各社は成果可視化をどう行っている?変化の激しい環境で求められる判断
村田(ネスレ日本):また、ROIを可視化するため、MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)を内製化する仕組みも昨年から構築し始めました。
いきなり全ブランドへの展開は準備面で難しいため、まずは主要ブランドにおいてモデル構築に取り組んでいます。現時点では絶対的な拠り所というよりも参考情報として活用しており、たとえばメディアプランニングの場面で「昨年のキャンペーンではこの媒体のROIが良かったので今年も検討しよう」といった使い方をしています。
また、過去の結果を振り返るだけでなく、シミュレーション機能も備えており、限られた予算をどの媒体にどう配分するのが最適かを検討できるようになっています。これが昨年の大きな前進だったと思いますね。
仁賀田(リクルート):私たちも2019年からMMMを内製しています。MMMに答えを出してもらうというよりも、“健康診断”のように基準値として活用し、半期・四半期レベルの予算の幅を把握した上で、細部は実測値と試行錯誤で改善するサイクルを繰り返しています。
外部環境が急変する局面ではMMMだけでは対応しきれないため、日次で実数値を追いながら週次・月次でレビューし、効果が出なければ思い入れのある施策でも切り戻しを含めた修正案を実行する判断を行っています。
2016年にリクルートに入社。現在はマーケティング室 マーケティングリードおよび、「SUUMO」ブランドマネジメントグループのマネージャーを務める。
肥田(ライフネット生命):思い入れのある施策も切り戻すとは、意思決定者として非常につらい判断ですね。
仁賀田(リクルート):おっしゃる通り、厳しい判断です。ただ、そうした意思決定を行える文化を持つことが、変化の激しい環境下では不可欠だと考えています。
肥田(ライフネット生命):当社でも、予算最適配分の手段としてMMMに何度かチャレンジしてきました。ちょうどコロナ禍に行った分析では、売上の約半分は“自社でコントロール不可能な外部要因”によるものと示され、当時は継続を断念してしまいました。今回リクルートさんやネスレ日本さんのお話をうかがい、当社もMMMに対する期待値を適切に持てた状態で向き合えていたら、より良い形で活用できていたのではないかと認識を改めることができました。
ROIや売上効率だけで施策の評価をしない理由
村田(ネスレ日本):成果可視化の話をしてきましたが、当社の場合、そもそもROIや売上効率だけで判断するのは適切ではないと考えています。「ネスカフェ」「キットカット」をはじめ、スーパーマーケットやドラッグストアといった小売店頭で販売される商材が多い以上、店頭での想起につながるブランディング施策もしっかり行う必要があります。ROIだけを拠り所にすると、判断が歪んでしまう恐れがあります。先ほど「参考にしている」と申し上げたのは、そういった意味合いも含んでいます。
ただ、MMMの仕組みを導入したことで、関係者間でROI観点の数値を共通言語として持ち、議論ができるようになりました。これは今までになかった判断軸の一つであり、確実に前進していると感じています。
肥田(ライフネット生命):ネスレ日本さんはPRを活用した「キットカット」の販売が印象的ですが、広告を打ってすぐ店頭で購入への影響が表れるのでしょうか。それとも一定期間を経てから効果が出るのでしょうか。
村田(ネスレ日本):商材やターゲットによって考え方が異なります。「キットカット」は認知率が高いブランドですが、店頭での衝動買いが多いため、瞬時に想起してもらえるかが重要です。
一方、認知率が低いブランド・商材を購買につなげるには、中長期的なコミュニケーションが必要です。ブランドポートフォリオの中でも、認知状況に応じて戦略や出稿媒体を使い分けることが重要だと考えています。
