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難しい本が敬遠される時代、電子書籍とオンデマンド印刷に専門書の活路を見出す、インプレスR&Dの取り組み

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2012/08/01 11:00

 今年5月、インプレスR&Dは新たな専門書の出版ブランド「Next Publishing」を立ち上げた。一般書店では販売せず、電子書籍版とプリント・オン・デマンド(POD)サービスを使った紙の本で提供するという独自路線を打ち出したこのブランドはどのように生まれたのか。立ち上げにかかわった、錦戸陽子氏と福浦一広氏に話をうかがった。

新たな専門書ブランド「Next Publishing」の立ち上げ

 「Next Publishing」は、書籍を一般の書店では販売しないため、電子書籍(PDF/EPUB)版をネットから購入するか、オンラインショップのアマゾンが提供しているプリント・オン・デマンド(POD)サービスを利用して、紙に印刷・製本された書籍を購入するかのいずれかとなる。なぜ、電子書籍と紙の本の両方を提供することにしたのか、編集者の錦戸陽子と、技術面からそれを支えた福浦一広氏に話をうかがった。

MarkeZine編集部(以下MZ):「Next Publishing」が5月にスタートして、その第一弾として刊行されたタイトルのうちの1冊がこの『DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門』です。現在注目のアドテクノロジー「DSP/RTB」は、MarkeZineの読者にとっても非常に関心の高いテーマですが、この本がこの時期に出たことにまず驚きました。この「Next Publishing」ブランドを立ち上げることになった経緯からうかがいたいのですが。

『DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門』(写真はPOD版)
横山隆治、菅原健一、楳田良輝 著
印刷書籍版 2,940円(税込)/電子書籍版 1,890円(税込)
『DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門』横山隆治、菅原健一、楳田良輝 著 印刷書籍版 2,940円(税込)  電子書籍版 1,890円(税込)

錦戸:インプレスR&Dというのは、インプレスグループの中でも特殊なところで、もともとネットビジネス関連の書籍や『インターネット白書』など、インターネットについてのリサーチ、先端的な情報、ユーザー動向をリサーチしながらそれを出版していくというのがひとつのミッションです。

 それとともに、普通の出版の形態――いわゆる取次を通して一般書店に流すビジネスは、ずっと市場が縮小していますので、電子書籍やオンデマンド印刷など、これまでとは違った出版流通モデルの可能性を探ることを発足当時から研究課題としています。

インプレスR&D インターネットメディア総合研究所 副所長/白書・書籍編集グループ 編集長である錦戸陽子氏
インプレスR&D インターネットメディア総合研究所 副所長/新世代書籍編集グループ 編集長 錦戸陽子氏

 電子書籍については、白書などから派生する高額の調査レポートを、オンデマンド印刷と電子版で流していくというシステムからビジネスを始めました。

 そして、「libura PRO(ライブラプロ)」という、オンデマンド印刷をバックヤードに持っている電子モールをつくりまして、電子版がほしいお客さんは電子版だけをダウンロードする、オンデマンド印刷の場合はプラス1万円というビジネス構造をつくりました。注文が来たら大日本印刷にオンデマンド印刷してもらって発送するかたちで。

MZ:では、電子書籍とオンデマンド印刷の両方を使うのは、「Next Publishing」が初めてではないんですね?

錦戸:そうなんです。そういうのを2年くらい前からやっているうちに「アマゾン プリント・オン・デマンド(POD)」が出てきたんです。出てくると思ってなかったので、自分たちでつくったんですけど(笑)。そのあと2010年の12月に、福浦を中心に電子出版の専門誌『OnDeck(オンデッキ)』を創刊しました。

福浦:オンデッキはこれ自身がEPUBでつくられた電子雑誌なんですけど、先にアマゾンPODを使っていました。今回、錦戸のほうからこういう本(DSP/RTB入門)をなるべく早く出したいという話が来たときに、アマゾンPODは経験済みだったので、これを使ったほうが早いということになったんです。

「Next Publishing」は、電子書籍(PDF/EPUB)とアマゾンPODで書籍を提供
「Next Publishing」シリーズは、電子書籍(PDF/EPUB)とアマゾンPOD(プリントオンデマンド)で提供している

錦戸:DSP/RTBは、一般の書店で売るにはテーマとしてちょっと早いんですね。そうなると、売れる書店が限られてしまうので設計しづらかったんですけど、アマゾンだったら確実に売れることはわかっていたので、このシステム(アマゾンPOD)を使おうと。それで、せっかくやるならちゃんとしたブランドを立ち上げようという話になって。

MZ:ブランドありきでどんな本を入れようかではなく、この本が最初にあったと。

錦戸:そうです。もともと3年くらい研究してきたことがあったので、企画が持ちあがってから本ができるまでは1か月くらいでした。

MZ:そのスピード感がすごいですよね。

錦戸:ええ。ずっと一般書店向けの書籍だけをやっていたら、急に一足飛びにはできないと思います。

書店のオンデマンド印刷とも連携

錦戸:もともとオンデマンド印刷って、少部数の専門領域の出版や、絶版になった本を延命させるためのシステムなんです。アマゾンPODも、絶版となった本をアマゾンが在庫として1冊は持っていたいということでやっていることであって、新刊を出すためのものじゃないんです。

福浦:実は「DSP/RTB入門」が売れている数は、アマゾンPOD史上最も多いんですよ。

錦戸:まず、アマゾンPODを新刊で使うこと自体が、オンデッキとこのNext Publishingしかないので。

MZ:先日、Next Publishingでは、アマゾンPODに加えて三省堂書店のオンデマンド印刷も使っていくと発表されてましたが。

錦戸:「この本は書店に扱わせないんですか?」と聞かれると、「これはオンデマンド商品なので」と答えていたんですが、書店がやっているオンデマンド印刷なら使えるなと。このシリーズは基本的には返品ありの流通モデルはやらないけれど、そうでなければ書店で扱ってもらってもいい。三省堂さんのオンデマンド印刷は、お客さんから注文が来たら神保町本店の店頭で印刷してお渡しするというモデル。オンデマンド印刷を持った書店とはどんどん提携していこうと思っています。


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