消費の8割がレコメンド経由。Netflixが「見せ方」で仕掛ける体験のパーソナライズ
次に変化しているのは「見せ方」だ。
Netflixは、1作品あたり数十種類のサムネイルが存在し、アクション志向には戦闘シーンが、恋愛志向には人物関係を強調した画像が表示されるといったように、ユーザーの視聴履歴や嗜好に応じて最適なビジュアルを表示している。
その結果として、Netflixは視聴コンテンツの約80%がレコメンド経由で消費されていると公表している。つまり、入り口の最適化が視聴体験全体を支配しているのだ。
ここでのマーケターの役割は、「どの切り口をどのユーザーに見せるか」を設計することだ。コンテンツ自体は変わらないが、表現の違いによってクリック率は大きく変動する。ユーザーは自分に最適化された入り口を提示されるため、視聴開始率が向上し、離脱率も低下する。コンテンツは固定でも、体験は生成されるのだ。
文脈に合わせて「生成」する。Nikeが生み出す自然な広告体験
広告領域では、この変化がさらに進んでいる。
NikeはMetaのAdvantage+を活用し、素材を組み合わせて広告を生成している。マーケターはランニングシーンや日常シーンの動画、機能性コピー、デザイン訴求コピーなど数十種類の素材を用意し、それらをAIがユーザーごとに組み合わせ、数百~数千のパターンを同時にテストする。
Metaによれば、このような自動化キャンペーンはコンバージョン単価の改善やROAS向上に寄与する傾向がある。
マーケターの役割は「1つの広告を作る」ことではなく、「どの素材がどの文脈で機能するか」を設計することへと変わる。ユーザーは自分の関心に合った表現に接触するため、広告体験はより自然になる。広告は完成品ではなく、生成される構造になった。
「トリガーとなる行動」を見出す。P&Gが挑む配信最適化
生成されたクリエイティブは、配信によってその価値が左右される。
P&GはAmazon広告を活用し、購買履歴や検索履歴に基づいて広告を最適化している。たとえば、洗剤を購入したユーザーには詰め替え商品を提示し、ベビー用品を購入したユーザーには関連商品を表示している。
Amazonによれば、こうした広告接触はブランド検索や購入率の向上に寄与する。P&Gのような大手消費財企業はAmazonを主要チャネルとして活用し、データドリブンなマーケティングを推進しているのだ。
このとき、マーケターは「誰に打ち出すか」ではなく、「どの行動をトリガーにするか」を設計する。これにより、商品ページ、レビュー、広告が連動し、ユーザーの意思決定プロセス全体が最適化される。
ユーザーは必要なタイミングで必要な提案が届くため、購買までのストレスが減少する。広告は「点」の施策ではなく、「文脈」の中で機能する仕組みとなった。
