成立しそうにも見えますが、ビジネスを進める上ではいくつか不安な要素があります。

 たとえば、このターゲット像からは、ターゲット女性が現在どのようなブランドを使用しているかのイメージが湧きづらいです。

 現在既に何らかのオーガニックのスキンケアブランドを使用しているのか、それとも今は一般的なスキンケアブランドを使用していて、オーガニック系のブランドを探しているのか不透明です。

 ターゲットが現在使っているブランドが異なるだけでも、取るべきマーケティングプランやコミュニケーション施策は大きく異なってきます。

 具体的には、オーガニック関連のブランド内でのブランドスイッチを促すのか、一般スキンケアからオーガニック系スキンケアへのカテゴリー移行を促すのかといったことが論点となります。

 他にも、「Z世代で環境に意識が高く、ナチュラルメイクを好む女性」というユーザーが、どれくらいの潜在顧客がいるのかもイメージが湧きません。

 こうした懸念点から、ターゲティングを行う際には、必ず並行してボリュームを算出する必要があります

 ターゲットのボリュームのうち、△%の方に○円で□個買ってもらうと、これくらいのビジネスサイズになるという大まかなプランを立てることができ、先々のマーケティング戦略が数値と連携した明確なものになるからです。

 もう少しわかりやすくするために、ナチュラルメイクブランドの例を使って、さらに、セグメンテーションを説明します。

 下図は、ナチュラルメイクブランドのターゲット選定に用いるセグメンテーションの一例です。表から分かる通り、セグメントといっても、性別や年齢のようなデモグラフィック情報だけでなく、対象カテゴリーとの関与度や使用状況(メイクの頻度、そして使用の目的といった様々な指標があります

セグメンテーションの項目例(クリックすると拡大します)

 これらを細かく設定していくことによって、買ってもらいたい顧客をセグメント化、つまり細分化していきます。

右脳型マーケターこそセグメンテーションを

 マーケターの中には、セグメンテーションをせずに成功確度の高いマーケティング施策を打ち出す方がいらっしゃいます。

 右脳型と称されるマーケターや経営者の中には、前段のセグメンテーションの整理を行わず、どのような施策を打つかという“HOW”から議論をはじめ、商品をヒットさせる方もいらっしゃいます。

 1~2年で数億円の売り上げを立てるスタートアップのプロダクトやサービスには、このような例も多いのではないでしょうか。

 明確なセグメンテーションを行うことなく事業が成功する事例には複数パターン考えられますが、たとえば、インフルエンサーを活用したブランドは良い例だと思います。

 インフルエンサー自身がたくさんのファンを抱えており、自身のSNSの投稿やライブによって顧客の声を聞ける場合がこれに該当します。

 また、toBであれば、業界のペインポイントなどを既に熟知しており、サービスの立ち上げとともに顧客がついてくる場合もあるでしょう。

 こうした例では、自分自身の周囲の方々、もしくは自分自身をコアターゲットとして、マーケティング施策を展開することにより、高い確率で顧客の心をつかむ施策を展開することが可能です。

 しかし、立ち上げとともにセグメンテーションを行わず、先々のターゲット像を明確にしない状況でマーケティング施策を実行している場合には危険な側面もあります。

 たとえば、経営者や担当者の頭にのみ顧客の情報がとどまっており、他のチームメンバーになぜこの施策を実行しているのかが理解されず、チームとしてのまとまりが悪くなる場合があります。

 また、初期は売上を作ることが可能だった半面、一定の顧客を獲得した後に、売上が頭打ちになる場合も多いと思います。

 これは、想定しているコアターゲットをある程度獲得できた後に、別の顧客を取りに行く戦略が明確になっていないことが原因です。

 マーケティング部門のリーダーの仕事が「チームの力を最大化し、中長期的に大きな規模のブランドを作ること」であるならば、セグメンテーションによって市場のどこを狙い、どういった目的の顧客を狙いにいくかを明確にすることで、チームの意思統一を図ることができ、先々の戦略も明確になります

 マーケティングは多大な広告予算を投じる場合もあるため、成功確度を高め、次回以降にも再現性を持たせることのできるマーケティング活動を念頭に置く必要があります。

 そのためには、セグメンテーションによって、狙うべき市場を整理しておくことは有用です。

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この記事の著者

木村 元(キムラ ツカサ)

株式会社Brandism代表取締役ユニリーバに2009年に入社。約12年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360°のプロモーションから、グローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にてダヴを担当し、グローバル全体のブランド戦略設計をリードした後...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/11/21 09:30 https://markezine.jp/article/detail/40594

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