「バズらせれば勝てる」選択を捨て、BtoCで証明した「体験のループ」
――飯髙さんといえばSNSマーケティングの第一人者です。その知見を活かしてUGCを活用した施策や、一気にバズらせて知名度を上げるという選択肢もあったのでは?
飯髙:正直に言えば、今からでもやろうと思えばできます(笑)。でも、あえて封印しました。ギフト事業でそれをやったら負けだと思っているからです。

バズによって一過性の認知を獲得しても、そこに「送り手の想い」や「受け取り手の感動」という深い体験がともなわなければ、ギフトとしての本質的な価値は伝わりません。BtoC向けのサービスはSEOや広告のクエリ争いになりがちですが、私たちが目指したのは「体験」を集客のエンジンにすることでした。
――「体験を集客のエンジンにする」とは、具体的にどのような結果につながったのでしょうか。
飯髙:BtoCで数年間、泥臭く体験の質を磨き続けた結果、非常に興味深いデータが得られました。一度使っていただいた方のリピート率が極めて高く、ロイヤルティの高いユーザー層が構築できたんです。さらに、ギフトを受け取った方がその体験に感動し、今度は自分が送り手になるという「体験のループ」が自然発生的に生まれ始めました。
この「受け取り手が送り手になる」という循環こそが、広告費をかけ続けて認知を維持するモデルとは一線を画す、私たちの真の強みになると考えています。このBtoCでの確かな手応えがあったからこそ、いよいよ本丸である法人ギフト市場へ、自信を持って本格参入する準備が整ったんです。
――法人領域において、この「選び直せる」体験は具体的にどう機能するのでしょうか。
飯髙:法人ギフトは個人間以上に「相手の好みがわからず、無難なものを選んでしまう」という悩みが深いです。選び直せる点は、わかりやすくその課題を解決します。あるクライアント企業様では、関係が始まったばかりの顧客にはGIFTFULを使い、好みを知り尽くした顧客には担当者が選んだ品物を贈るという使い分けをしています。
また、多くのBtoB企業がウェビナーやメール配信など画一的な施策をやり尽くしています。受け手からすれば、すべて同じアプローチです。そこに「コーヒーでも飲みながらご覧ください」と一言添えて、相手が好みを反映できるギフトが届いたらどうでしょう? この「気の利いた一歩」が、商談化率やLTVに直結します。実際、イベントの参加者にGIFTFULのギフトカードを配布したところ、商談化率が150%に向上したというデータも出ています。
ROIとオペレーションの壁をどう突破するか
――企業が導入を検討する際、ROIの観点や実務的な手間がハードルになることはありませんか?
飯髙:まさにそこが課題でした。ギフトは「ないと困る」サービスではなく「あったら良さそう」なサービス。そのため、商談で共感を得ても「オペレーションが組めない」という理由で検討止まりになるケースが多かったんです。そこで、私たちが運用フローを一緒に設計する「初期設計メニュー」を開始しました。SaaSでありながらあえて「人」が介在し、まずは成功体験を作ってもらうのです。
私は支援側にいた人間ですから、改善や解決の方法を網羅的に把握しています。経営課題も理解できていますので、お客様の話を聞けば、「こうするといいですよね」と提案ができる点が強みかもしれませんね。
ROIについても「受け取られて初めて課金される」という仕組みを強調して伝えています。たとえば、郵送DMにGIFTFULのQRコードを付けて送った施策では、ギフトを受け取った層からの商談化率は約8割に達しています。3,000円のギフトで質の高い商談が獲得できるなら、広告のCPA(顧客獲得単価)と比較しても十分に投資対効果は見合います。
私は以前から、CPAの微差に一喜一憂するような部分最適のマーケティングには懐疑的でした。それよりも「顧客に好かれる理由」をどう作るかが重要だと考えています。とはいえ、ビジネスである以上は数字がなければ受け入れてもらえません。マーケターやセールスに響く数字を意識して訴求しています。
