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テレビも「視聴率」から「インプレッション」へ、指標とマインドを変えてみよう【横山氏に聞く・後編】

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2016/02/26 10:00

データやツールが出そろってきた一方で、硬直したデジタルマーケティングの考え方にとらわれてはいないでしょうか。日本のマーケティングが抱える本質的な問題を、横山隆治氏が解き明かします。

スマホで面白くなってきた

MarkeZine(MZ):横山さんは昨年12月に『リアル行動ターゲティング』(共著、日経BP社)、『新世代デジタルマーケティング』(インプレス)を出版されました。その本を手に取ったとき、横山さんのマーケティングについての自在な発想に驚きました。

横山:いまスマホによっていろいろ面白くなってますよね。これまでは「テレビは受け身のパッシブなメディア」「パソコンはユーザーが能動的に働きかけるアクティブなメディア」というシンプルな議論だったけれど、いまやパソコンは「情報を生産するツール」で、スマホは「情報を消費するツール」になっている。けれど、実はスマホというのはモードの幅が広いんです。FacebookやTwitterのタイムラインをずっと受け身で見てる人も多いけれど、非常に能動的に探索する場合もある。

株式会社デジタルインテリジェンス 代表取締役 横山隆治氏
株式会社デジタルインテリジェンス 代表取締役 横山隆治氏

ユーザーの“モード”で見ると、YouTubeはアクティブだけど、Facebookに流れてくる自動再生の動画はパッシブ。だから僕はテレビとYouTubeで同じCM素材を使うのは、あまり筋がよくないけれど、テレビとFacebook動画だったら同じ素材でもいいかなという考え方なんです。同じモードだから。

MZ:「ユーザーがどういうモードか」で考えると、今まで気付かなかった共通点が見えてきそうです。

横山:CMクリエイティブそのものが持ってるパフォーマンスも大事だけれど、放送される曜日や時間帯というタイミングも重要です。平日の朝、身支度しているときなのか、家に帰ってきてお風呂から出てきてゆっくり見ようとしているときなのか。誰が見てるのか、どんなコンテンツ(番組)のところにCMが入っているのかということも“変数”として関与しますよね。それに近いことがスマホでも起きている。昔みたいに、CPCやCPMのような単純な指標だけではとらえきれないんです。

テレビCMというのは、ある種個人戦で、一発ドンとリーチすればインパクトもある。オンラインで動画はシェアされてもそれはとっかかりにすぎないので、柔道の団体戦みたいに、次鋒、中堅…とそれを受けていく施策をシナリオをつくってやらないとあまり意味がない。せっかく消費者が「これ良かった」って反応をしてくるんだったら、その人に二の矢を放たないとね。

データを見ていると、不思議なことがたくさん起きる

横山:あるシャンプーのプロモーションで購買データと紐づけて広告配信の実験をしたとき、バナーでは一切ブランドチェンジが起こらなかったんですよ。動画でしか起こらなかった。バナーにはリマインド効果はあるんです。でも、もともとほかのブランドのシャンプーを買っていた人に、動画を送ったらブランドスイッチして買ってくれたというのが、そこで立証できた。

ポンプ式のシャンプーってだいたい1か月半くらいが購買サイクルでしょう。だから、買った直後より、ひと月たってからバナーを出すほうが購買率が高い。けれど見方によっては、広告を打たなくても買ってくれるであろう人に広告を打っていることも考えられます。

動画はバナーと比べて情報量が多いので、パフォーマンスの幅も広い。全然ダメなのもあれば、途中でスキップされるものもある。最初の5秒間くらいでスキップされたらなんのブランドかわからないけれど、バナーだったらすぐわかるからブランディング効果があるとかね、変なことがいっぱい起きるんですよ。やっぱり指標をどうとらえるかによって違うし。

MZ:一筋縄ではいかないというか、面白いですね。

横山:今では、スマホの画面をタップしたり、スクロールするときの指の動きや速さもわかるので、ユーザーがスマホのコンテンツに対して、どういうモードでコミットしているのか、ユーザーがどういう気持ちでコンテンツと向き合ったのかもわかるようになってきた。変数は多いけれど、逆に最適化するための材料は出そろってきてるんですよね。

最適化の方向を間違えてはいないか

MZ:可能性が広がる一方で、現場では逆にそれを狭めているようなことも起きていますね。

横山:たとえばセグメントですよね。従来のマスメディアではできないような精度の高いセグメントができると言うけれど、100分の1にセグメントできたから、単価が100倍になるかというとならないですよね。ターゲティング手法によっては、個人情報に紐づけはしていないものの、ユーザーからすると相当センシティブな話になる場合もある。そこは運用ルールも大事で、ある配信事業者は「5000人以下の配信ターゲティングは可能だけれど、やらない」というルールを設けていた。それは確かにひとつの見識で、それより狭めていっちゃうとどんどん個人に寄っていってしまう。

セグメントごとに打ち手やメッセージが変わるんだったら意味があるんですけど、コミュニケーションする相手だけ変えるというのは最適化の一面でしかない。クリエイティブも、もっと言えば「商品そのもの」も改善しなければならない場合もある。だからこそ、広告主に「これだけでは改善できないので、これとこれとこれをやりましょう」と、幅広い打ち手を提案できるようになってほしい。そうすることではじめて、広告主にとってのソリューションになるんです。

インターネット体験というのはすべての体験の中のほんの一部です。コンビニやドラッグストアの購買データを活用して広告を配信しているとき、レポートを見て「月曜日の購買率が高い、どうしてだろう」と思ったら実際に店頭に行ってみること。「月曜はその店の“ポイント3倍デー”だった」ということがわかったりする。答えはパソコンの中だけじゃなく、店頭にもあるんです。

MZ:横山さんの柔軟な発想は、広告マンとしてのバックグラウンドから来ているのでしょうか。

横山:海外にテレビCM撮影に行ったり、松任谷正隆さんをMCに洋楽番組を作ったり、ダイレクトマーケティングのためのマーチャンダイジングもやった。ビール会社の担当のときは、首都圏100万人試飲キャンペーンをやったりね。「シルバニアファミリー」や「ドラえもんラーメン」の商品化や、テレビアニメでは「Dr. スランプ」から「ドラゴンボール」への企画変更にも携わりました。

MZ:「シルバニアファミリー」も横山さんが?

横山:シルバニアファミリーの市場導入のときに僕が書いた企画書のフレーズは今でも憶えていますが、「ベストセラーよりロングセラー」「この商品を母親に買ってもらった女の子が娘をもつお母さんになったら、想いをこめて買い与えるようになる20~30年のシナリオを書きましょう」と。こうした長い時間軸でのブランド戦略やマーケティングに携わるなかで、いろんなことをやってきたし、考えてきた。だから製品があると、それを買ったり使ったりするいろんなシーンが頭の中に映像で浮かんでくるんですよね。


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