ディスプレイ広告の将来像
グーグルが昨年からWeb・街頭広告などを使って展開している「このスペースのこれから。」キャンペーン。“このスペース”とは、バナー広告やYouTubeなどディスプレイ広告全体を意味し、日本のマーケットに対して、いかにGoogleが、ディスプレイ広告にコミットしているかという意志を伝えるものだという。
近年、グーグルはディスプレイ広告の製品開発に注力している。この1年間で国内だけでも30以上の新たな機能・製品がローンチされた。また、ディスプレイ広告の売上自体も年間約25億ドル規模にまで成長。日本は世界でも2番目の市場であり、過去6ヶ月で売上が3倍になっているという。
シャイリッシュ・ラオ氏がセミナー内で、今後のトレンド、そしてグーグルが特に注力していくと掲げたディスプレイ広告の分野は、次の4つ。
- Target Your Audience(効果的なターゲティング)
- Engage With Video(動画を活用したエンゲージメント)
- Extend With Mobile(モバイル領域への拡大)
- Measure & Improve(ディスプレイ広告キャンペーンの効果測定)
セミナーでは、各分野の現状や活用できるGoogleのツール、そして最新事例やデータなどが紹介された。
効果的なターゲティング
グーグルは今まで、ディスプレイ広告分野において、設定したキーワードやテーマに基づいて関連性の高いWebサイトに広告を表示する「コンテンツターゲット」と、Googleディスプレイネットワーク上のWebサイトを指定して広告を出稿できる「プレイスメントターゲット」という2つのターゲティング機能を提供していた。これに加え、昨年4月から新たに、自社サイトを訪れたことのあるユーザーに対して広告を表示できる「リマーケティング」機能が国内でも利用できるようになっている。
セミナー内では、リマーケティング機能を利用した場合、平均してCTRが40%向上し、CPAが70%下がっているというデータも公表された。日本において、リマーケティング機能は非常に好評で、この半年間でリマーケティング機能を活用する広告主の数は5倍以上に膨れ上がっているという。これは世界的に見ても、驚異的なスピードだとラオ氏は漏らす。「日本の広告主は、凄くパフォーマンスを重視しているのではないか、というのが私の解釈です」(ラオ氏)
動画を活用したエンゲージメント
動画に関しては、主にYouTubeの状況と最新事例、データが紹介された。
- 35時間分の動画が毎分アップロードされている
- 140万の動画が毎分閲覧されている
- 国内では、この1年でYouTubeへのトラフィックが2割増加
- 月間利用者数は約3000万人
この他に、ハイビジョンや3Dといったフォーマットの動画や、NHK番組コレクション内で提供されている『プロジェクトX』やBANDAI CHANNELで提供されている『機動戦士ガンダム』といった素人による投稿以外のプレミアムコンテンツがYouTube内に多く登場していること、55歳以上と16歳以下のユーザー数がほぼ同等であり、幅広い年齢層に利用されていることが紹介された。ラオ氏は、「マーケッターにとってみれば、動画キャンペーンを実施時に、好きな年代層をターゲットでき、フルに音響やWebサイト独自の機能を使うことができる」とYouTubeのプロモーションプラットフォームとしての優位性を強調する。
機能・需要ともに向上するマストヘッド広告
今回特にアピールされたのが、YouTubeの「マストヘッド広告」だ。マストヘッドは、YouTubeトップページのナビゲーションバーの下に、ページと同じ幅で表示される広告形式。グーグルの子会社であるDoubleClickの技術により配信される。クリックすると拡張表示されるエキスパンドタイプなどのフォーマットも用意されている。
最近の傾向としては、マストヘッドを利用してインタラクティブな広告を配信する広告主が増えているという。例として挙げられたのは、ユービーアイソフトが実施した「マイケル・ジャクソン ザ・エクスペリエンス」というリズムアクションゲームソフトのキャンペーン。マイケル・ジャクソンのステップに合わせてユーザーがキーボードを操作する、というゲーム要素をマストヘッド広告内に用意することで、大きな成果をあげたという。
「この事例は静的ではなく、双方向のダイナミックな広告です。Webサイトで実現できる様々な機能を、広告の中に持って来ました。つまり、もう技術的な制限がないということです。(中略)我々の実施したニールセンジャパンによる統計調査では、ユーザーは『YouTubeのトップページでは広告を見たい』と言っています。また、マストヘッドのフォーマットなら、ユーザーはより長くYouTubeのトップページに留まるという事も判明しています。広告がコンテンツと同じくらい重要になっており、コンテンツと広告の線引きは難しくなっているということが分かります」(ラオ氏)
実際に、広告主からの需要も高く、2011年1月からの3カ月間で、マストヘッド広告は過去最高額の売上を達成しているという。「音/サイズなどテレビの持っているすべての属性に加え、YouTubeのプラットフォームでは双方向のやり取りができます。ブランド広告に活用するのに、YouTube以上のプラットフォームは考えられないほど魅力的だと考えています。(中略)次の1年間で、コンテストやゲーム、ライブストリームなど、クリエイティブなアイデアが爆発的に日本でも出てくるのではないでしょうか」とラオ氏は予想する。