具体例:ビジネス成長のキーサクセスファクターを分析
セッションでは、データドリブンマーケティングの具体例として「ブランド意識のKSF(Key Success Factor)構造の可視化」が紹介された。これは、コンシューマー・ミックス・モデリング(CMM)を用いたKSF分析により、丸亀製麺の利用回数(=マーケティング成果)に影響する要因を紐解いていこうとする取り組みである。
具体的には、アンケート調査のデータを活用し、まずは「店舗の利用回数」に大きく影響するキードライバーを特定。次に、それらのキードライバーに紐づく評価項目とその関係性を可視化していった。
分析の結果、キードライバーとして挙がってきたのは「利用意向」だ。これは他の業種業態でも重要視されるような項目であり、特段目新しいものではない。
しかし、さらに下の構造を分析していくと、興味深い示唆が得られた。「利用意向」を支える要因として、「うどんがおいしい」という項目が非常に重要であることがわかったのだ。
「『うどんがおいしい』と一口に言っても、天ぷらがおいしい/安心して食べられる/他の店とは違う良さがあるなど方向性は分かれますが、統計上、利用意向に繋がりやすいのは『品質の良さ』であること。さらに『品質が良い』というブランドイメージは『1.安心して食べられる』『2.他の店とは違う良さがある』という2つのイメージと相関関係が強いことまで見えてきました。データサイエンスを用いると、具体的にどういったブランドイメージがお客様の利用意向を支えているのか、ここまで構造化できるのです」(高木氏)
肝心なのは、KSF分析の結果をどうマーケティングに落とし込むかだ。分析の結果を自社の言葉に置き換え、施策を企画・実行できるところが丸亀製麺の特長だとサイカ高木氏は強調する。
KSF分析の結果を踏まえ、丸亀製麺では2024年に2つのプロモーションを実施(図4)。具体的には、「1.安心して食べられる」というブランディングを強化するために、麺職人と製麺所を全面に押し出したブランディング広告を実施、また「2.他の店とは違う良さがある」という点の強化に向けて新商品「丸亀うどーなつ」を発売した。
常に仮説思考で動き、マーケティングモデルはさらに進化
もちろん、KSF分析は一度で終わるものではない。市場環境の変化や、丸亀製麺の体験価値向上を受けて、またKSFの構造も変わっていくからだ。
そのような中で、現在丸亀製麺が特に力を入れているのが、従業員のEXに着目した「ハピネス感動モデル」の検証。「店舗で働く従業員の満足度が高ければ、お客様への接客が向上し、それが感動体験、さらには繁盛につながるのではないか」という仮説からスタートしたプロジェクトである。
サイカ高木氏は、この相談を受けたとき「それは心理学の分野で、データサイエンスとして従業員のハピネスと売上をつなげる分析は難しいのでは……」と思ったそうだ。だが、間部氏の強い熱意と行動力でデータ基盤は1年もかからずにできたという。
「しっかりとした“仮説”を立て、それを実証する方法を考える。さらに実証した後は、どういうステップを踏めば実行に移せるかを関係者と議論しておく――仮説を起点に常に先を見据えながら動いていくのが、丸亀製麺の強さの理由だと感じています」(高木氏)
セッションの最後で紹介されたのは、まさに高木氏のコメントにあった「迅速な意思決定ができる組織づくり」に関する内容だった。

