eスポーツマーケティングの3つの課題
大いに盛り上がっているeスポーツ市場ではあるが、「マーケティングでの活用と言う点ではまだまだ可能性がある状態」と島袋氏は語る。なぜ、現場レベルでの活用が広がらないのか、その参入障壁として3つの壁があると島袋氏は指摘する。
第一の壁は「ターゲティングの壁」だ。ゲームタイトルごとにファン層の年齢層、価値観、ライフスタイルが異なる。自社のペルソナとどのゲームタイトル、どのチームのファン層が合致するのか、その判断基準が不明瞭で、マーケター自身がその界隈に詳しくないと起用しがたいという課題がある。
第二の壁は「価値算定の壁」だ。Jリーグやプロ野球のように、リーグ全体へのスポンサーシップといったわかりやすい投資の受け皿がない。大会やチームがゲームタイトルごとに乱立しており、施策が単発で終わりがちになり、投資対効果を可視化し、社内で説明するのが困難という状況がある。
第三の壁は「コミュニティの壁」だ。eスポーツのファンコミュニティは熱量が高い分、非常に繊細で、商業的な匂いに敏感、独特の作法への理解が必要となる。
一方で、eスポーツには従来のスポーツにはない特性もある。性別、年齢、国籍、障害の有無を超え、対戦できるのだ。あらゆる境界を超えたジャンルとして、地方公共団体が町おこしの文脈で大会を開催する事例も増えている。
3つの壁を越える鍵は、プロチームとの協業
では、3つの壁を乗り越え、eスポーツマーケティングで成果を得るにはどうすればよいのか。島袋氏は具体的な解決策を示した。
ターゲティングの壁に対しては、ブランドに合う熱狂の見つけ方が重要になる。SCARZが2025年に保有しているタイトルは、『Pokémon UNITE』、『グランツーリスモ』、『第五人格(IdentityV)』、『レインボーシックス シージ』、『VALORANT』、『大乱闘スマッシュブラザーズ』、『Honor of Kings』など多岐にわたる。島袋氏は、中でも『VALORANT』が、現在参加者の熱量が最も高いゲームだと推奨する。
「日本におけるeスポーツの特徴的な動きとして、推し活文化との親和性が高まっている点が挙げられます。皆様のブランドと親和性の高いタイトルを選定してコミュニティに入っていくことが重要です。その点、我々のようなプロeスポーツチームが仲介者・媒介者となり、皆様のマーケティング支援に伴走します」(島袋氏)
一般的なアクティベーション手法としては、eスポーツチームのユニフォームでのスポンサーのロゴ掲出があるが、実は他にも様々な手法が提供されている。
たとえば、SCARZはファンコミュニティとコミュニケーションの場となるイベントを主催している。オフラインイベントは、渋谷パルコのパルコ劇場での『VALORANT』パブリックビューイングや、GINZA SIXでの『第五人格』リアルメタバースイベントなど、J.フロント リテイリンググループの資産を活用して展開。
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また人気芸能人やVTuberも参加する「SCARZ CUP」では、直近のイベント配信では平均同時視聴者数13.5万人、アーカイブ動画累計視聴回数353万再生、出演者総フォロワー1,502万人、告知総インプレッション2,063万という規模を誇っている。
次に事例として、カゴメと、フィリップスの取り組みを紹介する。
