組織性質から考える、「営業」と「マーケ」の衝突要因
営業部門とマーケティング部門の連携がうまくいかないことが戦略実行のボトルネックとなっている企業は多い。では、なぜこの二者はどの企業でも対立しがちなのだろうか。丸山氏は組織の構造や性質から2つの組織を比較した。
まず営業領域は「売上」「利益」など、シンプルかつビジネスに直結したKPIを追うため、経営層からの投資優先度も高くなりやすい傾向にある。デジタルの寄与度はマーケと比べれば低いが、数十年単位で大規模な改革が起こるのも特徴だ。システム導入時には組織もチャネルも、対象顧客さえも変わるような、抜本的な見直しとなるケースが多い。
一方、マーケ領域のKPIは営業と比較して、複雑であり、間接的であり、課題も見えにくい。したがって投資予算は小さいが、急速に変化するメディアに対応するためには、ITやデジタルツールの活用が必須だ。営業のような大規模システム開発はできないものの、日々新しいテクノロジーを使いながら部分最適で進化している。ただ、使える予算は限られているのに、小さな積み重ねに「効果はあるのか」「売上を生むのか」と、営業や経営層から指摘されてしまいやすい。このような違いが両部門の衝突を生み、同じ方向を向けない理由の一つとなっている。
マーケの積み上げ式改善は組織にとって必要な進化だ。しかし、「マーケはこの“踊り場”から抜け出せなくなっているのでは」と丸山氏は指摘する。「マーケ部門は企業にとってどんな組織なのか」を考え直し、今こそ抜本的な組織改革に取り組むべきなのかもしれない。
マーケは組織を動かすドライバー、事業戦略部門へと移行せよ
丸山氏はブランド・マーケ戦略を組織の「位置づけ」の観点から解説する。現在多くの企業では、マーケはその他の部門と同様に事業戦略の下流に位置づけられ、広告宣伝などの散発的な活動をする組織として扱われがちだ。
しかし、丸山氏は「本来マーケティングとは、誰に何をどうやって売るかを考える中枢である」と説き、より事業戦略に密着した「組織を動かすドライバー」の役割に進化すべきだと主張する。
マーケが事業戦略に食い込むための具体的な手法として丸山氏が提示するのが、「インパクトパス」の設計。間接的だと思われがちなマーケのKPIが、主要KPIにどうインパクトを与えるのか徹底的に算出し、因果関係を突き止めていく方法だ。
こうした可視化は単なる分析に留まらず、マーケ部門が組織内での「説明責任」を果たすことにもつながると言えよう。目標を達成できなかった場合でも、「できませんでした」で終わらず、どこがボトルネックだったのかを論理的に説明できるようになる。結果、経営層に対して正当な根拠を示す「主体」となり、事業計画をともに推進する立ち位置へと変革していけるだろう。
さらに丸山氏は、組織構造を従来の「ファネル型」から「フライホイール型」へと転換することを推奨する。
「マーケが営業に渡したリードに営業が価値を見出せず無視する。その反応を見てマーケは『営業は動いてくれない』と対立してしまう……。なぜこんな不毛な対立が起きてしまうのかというと、見ている視点が違うからなんですね」(丸山氏)
断絶が起きやすかった従来の「ファネル型」組織に対するのが、顧客起点のマーケティング戦略を中心に目線を合わせる「フライホイール型」組織。マーケが立てた仮説を営業が現場で検証し、その結果を再びマーケの戦略にフィードバックするという循環を作るものだ。組織の壁を越えてPDCAを回し続けることで、戦略が現場の動きを加速させる本来の力を発揮するのである。

