国民性を捉え直す。Z世代の価値観と交わる「翻訳」

山上:かつての日本社会では、間違っていると感じても周囲との調和を優先し、「NO」と言えない文化があったと思います。一方で、Z世代を中心に、自分の価値観を持ち、やりたくないことには「NO」と言える、新しい価値観が広がりつつあります。
この変化に着目し、green colaの持つ「NO」を、単なる否定ではなく「賢い選択」として再解釈しました。それが「NO is Smart」というメッセージです。不要なものを手放し、本当に必要なものだけを選び続けた先に、自分らしい答えがある、という考え方にしています。
米田:green colaが元々持っていた「NO」を、日本人のインサイトを捉えながら翻訳されたのですね。ターゲットはZ世代を中心とした若年層になりますか?
山上:はい。初年度は若年層をコアターゲットとしています。1つは「NO is Smart」という価値観との親和性と、コーラカテゴリー攻略の勝ち筋の2つを考慮して設定しました。まずは若年層全員が飲むコーラにする。そして彼らの行動を目撃した30代・40代の方にも「自分も飲んでみようかな」と手に取っていただき、徐々にターゲットを広げていくという戦略です。
142年売れ続ける三ツ矢サイダーの「変えないもの」「変えるべきもの」
米田:一方で、三ツ矢サイダーは142年続くロングセラーブランドです。まず現在のラインアップについて教えてください。
山下:三ツ矢サイダー本体や定番商品に加え、四季を感じる体験をお届けするシリーズや、自販機品などを展開し、年間で20品以上のリニューアルや新商品を投入しています。
通常の三ツ矢サイダーとともに人気な商品ラインアップ(一部)
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三ツ矢サイダーZERO
カロリー・糖質ゼロの三ツ矢サイダー。今年3月より中味・パッケージ共に大きく刷新。三ツ矢サイダー本体の味わいを楽しめるリニューアルをした。 -
三ツ矢サイダーW
ダブルの機能(食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする/食後の血糖値の上昇をおだやかにする)を持った特保商品。 -
三ツ矢特濃シリーズ
飲む果実体験!をコンセプトにしたシリーズで、オレンジ・グレープ・ピーチ・アップルなどのラインナップを有する。2026年には「三ツ矢特濃品質」を謳ったリニューアルを実施。 -
三ツ矢ウルトラストロングレモン(通称:ストレモ)
三ツ矢ブランド史上で最もすっぱいレモン味が特長の商品。クエン酸8,100mgと1日分のビタミンCを配合。食塩相当量0.19g/100mlを含有しており、熱中症対策にも最適。夏限定から年間定番に格上げ予定。
米田:142年前に売れた理由と、今も売れ続けている理由には違いがあるのでしょうか。
山下:はい。三ツ矢サイダーの歴史は、1884年、兵庫県多田村平野から湧き出た天然鉱泉を甘味をつけないまま瓶に詰め、「平野水」として販売したことから始まりました。当時炭酸水は「健康的な飲み物」「贅沢品」として飲まれており、この点が現代との大きな違いだと思います。
米田:山下さんは有糖炭酸(甘い炭酸飲料)カテゴリー戦略およびブランド戦略の策定・実行を統括している立場でいらっしゃいます。売れ続けるために重要なことについて、どのように考えていますか。
山下:まず、ブランドの寿命は、生活者ではなく我々マーケターに委ねられているという意識で日々の仕事に向き合っています。ロングセラーブランドとして愛され続けるために必要なことは、具体的に2つあると考えています。
一つは、変えないものを決めて、貫くことです。三ツ矢ブランドは「透明な爽快感で心を動かす Move your heart.」をパーパスに掲げています。これを変えないものとして定義し、どの施策も一貫してこのパーパスの傘のもと、実行しています。
もうひとつは、変えるべきものを見極めることです。特に今日のメインテーマであるインサイトは、時代とともに変わりゆくものであり、そのインサイトを常にアンテナ高くし的確に捉え、挑戦していく必要があります。これができるかどうかが、ロングセラーブランドが「古臭いブランド」に留まってしまうか、「歴史のある、進化し続けるブランド」であり続けられるかを分かつのだと思います。
米田:では具体的に、時代とともに変化するインサイトにどのように対応されていますか。
山下:今の世の中を見ていると、知らずのうちに疲れてしまう「無意識の疲労」のようなインサイトが強まっていると感じます。周囲が目まぐるしく変化して先行きが不透明でありながら、なおかつ効率・合理性重視の傾向が強まっています。情報過多で心や頭がいっぱいになることも多いですよね。そういった中で、三ツ矢サイダーは「透明な爽快感」、つまり澄みきる瞬間を提供できる点が価値になっていると捉えています。
