1日9枠限定のイベントも。特別な顧客体験と店舗の新たな役割
——「SALON 23区 AOYAMA」では、顧客に対してどのような新しい体験価値を提供していくのでしょうか?
ただモノを買うだけでなく、空間での体験に価値を感じていただく「コト消費」を意識しています。たとえば、一番奥のVIPルームを活用し、先日「エクスクルーシブサロン」という完全予約制のクローズドイベントを初めて開催しました。1日9枠限定で、全国の店舗からお客様と担当スタイリストをご招待し、通常店舗では展開していない限定ラインや、完全受注生産による特別なアイテムなどを、ゆったりとご覧いただける時間をご用意しました。
今後は、こうした特別感のあるおもてなしだけでなく、「お客様同士のコミュニティ作り」にも挑戦したいと考えています。同じブランドを愛するお客様同士がつながる場を提供できればおもしろいですよね。
——顧客の声を直接聞く場としても機能しそうですね。
そうですね。先日開催したイベントでは、商品企画を担当するデザイナーが、自らお客様をご案内する機会も設けました。百貨店のインショップでは運営上なかなか実現が難しい取り組みですが、作り手がお客様と直接対話できることは、この店舗ならではの大きな価値だと感じています。
実際、ブランド側が考えている価値と、お客様が感じてくださっている価値には、想像以上にズレがあることも少なくありません。私たちにとっては“定番”と思っているアイテムでも、お客様にとっては特別な存在になっていることもあります。
そうしたリアルな声に直接触れられることは、商品開発だけでなく、接客やサービスの改善においても非常に重要です。単なる販売拠点ではなく、お客様との対話を通じてブランドを磨き続けるためのハブとして、この店舗を育てていきたいと考えています。
セクショナリズムを乗り越えて。内外の連携と共創で未知に挑む
——新業態を形にする上で、ハードルとなったのはどのような点でしたか?
一番大きなハードルは、社内のセクショナリズムを乗り越えることでした。
これまで当社では、「ブランド・商品づくり」はカンパニー側、「店舗運営」はリテール部門というように、それぞれ役割を分担してきました。しかし今回のフラッグシップストアは、そのどちらかだけでは成立しません。ブランドの世界観づくりから接客体験、運営まで、すべてを一体で考える必要がありました。
そのため当初は、「最終的な責任はどこが持つのか」「これまでの組織体制のままで本当に連携できるのか」といった声も少なくありませんでした。
ただ、何度も対話を重ねる中で、少しずつ意識が変わっていきました。部門単位で考えるのではなく、“会社として、この店舗にとって何がベストか”を全員で考えようという共通認識が生まれていったんです。
トップ同士の連携はもちろんですが、実際には現場レベルも含めた密なコミュニケーションが非常に重要でした。結果的に、このプロジェクトを通じて、これまで以上に部門を横断した共創の土壌が育まれたと感じています。
——今回は、店舗デザインや運営において外部パートナーとも積極的に連携されていますね。
そうですね。オンワード樫山には数多くの店舗がありますが、路面店のノウハウは決して多くありませんでした。そこで、新しい風を入れるために、店舗デザインは外部のデザイナーさんにお願いし、店舗のマネージャーも路面店経験が豊富な外部の方を新たに採用しました。プロモーション面でも、以前からブランド戦略をともにしている外部チームにサポートしていただいています。未知の領域に挑戦するからこそ、外部の専門的な知見や力を借りることは非常に重要だと感じています。
