次々と登場する「検索エンジン」
昨年はオーストラリアで生まれたムーター、チームラボの国産検索エンジンSAGOOLといったプレーヤーが日本の検索市場に参入した。今年は中国最大手、百度(baidu)が参入予定で、日本語検索サービス市場はますます活発しそうだ。ところで、これらの検索エンジン、確かに成長を続けているとはいえ、はたして日本市場でそれなりのマーケットシェアを獲得できる余地はどれだけあるのだろうか。
現在、日本の検索市場はYahoo! JAPANとGoogleでおよそ8割のシェアを占めている。残りはMSNや@niftyなどのポータル系が占めている状況にあり、ここに割って入るのはかなりの困難を極めると予想される。後述するが、消費者にとって検索行為が習慣化した今日において、検索サービスを乗り換えさせるためには、相当に革新的な検索体験や、今までのものを捨て去り、切り替えさせるほどの十分な付加価値を提供する必要がある。
「こうすれば日本市場でも勝てる可能性がある」という妙案は残念ながら思い浮かばないのだが、過去に果敢に挑戦したプレーヤーたちの事例から、少なくとも「これは上手くいなかい」ということは見えてきている。今回はそれらをまとめながら、検索市場で戦っていくために必要なことをまとめてみよう。
1. ユーザの不満を把握すること
まずは「ユーザの不満を把握すること」だ。これは業種に限らずマーケティングを展開する上で当然必要なことであるが、これができていない。例えば2004年にGMOインターネットの「9199.jp」はスマップの稲垣吾郎さんを起用して、テレビCMなどによる大々的なプロモーションを展開した。しかし当時、彼らが訴求していたのは「70サイト同時検索」だった。「『70サイト同時検索』することは訴求できるだろうか?」と考えてみると、大多数のユーザはYahoo!を、そしてせいぜいGoogleを併用するといった程度である。少なくとも検索目的に応じて、"検索目的"にサイトを切り替えるなどという行動は起こしていないだろう。
複数の検索エンジンを同時に検索できる「メタ検索エンジン」そのものが流行らなかった国内市場において、「検索サービス」というポジショニングを得るには不十分な機能しか持たなかったことが、9199.jpの苦戦の原因ともいえるが、訴求を誤ったこともプロモーションを効果的に生かせなかった要因だろう。つまりこれから検索市場に参入する場合は、Yahoo!やGoogle、MSNとは違う魅力を機能として実装し、かつユーザに適切に伝えていく必要があるということだ。
2. 視覚に工夫を凝らしたUIはユーザをひきつけない
世界中の過去の歴史を紐解いてみても、検索結果のUI(ユーザ・インターフェース)における視覚的違いをアピールした会社で成功したものはいない。サービスが公開された当初は注目を集めるが、すぐに飽きられ廃れていくケースが大半なのだ。例えば「Groxis Inc.Grokker 2」や「Viewpoint」を覚えている人、今でも使っている人はどれだけいるだろうか? 日本でもムーターやマーズフラッグの試みは当初注目を集めたが、現在のところ苦戦している。
例えばマーズフラッグのようにリンク先ページのサムネイルを表示する手法はビジュアルレリバンシー(Visual Relevancy)と呼ばれており、ユーザが情報を手早く探し出すための補助手段として有効であることは米国の専門家が行った調査でも明らかになっているし、私自身も良い試みであると思う。しかしだからといって、検索サービスを乗換させるほどの動機付けはないのだ。
というのも、同手法が威力を発揮するのは特に検索行動におけるリカバリー(過去に訪問したウェブサイトを再び探し出す)の場合だ。未知の領域の情報を探し出す際には結局リンクをクリックする必要があり、検索体験が改善されたと実感できるほどの効果があるわけではない。
また、Yahoo!やGoogleに慣れてしまっているために「単純にテキスト情報を一覧表示してくれたほうが目的の情報を探しやすい」という消費者の慣れの問題もあるだろう。いずれにせよ、UI(ユーザ・インターフェース)の工夫は、機能次第で差別化要因のひとつとはなりえるが、決定打にははらないということだ。プラスαが求められるのだ。
3. 検索技術の優劣は意味がない
「独自のアルゴリズムで~」「国産検索エンジンだから日本語が~」といった具合に検索技術の優秀さをアピールすることは今日において有効ではない。