9月25日と26日の2日間にわたって東京で開催された「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2007」の最後に登場したのは、Googleの広告営業企画 シニアマネージャーである高広伯彦氏。「新しい動画広告のコンテクスト~Google AdWords と YouTube」と題して講演を行った。
高広氏は、まず広告の歴史をひもとき、広告そのもののの本質は変わらないものの、それを取り巻く環境がいかに変わったかという点から解説を始めた。テレビが大衆を引き付けた時代から、テレビと人の関係は次第にパーソナルなものに変化し、現在では「テレビCM崩壊」といわれる状況になっているが、テレビCMのリーチはいまだにネットを上回るものがある。しかし、「広告がユーザーにとって必要な情報なのかどうか」という点が、重要なポイントであると高広氏は語る。
たとえば、Googleではクリックスルーレートが低い広告は表示されない。これは、ユーザーが必要としていないことを意味しており、広告主はユーザーを引き付ける広告を再検討することになる。これまでは、広告主が広告(費)を出せば媒体に掲載することができたが、現在のネット広告では、「自分の興味に合っているか」「自分が見ているサイトにふさわしいものか」といったユーザーの判断に大きく影響されるという。
続いて高広氏は今回のテーマである動画広告に話を進め、AdWordsの広告フォーマットのひとつとして展開している動画広告を紹介。AdWordsの動画広告は、Click-to-Play形式でユーザーがクリックすると再生が始まり、動画の長さは最大で2分までとなっている。動画のプレーヤーはGoogle製だが、最近米国で発表されたガジェット広告を使えば、広告主に合わせたプレーヤーをつくることもできる。
さらに、Googleの子会社である動画投稿サイトYouTubeで展開している動画広告に触れ、AdWordsでは“Advertising as Information”だが、YouTubeでは“Advertising as Contents”、つまりAdWordsとYouTubeでは広告の意味合いが異なるという。YouTubeは単なる動画投稿サイトではなく、人と人つなげる機能があり、マーケッターもコミュニティに参加することになる。
そのYouTubeの特長を踏まえて展開しているのが「フロントページビデオ広告」。これはYouTubeのサイトのフロントページに表示する動画広告で、ここに表示される動画はCMであると同時に、YouTubeの動画コンテンツのひとつであり、ユーザーはこの動画に対してコメントを付けたり、評価したりすることができる。もうひとつのフォーマットが「インビデオ広告」。YouTubeで公開している動画を再生したときに、画面下部に半透明のバナーを一定時間表示し、ユーザーが興味を持ってクリックすると、CM再生画面が表示されてCMを見ることができる。あくまでもCMの再生はユーザーの判断にゆだねられ、CMを見なければ見たい動画が始まらないといった強制的なCMの挿入はしない。
これらを総括して、高広氏は、オンライン動画広告で大切なことは、「ユーザーがイニシアティブをもつこと(User-Initiated)」「多様性があること(Diversity)」「適切な場所に配置すること(Relevant)」そして、YouTubeのスローガンでもある「Broadcast Yourself(自分自身も参加すること)」の4つを紹介して講演をしめくくった。
続いて質疑応答に入ると、飛び出したのは「ニコニコ動画についてはどう思うか」という質問。高広氏は「競争相手というよりマーケットを一緒に盛り上げる仲間だと考えている」と回答。ニコニコ動画の特長である、動画再生画面にコメントをつける機能については、「ワールドワイドのユーザーがそれにライブ感を感じるならそういうサービスもありえる」とし、ユーザー参加型プラットフォームとして、「YouTubeコンテスト」を提供していると答えた。また、「ニコニコ動画と一緒に運営されているニコニコ市場では、動画と商品を結びつけるところまでユーザーにゆだねられている点についてはどう思うか」という質問が出ると、「それは広告ではなく、マーケットプレイス」として、「まだまだ動画に慣れていない広告主は多く、Googleでは「Ad Creation Markeplace」という、広告主と広告クリエイターを結びつける場を提供している」と補足した。さらに「そうしたサービスもユーザーにとってよいと考えるなら検討するが、ロードマップには現在のところない」と結んだ。
動画というと、誰もが「ニコニコ動画」を引き合いに出したくなるほどホットな話題のためか、質疑応答が「ニコニコ動画」関連のものに終始して時間切れとなった。