様式としての家族から、感情のコミュニティへ
調査によると、約8割の人が「愛情や思いやりによる絆」こそが、家族を形づくるものだと考えています。これは、家族が制度や形式によって定義される存在から、情緒的なつながりによって成り立つものへと変化していることを示しています。ペトロンの事例に見られるように、多様な家族のかたちを前提にコミュニケーションを行うことは、きわめて現代的なアプローチだといえます。
そして、この家族観は、血縁や法的なつながりに限定されない、より広い意味での「家族」意識が広がっているようです。ここでは3つの事例とともに紹介させてください。

John Lewis – The Biginner
ジョン・ルイス(John Lewis)は、毎年クリスマスシーズンに「家族」をテーマにしたキャンペーンを展開することで知られる、英百貨店ブランドです。その中でも近年話題を集めたのが、里親として初めて子どもを迎える家族の物語を描いた作品でした。そこでは、準備をし、学び、失敗を重ねながら、少しずつ形づくられていく父親の姿が表現されています。家族とは決まった形があるものではなく、時間と経験を重ねるなかで育っていくもの——そのメッセージが多くの人の共感を呼んだキャンペーンです。
Absolut – Rainbow Campaign, Chosen Family
アブソルート(Absolut)は、LGBTQ+コミュニティに焦点を当てたキャンペーンを展開しました。そこでは理解や受容に悩むことのあった人々が、コミュニティとのつながりの中で、いきいきと生きる姿が描かれています。ここで描かれる「家族」とは、血縁や制度によるものではなく、愛情や支えを基に自ら選び取った存在(Chosen Family)です。つながりの中で生きる、というメッセージは、多くの人が自分自身の経験や価値観と重ねて受け止めることのできるものでした。
Google - Loretta
グーグルは、亡くなった妻ロレッタとの思い出を振り返る高齢の男性の姿を描き話題となりました。彼は妻のことを忘れないためにGoogle Assistantに「ロレッタはどんな人だった?」「何が好きだった?」と語りかけます。Assistantは、過去に残された写真やメモ、検索履歴などを手がかりに、二人の思い出を静かに呼び起こしていきます。このキャンペーンは、Googleの製品が日常生活に寄り添う存在であることを伝えると同時に、家族とは「今同じ時間を過ごす相手」だけでなく、記憶や愛情によって心の中で生き続ける存在でもあることを示しました。その描写は、多くの人の印象に残るものとなっています。
これらの事例や調査結果から浮かび上がるのは、家族がもはや血縁や制度といった枠組みだけで定義される存在ではないということです。里子を迎える過程で育まれる絆、コミュニティの中で支え合うつながり、そして亡くなったあとも記憶と愛情によって心に生き続ける存在。家族とは、そうした多様なかたちで人の人生に寄り添う、広義のつながりへと広がっていることがわかります。
