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AIリサーチの「98%普及」が招いた落とし穴──4割が直面するエラーと、求められる“人間の眼”

AI時代のリサーチャーに求められる新役割──“品質管理ディレクター”へ

 AI導入の障壁は、技術の限界ではなく“人と組織の準備不足”に集中している。「学習・試行のための時間不足」(32%)、「トレーニング不足」(32%)、「ツール統合の難しさ」(28%)、「社内ポリシーの制限」(25%)が上位を占め、AIが高度化すればするほど、人のスキルと体制整備の必要性が逆に高まっている。

 この構造は、日本企業ではより鮮明だ。属人的な調査プロセス、部門間のサイロ化、稟議の多段階化などが、AI活用のスピードを抑制する形で立ちはだかる。「AIを導入しても成果が出ない」──そうした嘆きの裏側には、ツールの性能ではなく、“組織の仕組み”そのものに問題が潜んでいるケースが多い。

 では、日本企業のマーケターは何から始めるべきか。

 まず、いきなり全社導入を目指すのではなく、文献レビュー、自由回答分析、要約など“限定タスクでのPoC”から着手するのが現実的だ。次に、AI出力の検証プロセスを明確に定めること。特に日本企業にとって重要なのは「どの部分はAIに任せ」「どの部分は人間が必ず判断するのか」を職務レベルで明確にすることだ。

 AIの得意・不得意をチームで共有し、ナレッジとして蓄積する取り組みも欠かせない。日本企業には“暗黙知”が多く残るが、AI時代にはそれを明文化しない限り属人性が排除できず、再現性も上がらない。

2030年のリサーチ現場はどう進化するのか?

 調査では、2030年に向けてリサーチャーが期待するAIの進化像も示されている。61%が「AIは意思決定のパートナーになる」と回答し、AIによる調査票草案の自動生成(56%)、シンセティックデータ活用(53%)、プロジェクトセットアップやコーディングの自動化(48%)、予測分析(44%)、より深いインサイト生成(43%)など、“高度化した知的業務のAI化”に期待が集まっている。

 AIが単なる効率化ツールから“戦略パートナー”へ変化していく未来を、多くのリサーチャーが予見していると言える。

 AIが調査業務を“圧倒的に速くし”、さらには精度面でも“やや賢く”したことは間違いない。しかし同時に、品質リスクが増大し、説明可能性や透明性への要求が強まっている。こうした状況下で価値を増しているのは、AIの出力を監督し、判断し、説明できる人間の能力だ。

 AI全盛の時代において、リサーチャーの価値は「データを読む人」から「AIの出力を管理し判断する人」、すなわち“品質管理ディレクター”へと拡張されつつある。日本企業がこの変化を真正面から捉え、AIと人間の役割分担を戦略的に再設計できるかが、今後のマーケティング活動全体の競争力を左右するだろう。

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この記事の著者

岡 徳之(オカ ノリユキ)

編集者・ライター。東京、シンガポール、オランダの3拠点で編集プロダクション「Livit」を運営。各国のライター、カメラマンと連携し、海外のビジネス・テクノロジー・マーケティング情報を日本の読者に届ける。企業のオウンドメディアの企画・運営にも携わる。

●ウェブサイト「Livit」

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2026/01/20 08:30 https://markezine.jp/article/detail/50195

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