キャリア富裕層と資産家富裕層
もう一つの問い「どのような富裕層にポテンシャルがあるのか」という点についても検討します。当然、商材によってターゲットは異なるので、答えを一つに絞ることはできません。しかし、今回の調査の中でポテンシャルがありながらきちんと捉えられていない富裕層群が見えてきました。それは、世帯年収3,000万円以上の富裕層です。
この層の大きな特徴は単に超富裕層の一歩手前という点だけでなく、年収・資産の形成方法にあります。
世帯年収5,000万円以上では、31.7%が親から1億円以上の資産を受け継いでいるのに対し、世帯年収3,000万円以上は23.8%に留まります。
この事実から、世帯年収帯によって、年収の金額だけでなく中身が異なる可能性が見えてきます。世帯年収5,000万円以上の層は、給与所得だけでなく、親から受け継いだ金融資産や不動産等からの所得がある程度あると考えられる一方、世帯年収3,000万円以上の層は自身の給与が年収の大半を占めると考えられます。
つまり、世帯年収3,000万円以上の層は、親の資産に頼らず自らの力で現在の年収までたどり着いた人が多いといえそうです。実際にこの層は、外資系企業の社員や医師の比率が世帯年収5,000万円以上と比べてもやや高い傾向にあります。世帯年収3,000万円以上の層は競争を勝ち抜き、給与所得の高い職業に就いた、いわば「キャリア富裕層」だといえそうです。
一方で、世帯年収5,000万円以上の層は、もちろん自身の給与所得もありますが、受け継いだ金融資産や不動産から安定した収入がある伝統的な富裕層、いわば「資産家富裕層」といえます。このような親世代からの資産継承はベビーブーマー世代の高齢化にともなって世界的に増加しており、「Great Wealth Transfer」と呼ばれる大きなトレンドとなっています。
一括りに富裕層とはいえない、消費や仕事への意識の違い
キャリア富裕層と資産家富裕層の違いは消費や仕事への意識にも顕著に表れます。
消費意識については、世帯年収5,000万円を超える資産家富裕層になると、買い物がご褒美という感覚や、生活を楽しくするためにお金を使うという感覚が薄れていきます。基本的に必要なもの、欲しいものは手に入れられるからこそ、何かを買うという行動そのものではなく、何を買うべきかという選択が重要になってくると考えられます。
一方でキャリア富裕層は、将来に備えるための資産形成も途上で、資産家富裕層と比較すると自由に使えるお金も限られるため、思い切った消費がご褒美であるという感覚が残っています。また、強い上昇志向を持つからこそ、消費で自らの成功や努力を再確認する意味合いもあるでしょう。
消費意識と同様に、仕事に対する捉え方も、キャリア富裕層と資産家富裕層で微妙に異なります。
キャリア富裕層のほうが、資産家富裕層より自己実現、自己成長欲求が強い傾向にあります。やはり自身のやりたいことと仕事を一致させることが理想で、そのために自身を成長させてさらにキャリアを理想の状態にしていく意識が強いと考えられます。
一方で、資産家富裕層は給与所得以外の所得が一定程度あり、さらに年収や資産の面でも既に超富裕層といえることから、個人的な野心や上昇志向に比べ、より大局的な視点を持っていると思われます。キャリア形成よりも自身の資産をどのように活用するかや、自己実現以外の方向性にリソースを割く傾向があると思われます。
