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グローバルの風向き、トレンドを知る。海外カンファレンスレポート

「C」に関わる業界キーパーソンの羅針盤 広告マーケ領域に特化した「CES C Space」レポート


注目ブース:マリオット・インターナショナルのコマースメディア展開

 ここからはC Spaceで見聞きしたブース・講演の中から、印象的だったものをいくつかご紹介したいと思います。

 基調講演やパネルディスカッションが行われるMariposa Ballroom内に出展していた企業の中で、ぜひ読者の皆さまにもチェックしていただきたいのが、コマースメディアの展開に力を入れているMarriott Internationalです。ブースでは、旅行者向けに設計されたメディアネットワーク「MARRIOTT MEDIA」について詳しく説明が行われていました。

Marriott Internationalのブース
Marriott Internationalのブース

 同社の会員組織「Marriott Bonvoy(マリオット・ボンヴォイ)」は世界で2億6,000万人のファーストパーティデータを保有し、2025年夏、「MARRIOTT MEDIA」として本格的にコマースメディアのグローバル展開を開始しました。以下の3本柱のメニューを用意しています。

  • 客室内テレビやWi-Fi Login page
  • オウンドメディアでのアプリ、メール
  • 自社メディア以外のプログラマティックやソーシャルメディアへの配信

 会場ではユナイテッド航空とのコラボレーション事例資料を配布していました。既存のリソースを丁寧に、かつ何年もかけて商品化にたどり着いたそうで、このプロセスは日本企業にとっても学ぶ点が多々ありそうです。

ヤニック・ボロレ氏とマーティン・ソレル氏、業界の重鎮2人が語ったこと

 C Spaceには「Storytellers Stage」というメインステージが設けられています。今年はこのステージに登壇した、広告会社ハヴァスのヤニック・ボロレCEO兼会長、そしてWPPの前CEOであり、S4 Capital創業者・エグゼクティブチェアマンであるサー・マーティン・ソレル氏の講演を、会場で聴講しました。それぞれ内容を簡単にご紹介したいと思います。

ヤニック・ボロレ氏の基調講演

 ヤニック・ボロレCEOが、CESの基調講演に選ばれたこと自体、非常に意義深い出来事でした。広告会社のトップが基調講演で登壇するのは、極めてレアなケースではないかと思います。CESではインタビュー形式の配信用動画「C Space Studio」(詳しくは後述)があり、ここで広告会社の方の登場例は多数ありますが、基調講演のメインステージでの登壇は筆者の記憶にはありません。

 さらに彼は、ヴィヴァンディの監査役会会長、メディア企業のトップでもあります。

 広告会社の視点とメディア企業の視点。その両方を一人の登壇者が語る構成に、聴講者の多くが頷きながら耳を傾けていた姿が印象的でした。

ハヴァスのヤニック・ボロレCEO兼会長
ハヴァスのヤニック・ボロレCEO兼会長

 講演では、ハヴァス独自の統合AIプラットフォーム「Ava」が発表され、「AIファースト企業」への転換が宣言されました。Avaという名称は、「Havas」の中央に位置する3文字に由来しています。「Ava」が社内の知識資産と、最高レベルの大規模言語モデル(LLM)へのアクセスを統合し、ブリーフから画期的なアイデア創出までを、記録的なスピードで実現するプラットフォームであることが紹介されました。

 特に印象的だったのは、過去のデジタル化の際に起きた「デジタル担当」と「旧来型メディア担当」の分断を二度と繰り返さない、という強い意志が明確に示された点でした。

 さらに講演開始前、同社ブースで撮影した一般参加者の写真をもとに、わずか15分で映画の予告編を制作し、基調講演の途中でAIを駆使して会場のスクリーンに投影するという手の込んだ演出も行われました。オンラインでは伝わりにくかったかもしれませんが、ライブ感とイマーシブ感を同時に成立させたこの試みは、会場内の聴講者から大きな拍手を集めました。

サー・マーティン・ソレル氏の講演

 WPP創業者であり、S4 Capitalのエグゼクティブチェアマン兼創設者であるサー・マーティン・ソレル氏は今年も精力的に複数の講演に登壇されました。S4 Capitalのデジタル実働部隊であるMonksは、CESでも存在感を示しており、今回新設されたFoundryエリアにも同社のロゴが掲出されていました。

 CES 2025で、ソレル氏は「2023年はAI WOW、2024年はAI HOW、2025年はAI NOW」と語っていましたが、とりわけ生成AIがクリエイターに与える影響を重視している点が印象的でした。そして今年は、AIが変える広告ビジネスの収益構造、業界に関わる方々の意識改革について語られました。

2人の話から学べること、感じたこと

 メディア、広告、デジタルマーケティングは、かつて明確に分かれた縦割り産業でした。しかし現在では、メディアがイベントやセミナーを主催し、広告会社が設計やコンテンツ制作を担い、デジタルマーケティングが全体を統合する──こうした役割の重なりは、もはや特別なものではありません。

 市場を越境すれば競合関係は生まれますが、それ以上に進んでいるのは「役割の再編」です。この状態を表す言葉が「業際」だとすれば、C Spaceはまさに、業際が可視化された空間だと言えます。業際という視点と「C」を重ね合わせることで、これまで言語化しきれなかった違和感や手応えが、少し整理されて見えてきます。

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この記事の著者

菊地 伸行(キクチ ノブユキ)

株式会社デジタルマイス 代表取締役社長

日本経済新聞社入社後、アメリカ西海岸に駐在。帰国後、日経電子版、デジタル、グローバル、メディアビジネスの業務を担当。現在は株式会社デジタルマイス代表取締役社長として、広報・宣伝のデジタルでの情報発信の支援を行う一方、コラム執筆や講演活動を行う。CESに関しては出張前の準備のための講演「CES2026~2025年12月までにできること~」や視察レポート等マーケティング支援を...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/01/28 07:20 https://markezine.jp/article/detail/50321

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