キードライバーは「利用意向」と「ブランド想起」
「感性」の領域を重視する一方で、丸亀製麺は長年データサイエンスをマーケティングに取り入れ、業績に影響するあらゆる要素を分解し、最も事業成長に効くキードライバーを研究し続けている。この8年で同社が導き出した、事業成長のキードライバーは「利用意向」と「ブランド想起」の2つ。南雲氏は、「リテールビジネス(外食事業)ではお腹が空いた時に、そのブランドが真っ先に思い浮かぶか(=第一想起に入るか)」が勝負の分かれ目になると話す。
その第一想起に入るために特に重要となるのが、他社との違い・自社の強みである「POD(Point of Difference)」の徹底した浸透とフリークエンシーの最大化だ。「丸亀製麺は他とここが違う、だから美味しい」という認識を広く消費者へ浸透させることで、ブランドの利用意向(来店意向)が向上することがわかっているという。

2019年から続く「ここのうどんは、生きている。」というキャッチコピーは、POD施策の象徴だ。すべての店で粉からうどんをつくり、日々腕を磨く「麺職人」を全店に配置していることや、丸亀製麺のうどんの美味しさを一貫して発信し続けている。

「“丸亀製麺のうどんは美味しい”というイメージを高めるために、一貫したメッセージを発信し続けてきました。部下から『南雲さん、しつこいですね』と言われることも多くあるのですが(笑)、こうして消費者の頭の中にブランドイメージが蓄積されていくのだと思っています」
丸亀製麺のキーサクセスファクター(2)
事業成長のキードライバーは「利用意向」と「ブランド想起」である。これらを上げるには、PODの認知向上とフリークエンシーが重要である
同質化=レッドオーシャンを回避する「感性と主観」の力
核心に触れたのは、AI時代における意思決定のあり方だ。南雲氏は、「客観的なデータや論理性を重視しすぎていないか」と改めて問いかける。
「同じデータを見て、同じようなロジックを組めば、みんな同じ答えに行き着きます。その先にあるのは、同質化というレッドオーシャンです。我々もデータは当然見ますが、最後に選択するのは自分の感性であり、主観であるべきだと考えています。ここで他社との差が生まれてくるのではないでしょうか」(南雲氏)

南雲氏が意識して磨いているのは、「気づく感性」「見極める感性」「創る感性」の3つだ。たとえば、うどんから生まれた新商品『丸亀うどーなつ』や、無料薬味にしび辛ラー油とわかめを追加した施策は、当初は社内で反対もあったという。しかし、現場での観察を通じた「これはいける」という確信を優先した結果、大幅な客数増を実現した。
「丸亀製麺では年間数百アイデアをテストしています。その中から『これは!』というものに“気づく力”と“見極める感性”、そして自分の主観を信じ、多少の反対があっても推し進めていく力――数字を出さなければいけないマーケターには、こうした力が必要だと思います」(南雲氏)
感性とデータを行ったり来たりして、企画やコンセプトの精度を高め、最終的には主観で意思決定をする。先に触れたキーサクセス(1)「独自の価値創造」にも深く関わってくるポイントだ。
丸亀製麺のキーサクセスファクター(3)
データや客観では同質化に陥る。「感性」と「主観」こそが他との差を生む
