「ネイティブ広告」とは何か
7月25日、「モバイル&ソーシャルWEEK 2014」(主催:日経BP社)の最終日に、「ネイティブ広告最前線 ~コンテンツを広告にする新たなプラットフォーム~」と題したパネルディスカッションが行われた。ネイティブ広告が注目を集める一方で、「ネイティブ(native)」という言葉が何を意味するのかを理解している人は少ない。モデレータの高広伯彦氏は最初に議論の土台となるプレゼンを行った。
まず紹介したのは、「Wikipedia」(英語版)の「Native Advertising」の定義である。
ネイティブ広告とは、ユーザー体験の文脈に沿ったコンテンツを提供することにより、
(ユーザーの)注意を得ようとする、オンライン広告の一手法である。
ネイティブ広告は、その広告が置かれた場所 ―媒体・プラットフォームなど― で、
ユーザーが体験する形式・機能と馴染むようなフォーマットをとる。
広告主の意図としては、広告を邪魔な存在でないようにすることで、
見込客が広告をクリックする率をあげることにある。
人々が触れているメディアと、広告そのものが、一体感があるように現れることから、
「ネイティブ」という言葉が参照され、使われるようになった。
インターネット広告推進協議会(JIAA)が立ち上げた「ネイティブアド研究会」の幹事に任命されたばかりの高広氏は、この定義を「非常によくできている。JIAAの研究会でも参考にすると思う」と述べた。
次に具体的なサービス名を含んだ資料として、米国の広告業界団体IABが昨年公開した「The Native Advertising Playbook」を紹介。以下は高広氏が作成したプレゼン資料。ネイティブ広告の6つのタイプを、ページごとにわかりやすく解説している。
「インフィード・ユニット」は、ソーシャルメディアやモバイルサイトに合ったフォーマットで、コンテンツや投稿メッセージの間に“feed”される形で現れるもの。Facebook、Twitterで見られる。「ペイドサーチ・ユニット」は、すでによく知られている検索連動型広告の形式。
「リコメンデーション・ウィジェット」は、サイト内、あるいは複数サイト間のコンテンツ・リコメンデーションの仕組を活用したフォーマットで、相関性の高いネイティブ広告を表示する。
「プロモーテッド・リスティング」は、ショッピングサイトやロケーションサービスなど、商業系のリスティングサービスに合ったフォーマットで、リコメンデーションの一種。
「ネイティブ要素を持つインアド(IABスタンダード)」は、IABフォーマットに合った広告枠に、コンテンツ形式の広告を配信するもので、既存のアドネットワークがネイティブ広告配信ネットワーク化する際にはこのかたちになる。
そして最後の「カスタム」は、カテゴライズは不可能。広告が、媒体側に合ったフォーマットで出される点は同じだが、この存在が「ネイティブ広告=記事広告」という誤解の原点となっているという。
高広氏はここでメルセデスの音楽コンテンツマーケティングを紹介。同社は2004年に「mixed tape」という音楽サイトを開設。ユーザー数は約250万、累計ダウンロード件数2800万件にものぼっている。米国では、こうしたコンテンツが音楽サイトにプレイリストのひとつとして登場し、それが音楽配信サイトでのネイティブ広告として動き出しているという。
ネイティブ広告の理想形と現実
では「ネイティブ広告の理想形」とは、どのようなものなのだろうか。まず、広告主が、コンテンツ制作とコンテンツのホスティングの両方を行う。そのコンテンツを媒体プラットフォームの「ネイティブ広告枠」に提供する。ユーザーはコンテンツの一体験として、ネイティブ広告からコンテンツを体験する、という流れだ。
しかし、広告主がコンテンツ制作とホスティングの両方を担うのは難しい。したがって、広告主と媒体の間にもう1社入る「コンテンツマーケティングプラットフォーム型」と呼ばれる形態をとることが多いという(上記スライドの次ページで紹介)。
ネイティブ広告の革新性について、高広氏は「ネイティブ広告はオンライン広告フォーマットのひとつで、バナーのような広告素材は存在しない。コンテンツのサマリーを広告素材として出せる。検索連動型広告以来の発明」と説明する。
さらに「ネイティブ広告のリンク先はコンテンツページであり、よく見られるランディングページとは違う。邪魔者にされがちな広告をユーザーに受け入れやすくすることは、広告主、媒体社、ユーザーの三者にとってメリットがある」と語り、パネルディスカッションへと移っていった。