「AIドリブン・グロース」の全貌:顧客接点にもたらす変革
MZ:そうした状況のなかで、マツリカは「AIドリブン・グロース」という概念を提唱されています。このAIドリブン・グロースという概念と、それがBtoBマーケティングにもたらすインパクトを教えてください。
中谷:AIドリブン・グロースとは、字義どおり「AI主導で企業・事業成長を実現すること」です。
「グロース(成長)」というところが重要な点です。特に日本ではテクノロジー・AIへの投資が、社内業務の「効率化」や「コスト削減」のために採択されがちですが、本来はトップラインを上げるための直接的な投資でなければなりません。人間の社内的な業務の工数削減に留まらず、顧客接点においてもAIが判断し、AIが実行することによって、人間が使える「1日8時間」という枠を超えた成長を実現できる投資となります。

MZ:「AIドリブン・グロース」がBtoBマーケティングにもたらすインパクトはどんなものでしょう?
中谷:BtoBマーケティングにおけるAIドリブン・グロースの鍵は、「人間がやって当然」という枠を外し、AIによって顧客接点の体験を改善していくことにあります。
特に改善余地が大きいのは、企業と顧客の最初の接点となりうるWebサイトやコンテンツです。検索などで企業・サービスを知って、そこから一番最初にたどり着くWebコンテンツや記事、資料などを含め、情報収集のあり方や顧客体験を改善していくことが、一番最初に着手すべきポイントだと考えています。
MZ:これはグローバル的な流れなのでしょうか?
中谷:グローバル的な流れです。たとえば2024年から2025年にかけてセールス&マーケティング領域で非常に注目された言葉に「AI SDR(Sales Development Representative)」があります。
米国の最先端の(Inbound)AI SDRは、顧客が自社サイトやコンテンツに触れた瞬間に、AIがインサイドセールスとして接客を始めます。顧客とコミュニケーションを取りながら、コンバージョンへ誘導したり、営業へつないだりして、パイプラインを増やすのがミッションです。つまり、いかにWebサイトの「入口」で顧客の離脱を防ぎ、顧客体験と問い合わせ獲得数を上げるか、という点にAIが活用されているのです。
CVR向上に加え、質の高いゼロパーティーデータの獲得も
MZ:「Mazrica Engage(マツリカエンゲージ)」は、まさにその最初の顧客接点を担うエージェントなのですね。具体的にどのようなものなのか教えてください。
中谷:「Mazrica Engage(マツリカエンゲージ)」は顧客接点に介在し、最適な情報・コンテンツをお客様に届けるAIエージェントです。
お客様に情報を届ける経路は、大きく2つあります。1つはWebサイト来訪時にAIが接客するという経路です。もう1つは、インサイドセールスや営業/マーケが資料を提供する際に、AIが説明・追加提示・ヒアリングといった一連の顧客対応まで担う経路です。今回は、Web体験を中心に特長を説明します。
Webサイトの接客といえば、「従来のチャットボットと何が違うのか」と疑問を持たれる方もいるかもしれません。最大の違いは、「Mazrica Engage(マツリカエンゲージ)」は「人間らしい自然言語コミュニケーションで接客すること」です。
人が事前にシナリオを細かく作るのではなく、お客様への説明に必要な資料やナレッジを投入すれば、AIエージェント自身が自律的に「今どの情報を出すか」「お客様にどんなことを伺うか」を判断し、対話して適切な情報を届ける。従来のチャットボットが一問一答形式で、決められた回答しか答えられないのに対し、AIエージェントは、状況に応じて適切なヒアリングをしながら、パーソナライズされた情報・コンテンツを提供します。これにより、お客様の理解度を上げたり、「もっといろいろな情報が欲しい」という意欲をわかせたりする存在です。
MZ:そうした顧客体験の向上により、商談化率や売上向上につながっていくのですか?
中谷:そうですね。「今すぐこの情報が欲しい」ということに対して瞬時にレスポンスし、正しい情報提供によって顧客体験を上げていくことで、コンバージョン向上につながると期待できます。
そして、セールス&マーケティング領域におけるもう1つ大きいインパクトがあります。それが、極めて質の高いデータが収集できることです。
MA(マーケティングオートメーション)で得られるページ閲覧などの行動ログではなく、お客様が自発的に発したテキスト情報から、どんなニーズや課題を抱えているのか、何をしたいのかといった詳細な生の声を得ることができます。いわゆるゼロパーティーデータ、もしくはファーストパーティーインテントデータといわれる情報です。
たとえば、お客様が「〇〇という機能はありますか」と尋ねた場合、AIは単に回答するだけでなく、その質問内容を「特定の課題を持つ見込み客」としてデータ化します。従来の行動ログでは分からなかったこの具体的なニーズが、後の営業活動における仮説の精度を劇的に高めるのです。
数字からの推測ではなく、お客様が直接、自身の言葉でそのニーズを表明してくれる。これをデータとして使えるというところは非常にインパクトが大きいですし、今までこういったソリューションがなかったので、画期的なところだと考えています。

