もはや企業を“選別”する側へ。人気YouTuber「Sidemen」が仕掛けるVC設立
影響力の行使がさらに進んだ例として、英国の人気YouTubeグループ「Sidemen」によるUpside VCの設立が挙げられる。Sidemenは総フォロワー数1.5億人超、累計視聴回数50億回以上を誇るクリエイター集団であり、2025年に約2,500万ドル規模のベンチャーキャピタルファンドを立ち上げた。
Upside VCは、消費者向けテクノロジーやブランドを中心に投資を行っており、Howbout(スケジュール共有アプリ)、Mile(高級会員制サービス)、Nimbi(プラスチックフリーのカミソリブランド)などが投資先として知られている。
特徴的なのは、Upside VCが資金提供と同時に、Sidemen自身の巨大なオーディエンスへのアクセスを提供している点である。投資先企業は、広告を大量に投下しなくても、市場に一気に接続できる。ここでは、影響力は広告手段でも資本の補助でもなく、市場そのものを成立させるインフラとして機能している。
この段階に至ると、インフルエンサーという言葉では実態を捉えきれない。彼らはもはや企業に選ばれる存在ではなく、企業を選別し、市場を動かす主体になっているのである。
外注先から「共創パートナー」へ。企業に突きつけられた関係性のアップデート
これらの潮流は、インフルエンサー活用の手法をアップデートすれば済む話ではない。企業側に求められているのは、関係性の前提そのものを見直すことである。
単発の案件発注や短期ROIを前提とした付き合い方では、影響力の大きいインフルエンサーほど関与しなくなる可能性が高い。なぜなら彼らにとって、影響力は消費するものではなく、将来価値に投じる資産になりつつあるからだ。
今後、企業が向き合うべき相手は「広告を出してくれる人」ではなく、「自社の成功確率を一緒に引き上げてくれる存在」である。そこでは、以下の要素が重要になる。
- 情報開示の透明性
- 意思決定への参加余地
- 長期的なリターン設計
インフルエンサーとの関係を、外注管理の延長で捉え続ける企業と、共創のパートナーとして迎え入れる企業との間には、数年後に明確な差が生まれるだろう。
