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「オムニチャネルはバズワードではない。スタンダードだ」キタムラ逸見、ラストセッションに込めた思い

2016/12/21 14:00

 「オムニチャネルは、企業全体の最適化なくして、実行できない」。これは、2016年11月10日(木)に開催された「MarkeZine Day 2016 OSAKA」にて、株式会社キタムラのオムニチャネル戦略を推進した逸見光次郎氏が、セッションを通して訴えた考え方である。当日は「オムニチャネルの現在地と未来像」と題し、国内外の事例に触れながら、オムニチャネルの成り立ち、現状、展望についてが語られた。「キタムラの逸見」としての最後のセッション。熱いプレゼンテーションとなった。

本記事の逸見氏の所属、肩書等は2016年11月11日時点のもので現在は退任しております。

リアルかWebか、分けること自体に意味はない

 来場者に向けて、逸見氏は「お客様に対して、リアルでもネットでも、コミュニケーションのあり方が大事」だと呼びかける。その延長に顧客満足があり、事業売上や利益の最大化がある、という逸見氏自身のスタンスを最初に語った。

 「ところでその上で、“オムニチャネル”という言葉はわかりづらい。“オムニ=あらゆる”+“チャネル=顧客接点”ということですが、顧客との接点作りに注力しておけばいい、という単一的な話ではないんです」

講演資料より抜粋して掲載(以下、同)

 たとえば、店頭で掲げている価格とECサイトでの価格が大きく違っていたら、PCとスマートフォンのメールマガジン上でお勧めされる内容が違っていたら、受け手となる顧客はどう思うだろうか? つまり現代は、誰もが持ち歩くスマートフォンと社内データベース(商品/購買/顧客のDB)がすべて連携した上で情報提供するのが当然だと強調する。

プレゼンテーションを進める株式会社キタムラ 執行役員 経営企画 オムニチャネル推進担当 逸見光次郎氏(肩書は11月11日時点)
プレゼンテーションを進める
株式会社キタムラ 執行役員 経営企画
オムニチャネル推進担当 逸見光次郎氏(肩書は2016年11月11日時点)

 小売り・販売業におけるECの役割の変遷を踏まえながら、現在の企業は、SNSを中心に顧客に情報を伝え、ネットで集客を行い、実店舗への来客増とEコマースの売上増の両方をかなえられる環境下にいることを確認した。

 「既にお客様の状況が、オムニチャネルそのもの。これからの時代は、店舗かWebかという棲み分けがなくなっていく。オムニチャネルにおけるECとは、企業のインフラそのものなのです。だから、事業の部分最適ではダメ。企業の基盤と捉え、会社全体の最適化をしないと、オムニチャネルは実現できません」

「オムニチャネル」とは、企業の経営戦略そのもの

 「オムニチャネル=全体最適化」が求められるからこそ、逸見氏は企業のオムニチャネル化について、経営陣のトップが決断すべき事項だと語る。その一例として、キタムラの代表取締役会長兼CEOである北村正志氏が、2015年1月に社員へ向けて送ったメッセージを挙げた。

 「会長の北村からは、これからは人や実店舗、現場をネット・ECで“強化・加速”する時代であることを意識せよという指針が示されました。そこでキタムラは、全国にある1,300の現場(店)と顧客を結ぶのがECという認識(顧客、店舗、ECの連携)を加速、徹底していったのです」

 全体最適化が求められるからこそ、まずは経営トップが指針を示す。指針に基づきながら、後は肌感覚がわかる現場が、EC事業部だけではなく全社を挙げて、在庫や管理などの「仕組みに関する工夫」と「商品・サービス開発」を両輪で回していく。オムニチャネル化で成果をあげるためのスタートライン、とも言い換えられそうだ。

 これらを踏まえながら、国内の優れたオムニチャネル事例として、小売りでは東急ハンズ(ハンズネット)、良品計画(MUJI Passport)、飲食ではすかいらーく(ガストアプリ)、メーカーECではリンナイ、BtoBtoCの事例としてパルコ「カエルパルコ」のほか、製造業の柳田織物社がシャツのEC販売へとモデルチェンジ、事務所にショールームを併設した例に触れる。

 「たとえば、アプリ上で商品情報や店頭在庫が確認できれば、来店していない顧客の時間をも購買にいたるプロセスとして共有できることになります。また、ネットで得られた情報を活用して、マーケティングだけでなくメニュー改善や商品開発にまで応用することもできます。こうした顧客との関係性から生まれた新たなシナジーこそ、オムニチャネルの価値なのです」


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