一人っ子政策と高学歴者の急増
世界最大となる中国の人口は、2006年末時点で13億1,448万人。しかし、一人っ子政策の影響で人口の増加率は低下する傾向にあり、2006年は前年比で692万人増加したが、ピーク時の約3分の1。また、都市部と農村部の人口を比較すると、総人口に占める都市部の割合は43.9%。都市部の人口は増加しているが、農村部では2000年以降減少が続いている。
就業者数は2億8,310万人。雇用者の平均賃金は年々増加しており、2006年には20,856元に達し、1999年以降8年連続で、名目・実質賃金ともに10%を超える上昇率が続いている。また、近年、最低賃金の上昇も顕著で、引き上げ率も高いことから各地で賃金水準が急激に上昇しているという。
労働市場に大きな影響を与える労働力の供給形態としては、(1)大卒者など新卒者の就業、(2)農村労働力の都市部への移動(出稼ぎ)の2つがある。中国では、1999年から高等教育の拡大政策が採られ、大学入学者と卒業者が急増。大卒者の急増がホワイトカラーへの就業希望者の急増をもたらしているが、その受け皿となる企業部門での需要がそれに追いつかず、大卒者の雇用吸収を十分に行うことが困難な状況にある。
エリート教育の崩壊と人材の低レベル化
中国では、1978年に大学入試制度が復活した後も、エリート教育が維持されていた。しかし、1997年のアジア経済危機の後、高等教育機会の増大のため、1999年に教育部が高等教育の新入生定員枠を一気に拡大。前年の108万人に51.3万人を上乗せした159.3万人が新規の定員枠として定められた。これは、前年比47.3%の大幅な増加となる。
その後も新入生定員枠は拡大され、2006年には546万人に達し、1998年との比較では8年間で新入生の数は5倍に拡大。進学率も1999年の10.5%から2006年の22.0%へと急上昇している。しかし、これが結果的には卒業生の質の低下と就職難をもたらした。
かつては大卒者の職場への配属は国家が行っていたこともあったが、現在は学生の自助努力に任されている。卒業者自身の能力、職業に対する認識と、企業側の要求レベルとの間には大きなギャップがあり、卒業者側のレベルとのミスマッチが生じている。このため、2004年以降、大卒者の就業難の問題が表面化し、高等教育卒業者の就職率は、政府の発表では70%前後にとどまっている。この数字は、実際にはさらに低い可能性があるという。
この大卒者と企業の間でのミスマッチの問題は、日本の大卒者の就職においても同様で、リクルートの「就職ジャーナル」編集部が発表した「就職白書2007」でも、同様の指摘がなされている。それによると、学生自身の自己評価と企業からの評価を比較したとき、学生側は自己評価について53.9%が肯定的な評価をしているが、企業側では36.4%にとどまっている。学生の仕事に対する認識と自己分析の甘さについては、中国と日本を問わず、企業の悩みの種となっているようだ。
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