3月16日、モバイル広告効果計測プラットフォームおよびマーケティングアナリティクスを提供するAppsFlyer Japan(以下、AppsFlyer)は、2020年におけるモバイルアプリのアンインストールに関するレポートを発表した。
サマリー
- ・世界の50%以上のアプリが30日以内にアンインストールされている
- ・ユーザーを掴む最も重要なタイミングは、インストール後「24時間」
- ・カテゴリー別では、ゲームアプリが最も高いアンインストール率を記録
- ・発展途上国におけるアンインストール率は先進国に比べ33%高い結果
- ・Androidのアンインストール率はiOSの2倍
- ・アンインストールはマーケティング予算の直接的な損失に
2020年1月と3月以降、アンインストール率が急上昇
AppsFlyerのデータによると、世界でインストールされているアプリの約2分の1が、ダウンロードされてから30日以内にアンインストールされていることがわかった。
インストール30日以内におけるアンインストール率のグラフを見ると、2020年1月と2020年3月以降でアンインストール率が急上昇している。
1月は新年と長期休暇明けという2つの要因によって新しいアクティベーションが起こり、3月以降は新型コロナウイルスの感染拡大による在宅時間の増加、およびモバイル接触時間の増加が起こった。
特に3月以降は、ゲーム業界のマーケターがユーザー獲得キャンペーンを積極的に実行したことで、ユーザーがモバイルアプリを新しく試す期間としてインストールアクティビティが増加した。これが同時にアンインストール数の増加にも直結したと考えられる。
インストール後24時間でアンインストール
ユーザーがアンインストールする理由を正確に特定し、最適化を戦略的に行うためには、時間の経過に伴うレートにも注意する必要がある。
AppsFlyerのデータによると、「インストール後24時間」がほとんどのユーザーがアプリをアンインストールするタイミングとなっていた。
インストール後30日間においてはすべてのカテゴリーで同様の傾向を示しているが、ソーシャルアプリとファイナンスアプリは他のカテゴリーの平均と比べてインストール後24時間のアンインストール率が35%高くなっている。
ゲームアプリの保管寿命が短くなっている
アンインストール率をアプリのカテゴリー別で見ると、ゲームアプリが最も高いアンインストール率となっている。
30日以内にアンインストールされるゲームアプリの約6割は、ユーザーが常に新しいタイトルを試す探索的な性質が要因だと考えられる。ユーザーは、ゲームアプリにおいてインストールをお試し感覚で行うため、そのゲームの第一印象がポジティブでない場合、瞬く間にアンインストールされると、AppsFlyerのレポートでは語られている。
また、世界的なハイパーカジュアルゲームとカジュアルゲームの人気により、ゲームの保管寿命が短くなっている。これらのジャンルでは、アンインストール率が特に高く、ハイパーカジュアルで72%、カジュアルで61%。一方で、ハードコアゲームにおいても、高度なゲーム攻略にかかる時間やコストに対してユーザーが諦めてしまうパターンもあり、高いアンインストール率となっている。
さらに、スマートフォンのストレージ容量が限界を迎えた時、ユーザーはプライベート写真や他カテゴリーのアプリよりも、ゲームアプリを優先的にアンインストールする傾向にある。それに比べて、ショッピング、フードデリバリー、その他ライフスタイル関連のアプリは、より長い保管寿命を持ち、より低いアンインストール率となっている。
アンインストール率、発展途上国で高い傾向も、先進国も平均40%超
世界地図におけるアンインストール率を見ると、発展途上市場と先進国市場が明確に区別されていることがわかった。
ブラジル(57%)、インド(59%)、インドネシア(59%)といった大規模な発展途上市場では、アンインストール率が最も高い割合を示している。全体として、発展途上国の平均アンインストール率は56%に達し、先進国(米国、英国、日本、韓国、フランス、ドイツ)の平均より3割程度高くなっている。
一方で、先進国もアンインストールを低く抑えられているわけではなく、平均40%を超える結果だった。
OS別アンインストール率の差はストレージ容量か
OS別のアンインストール率を見ると、Androidにおけるアンインストール率は、iOSでのアンインストールの2倍となっている。
各プラットフォームの主な違いは、「ストレージの容量」。Androidの多くは発展途上国で使用されており、平均的なAndroidデバイスのストレージは小さくなっている。結果、ユーザーは自分のデバイスに本当に必要なアプリのみを保持する。
また、平均的なiOSデバイスの品質は平均的なAndroidデバイスよりも高いため、パフォーマンス関連(特にアプリのクラッシュ)、セルラーネットワーク関連(低速)において、優れたユーザーエクスペリエンスを提供する。その結果、OSでは高いエンゲージメントを維持でき、アンインストール率低下に寄与しているとAppsFlyerは分析している。
2020年のアプリマーケ予算の月間平均損失は約600万円
2020年におけるアプリマーケティング予算の月間平均損失は約600万円で、2019年に比べ約7割増加と拡大している。
2019年に比べ増加した背景にはアプリあたりの平均アンインストール数が31%増加し、インストールあたりのコストが35%増加したショッピングカテゴリーがある。
ショッピング、フード&ドリンク、ファイナンスのアプリのCPIが高く、リストのトップになった。
これらの数字は、アンインストールという指標がアプリマーケティングにおいていかに重要かをマーケターに示している。
消費者のライフスタイルにおいて、今後モバイルアプリの役割は一層中心的なものになっていくことが予想される。広告主は、「アンインストール」という一つの指標の重要性を再確認し、適切な広告予算の投下および経営資源の配分によって、消費者が求めるものを押さえる必要があるだろう。
【レポート概要】
同レポートは、AppsFlyerが保有する2,000以上のアプリデータ、2020年1月~11月における約8億件のアプリインストールデータを基に、世界のモバイルアプリ市場のアンインストールに関する動向をまとめたもの。
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