“ニーズはある”その感覚を信じて、素直にアウトプット
―― 「CocoPPa」は、ユーザーの8割以上が海外だと伺いました。つまり7月31日時点で、海外に960万人以上のユーザーを抱えていることになります。これは、最初から狙ったものですか。
「CocoPPa」をリリースするとき、ほんの少しだけ「海外でもイケるのでは」という思いがありました。でも、現地語で1から開発するお金はなかったので、最低限のレベルで4か国語に翻訳し、全世界へリリースしました。翻訳にかけた費用は、数万円くらいかな。
―― 数万円!
ええ。実は海外向けのマーケティング費用は、いまだに1円も使ってないんです。だから海外向けの投資は、翻訳費の数万円だけ(笑)。
―― 数万円でそれだけのユーザーを獲得した、と…。
ユーザーの口コミのおかげです。偶然このアプリを見つけてくれた方が「iPhoneでこんなことができるんだ!」とビックリしてくれる。その驚きが口コミを生み、多くの人に伝わったと思います。
―― ビックリが連鎖したんですね。
もうひとつ要因を挙げるなら、その「ビックリ」をノンバーバルで伝えられたことも大きかったです。例えばYoutubeのショートカットアイコンが、キラキラとレインボー色になっている。この画像を見るだけで「ビックリ!」ってなるわけです(笑)。それを、またInstagramで共有してくれる。この驚きの連鎖が、海外で広がった要因だと思います。
―― 日本で広がった理由も、同じですか。
驚きが連鎖したことは事実ですが、1にも2にも、競合がいなかったことが大きいです。当時アンドロイド端末では、着せ替えアプリが流行っていて、強いニーズがあることは分かっていました。でもiPhoneでは技術的な問題もあり、実現が難しかったのです。
―― 社内では、たくさんのアプリ企画があがると思いますが、Goサインを出すときの判断基準は「競合がいるかいないか」ですか。
それもあります。でも重要なのは、「生理的に欲しいかどうか」、ですね。
―― 生理的に。
そうです。例えば大手企業だと「数十億、数百億の市場規模があるから」「ターゲット層の可処分所得がいくらだから」と、妙にロジカルに考えるでしょう。でもそれって、「楽しいからやる」というスマホユーザー、特に女子ユーザーの感性とは違うと思うんです。
―― 感性に従う、ということですか。
もちろん、感性を養う勉強はしていますよ。私、流行のアプリはひたすら試してますから。でもロジカルには考えない。考えれば考えるほど、できない理由が見えてきちゃうんです。告白前にフラれる原因を見つけてしまい、告白できなくなる男子みたいに(笑)。
―― なるほど。ほかに信条はありますか。
新たなニーズを生み出そうとは思っていませんね。
―― なんと、ゆるいお言葉。
人間には長い歴史があります。だから、行動原理なんてもう決まってると思うんです。なのに、スマホが誕生したとき、社内であがったほとんどのアプリ企画に、位置情報が使われていたんですよ。
―― スマホの特徴を活かした企画だと思いますが…。
そうとも言えますが、私には、位置情報を使ってユーザーの新たなニーズや行動を生み出そうとしているように思えたんです。でも、そんなのムリだと思って。だからあるとき、「位置情報を使ったアプリ企画は禁止」にしました(笑)。
―― 禁止ですか。
スマホが生まれただけで、新たなニーズや行動が次々と生まれるなんて思えなかったんです。むしろ、ユーザーのニーズを拾い、スマホで届けられるサービスやアプリは何か、を考えるべきだと思いました。
―― スマホよりもユーザーを知ろう、ということですね。
そうです。だから私は「“2ちゃんねる”を見ろ」と言っています。「あれが大衆なんだ」と(笑)。
