SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2026 Spring

業界キーパーソンと探る 注目キーワード大研究(AD)

さらば、デジタル看板。歴史的変遷が示す、AI時代のWebサイトの勝ち筋【高広伯彦氏×マツリカ中谷氏】

Webサイトは「閲覧」から「対話」へ。ポスト・インバウンドのアプローチ

MZ:情報を隠すのではなく、積極的に知見を公開していくべきとのことですが、そうなると企業のWebサイトの役割はどのように変化するのでしょうか。

高広:大きく2つの道があると考えています。1つは、生成AIに拾ってもらうために、あえてオープンインターネット上に情報を出していくというシンプルなアプローチです。しかしこれだけでは、SEOと同じく「AIに拾われて回答の一部に出る」だけに留まります。

 企業が本当にやりたいのは「自分たちの顧客だけに、特別な情報を届けたい」ということですよね。そこで私が提唱しているのが、「ポスト・インバウンドマーケティング」という2つ目の道です。これは、オープンなネットには情報を出さず、RAG(検索拡張生成)技術を使って「自社のAI」にだけ学習させる方法です。ここに、企業と顧客との関係をアップデートする大きなチャンスがあります。

画像を説明するテキストなくても可

MZ:具体的にはどのような形になるのでしょうか?

高広:これまでのインバウンドマーケティングは、「資料をダウンロードしてもらう代わりにメールアドレスを得る」という交換条件でした。これからは、「ユーザー情報を登録した人だけが、その企業の独自データにアクセスできるAIと話せる」という形に変わります。

 その対話型AIは、オープンなインターネットにはない、企業側の独自情報を学習しています。つまり、各社が持っている深いナレッジを「顧客専用のAI」として提供できるようになるわけです。こうなると、Webサイトの役割も激変します。単なる会社情報やカタログではなく、「その企業独自の生成AIポータルの入り口」になるイメージです。Webサイト自体がユーザーとの「対話のためのツール」となり、そこで行われるやり取りこそが「ポスト・インバウンドマーケティング」になると考えています。

中谷:高広さんが指摘した通り、これまでのLPやWebサイトは、単なる「看板」や「チラシ」のような存在に過ぎず、ユーザーに対して「書いてあることを自力で読み解いてください」と強要し、誰に対しても同じ情報を届けるものになっていました。

 一方、ユーザーは明確な目的を持ってWebサイトを訪れています。そこで私たちマツリカでは、ユーザーが「その時に知りたいこと」をAIが即座に回答するAIエージェント「Mazrica Engage(マツリカエンゲージ)」というソリューションを開発しました。これは、ユーザーが求める「価値ある情報」をAIが提供し、その対価としてユーザーから「顧客情報」を提供していただく仕組みです。重要なのは、情報の提供と個人情報の提供を『等価交換』にするという点です。「双方が価値を感じられる」という新しい関係性を築くためのプロダクトです。

高広:料金を知りたいだけなのに、何も書いていないWebサイトは山ほどありますよね。「料金を知りたければ問い合わせフォームへ」というのは、意外とハードルが高いものです。対話型AIで何でも聞けるとなれば、心理的なハードルが下がり、これまで取りこぼしていた潜在層も拾い上げることができるはずです。

価値交換から「価値共創」へ。マーケティングの本質回帰

MZ:AI時代の次なる一手として、マーケターは顧客にどう接するべきだとお考えですか?

高広:マーケティングの本質に立ち返る必要があります。コトラーもドラッカーも「マーケティングは売上を上げるものだ」と直接的に入っておらず、「見込み顧客を獲得するものだ」とは言っていません。彼らが語っているのは顧客にとっての「価値」の話です。

 BtoBマーケティングでは「リード獲得」や「セールス連携」が重視されがちですが、より上位の概念としては「いかに価値を生み出すか」の一点に尽きます。経済学的な「価値交換」の考え方では、企業が作った製品(価値)を、顧客がお金と交換していました。しかし、ここ20年ほどの潮流は「(売り手側の)企業だけでは価値を作れない。価値は顧客と共に創るもの」という考え方、すなわち「価値共創」へとシフトしています。

 「価値共創」では、お客さんが製品を「どう使うか」「どう判断するか」という部分が重要になります。これには、お客さん自身の持つ知識やスキルが大きく影響します。つまり、「企業側の知識・スキル」と「お客さん側の知識・スキル」を掛け合わせることで初めて価値が生まれるのです。

 私が行うマーケティングセミナーでは、「想定するお客さんが、御社の商品を使いこなすために必要な知識やスキルは何か?」を書き出してもらうワークショップを行うのですが、これがなかなか書けないんですね。しかし、これからのマーケティングでは、単なる属性によるセグメンテーションではなく、「その人が持っているナレッジやスキル」を踏まえ、その力を“貸してもらう”というアプローチが必要です。

 この考え方をWebサイトに当てはめると、重要なのは「AIを使って、いかに顧客との対話を通じて『価値共創』できる場にするか」という点です。「自分たちが価値を作る」という発想から、「お客さんと共に価値を作る」という視点へアップグレードできるかが問われています。

MZ:「価値共創」とはいえ、やはり自社の詳細な情報をAIチャットで出すことで、問い合わせが減ってしまうことを懸念する企業も多いと思います。

中谷:超短期で見れば、情報をオープンにすることで一時的にリード獲得数が落ちる可能性はあります。まだ「この会社は役立つ情報を出してくれる」という信頼を獲得できていない過渡期には起こり得ることです。しかし長期的に見れば、質の高いコンテンツを継続的に提供し、対話を通じて信頼関係を築いていけば、お客さんは必ずついてきます。一時的なリスクはあっても、長期的には必ず伸びていくと確信しています。

画像を説明するテキストなくても可

高広:「得られるもの(リード)」だけでなく、「支払っているもの(コスト)」にも目を向けるべきです。営業担当者が顧客対応に費やしている時間はすべてコストです。生成AIを導入し、インバウンド対応が対話型AIに進化すれば、この「支払うコスト」は劇的に減ります。人間が行っていた「説明時間」というコストをAIに置き換え、削減できた人的リソースをより生産性の高い戦略に振り分ける。これこそがAI導入の真のインパクトです。

次のページ
日本企業こそ「最も生成AI活用に適している」

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
業界キーパーソンと探る 注目キーワード大研究連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社マツリカ

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2026/02/04 10:00 https://markezine.jp/article/detail/50245

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング