ブランドの解像度を上げる多様なクリエイティブ
――新たな方針のもと、具体的にどのような施策を実行されたのでしょうか。
石川:最大の商戦である初売り(2025年1月1日~13日)に向けて、2024年の10月からファネル別のクリエイティブ制作を本格化させました。
ミドルファネル向けには、ブランド解像度を上げるクリエイティブを制作。たとえば、デザイナー自身が顔出しで商品のデザインに込めた意図を語る動画や、インフルエンサーによるARASを使ったテーブルコーディネートの解説動画などです。他にも、セールのお祭り感を演出するものから、お皿に目や手をつけたパペット風の動画まで、とにかく多様なクリエイティブを試しました。
田島:これは、「クリエイティブマルチプライヤー」という考え方で、ブランドの世界観や製品の良さを多様な面から伝えるべく、訴求軸と広告フォーマットを変えた多様なクリエイティブを、かつ大量に用意することでAIの学習を加速させ、パフォーマンスを最大化させるものです。
――配信設定では、どのような工夫をされましたか。
田島:鍵となったのは、Metaの自動化ソリューション「ASC(Advantage+セールスキャンペーン)」の活用です。ASCは、AIが最適な配信先やクリエイティブの組み合わせを自動で判断する機能で、従来の手動設定に比べて効率的に成果を上げられます。
ARASではこれまで「購入」目的のASCを活用していましたが、今回はそれに加え、『コンテンツビュー』目的のASCも並走させました。これは、商品を閲覧する意欲が高いユーザーにリーチし、質の高いサイト訪問を増やすことが狙いです。
この2つを組み合わせることで、「今すぐ購入したい層」と「これからファンになる可能性のある潜在層」双方への効率的なアプローチが可能になります。
石川:これらの仕組みを最大化させるために、10月から12月にかけて精査してきたクリエイティブを、初売り期間に一気に投入しました。ASCのAIが学習を重ねることで、それぞれのユーザーに最適なクリエイティブが届く状態を作れたと思います。
初売りセールでROAS+51%、工場のキャパを超える「嬉しい悲鳴」
――成果はいかがでしたか?
石川:大成功でした。初売り期間のROASは前年比で51%改善、サイト訪問数は169%増を記録しました。想定を超える注文で工場の生産キャパシティが限界に達し、泣く泣く配信をセーブせざるを得ないほどの反響でした。
――なぜこれほどの成果につながったのか、成功の要因を分析いただけますか。
田島:ファネル戦略と、それを支える「クリエイティブの量と質」がかみ合ったことです。ターゲット心理に合わせたクリエイティブが用意されていなければ、戦略の効果は半減します。キャンペーン設計とクリエイティブ戦略を分断せず、一体で考え抜いた点が勝因だと考えています。
石川:チームの決断力とPDCAの速さも大きかったと思います。10月に方針を決めてから、わずか3ヵ月で初売りという大勝負に臨めたのは、チーム全員がファネル戦略とクリエイティブ多様化の重要性を理解し、同じ方向を向いて走れたからです。

