野村総合研究所(以下、NRI)は、2012年7~8月、全国で15歳~79歳の男女個人1万人を対象に、訪問留置法で生活価値観や消費実態を尋ねる「生活者1万人アンケート」を実施した。当アンケートは1997年以降3年おきに実施し、今回で6回目。
低価格志向よりは、「品質」「自身のこだわり」「安全性」といった付加価値重視へ
今年から来年にかけて、景気が「悪くなる」と考える人の割合は全体の40.1%に達し、調査開始以来、最も高くなった。
消費税の引き上げが実現された場合、支出を控える費目については、「外食(41.1%)」「電気代・ガス代・水道代(35.9%)」「衣類・ファッション(35.5%)」「食料品関連(32.6%)」と、日常的な支出項目が上位をしめた。
生活者をとりまく経済環境の悪化が進む中で、消費価値観の変化傾向をみると、「とにかく安くて経済的なものを買う」という人は減少傾向に。逆に、「多少値段が高くても、品質の良いもの」「自分のライフスタイルへのこだわり」「安全性に配慮した商品」を求める傾向が強まっている。
情報が氾濫する中で、信頼できる商品・サービスを選びたいとする傾向が拡大
「無名なメーカーよりは有名メーカーの商品を買う」人の割合が2000年の32.9%から47.3%へと、一貫して上昇。また、「同等の機能・価格なら外国製より日本製を買う」という人も、2000年の32.7%から57.7%へと増えている。信頼できる商品・サービスを選ぶ意向が強くなっていることがわかる。
また、男女ともに若年層ほど、インターネット上の評価サイトやソーシャルメディア上の情報を、商品選択の際に重視している。このような生活者のICT(情報通信技術)利用の拡大を背景に、「使っている人の評判が気になる」という人は増加して29.0%に達する。
一方で、「商品やサービスに関する情報が多すぎて、困ることがある」と「商品やサービスに関する情報が不足していて、困ることがある」のどちらに近いかを尋ねた結果をみると、前者の考えを支持する人が全体の70.1%をしめる結果に。
また「事前に情報収集してから買う」人は2006年(28.9%)から2009年(35.8%)に大きく増加したのに対して、今回の調査では33.1%とやや減少。買い物時に参考となる情報や利用者の評判は気になるものの、いわば情報過多の状況下にあるため、自身でさまざまな情報を収集する傾向がやや頭打ちになっている模様。
インターネットショッピングが拡大する一方で、店舗チャネルの役割も重視
今回の調査ではインターネットショッピング利用者の割合が全体で38.0%に達しており、中でも30代の利用者の割合が大きく増加して58.2%になるなど、主たる購入チャネルの一つとして定着してきている。
「ふだんどのようなところから商品の情報をえているか」を分野別に尋ねたところ、「お店(店頭・店員)」を情報源とする割合が、2009年と2012年を比較すると上昇しています。特に男性では30代(AV機器・情報家電の場合)、女性では20代(化粧品の場合)で上昇割合が高くなっている。ICTを積極的に活用している若年層で、むしろ店頭・店員からの情報を重視する傾向が強まっている。
ICTの利用が進み、インターネットを活用したオンラインでの購買が進む一方で、インターネット上に情報が氾濫した結果、判断に迷う生活者が店舗に回帰し、店頭・店員から情報を得るという行動をとるようになっているとみらる。
このことは、最近O2Oと呼ばれるECでのビジネスモデルの方向性に通じる結果として、大変興味深いものといえる。情報過多の時代になっている現在、オンラインとオフラインを適切に組み合わせながら、信頼できる情報を生活者に提供していくことが企業に求められている。
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