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140年の歴史が語る本質 日経が説くデジタル時代のメディア、広告の役割

日経はテクノロジーを使った「瓦版」

押久保:私自身もメディア側の人間ですが、広告および記事の配信やターゲティングの技術など様々なテクノロジーが進化する中で、やはりメディアに求められる役割が変化していることを実感しています。

石井:そうですね。考えてみれば、江戸時代の新聞である瓦版は、街の真ん中に立て札を置いて、「この続きが読みたければ、記事を買ってください」というやり方でコンテンツを提供していました。

 みんなが欲しい情報、あるいは「その人」が欲しい情報をしっかり売る、そういう時代だったんですよ。今はまた、テクノロジーの力を使い、瓦版のように「必要な人に欲しい情報を売る」という時代になってきつつあるのではないでしょうか。

渡辺:瓦版自体、コンテンツを持ち運ぶ「モバイル」の走りですね。ネットが登場してからメディア企業にとって良いことは一つもなくてやられっぱなしなんですが(笑)それこそデジタル時代の中でメディアはどう進化すれば良いか20年ぐらいずっと考え続けてきました。

 考え続けた結果「人が欲しいと思っている情報を届ける。その情報を買ってくれた人をしっかりと観察する」というシンプルな結論に辿りつきました。進化は原点にしかありません。そこで自分たちの状況に立ち返ってみると、十分にやれるようになってきている。本質的なことを追求してきた結果、テクノロジーが追いついてきた印象です。

 先ほども言いましたが、当社はOne to Oneが実現できるプラットフォームを目指して地道に取り組んできたので、この分野に関してはむしろテクノロジーカンパニーに近い体制がそろっています。表は新聞社、裏はかなりテクノロジー企業となっていて、おそらくデータ分析にかけている工数も、通販などの事業会社と同じくらいだと思っています。

 良いコンテンツを作ることは当たり前の十分条件で、さらにサービスとして磨きをかけていく姿勢が求められていますね。

オウンドメディアがあればメディアはいらない?

押久保:最後に、非メディア企業が運営するメディア、いわゆるオウンドメディアとメディア企業が運営するメディアとの関係についてお伺いします。デジタルならではの価値は「顧客と直接つながれること」に疑いの余地はありませんが、企業のオウンドメディアが上手く機能しているかというと、そうでもないのかなと感じます。

 オウンドメディアの取り組みを平たく言えば「メディア企業がやっていることをノウハウがない企業がやる」って話なので、難しい面もあるんじゃないかと予想していました。その中で花王さんではオウンドメディアをずっと続けていらっしゃいます。これはどのような理由があるのでしょうか?

石井:まさに良質なファーストパーティのデータを集めることが目的です。実際、当社のオウンドメディア「マイカジスタイル」は100万ほどのユニークユーザーがいますし、これらの方々に日常の家事の工夫を伝えていくことや、データを蓄積していることに意義があると考えています。

 ただ、ネットでリーチできる層がすべてではないんですよね。一般には、ネットでリーチできるのは全顧客層の数%と言われています。なので、オウンドメディアがすべてではありません。

 繰り返しになりますが、デジタルメディアの最終的な姿は、究極のパーソナライズだと思うんです。本当に欲しいというユーザーに、必要な情報が届く。そうすると結局、「どういうコンテンツをどういうお客さんに届けるか」になると思うので、そこで「広告の形をしたコンテンツを、別のメディアを通じて届ける」という選択肢もあると考えています。

渡辺:かつて「オウンドメディアがあればメディア企業のメディアはいらない」と言われたことがありました。企業がオウンドメディアを持つ意味はご指摘のとおり「顧客と直接つながれること」ですが、そもそもメディアを育てること自体のハードルがノウハウ、コスト、社内説得等の面で非常に高いです。やはり、我々のようなメディアのコンテンツと一緒に動く方が、オウンドメディアだけより効率が良いのが明らかになってきました。

 当社も、こうした市場の動向を踏まえ、広告主のコンテンツマーケティングを支援する「N-BRAND STUDIO 」という新しい組織を立ち上げました。具体的には、営業や制作に加え、編集経験者を多く揃え、“刺さる”コンテンツを作る専門部隊です。

 これにより、広告主が求めている「信頼性の高いメディアで」「潜在顧客層の視野を広げる」「刺さる」コンテンツを共同で作っていけるかな、と。オウンドメディアが足りない部分を補うパートナーとしての視点で取り組んでいけば良いのではと感じます。

石井:おっしゃるとおりです。今後の展開になりますが、指標作りやデータの整備も必要ですよね。刈り取りではありませんが、やはりデータを使って届けたいターゲットに対してどれだけメッセージが届いているかは精査する必要がありますから。いろいろな課題がありますが、広告主とメディア側がゴールを共有し、そこへ向かって精査していく時代に突入した感があります。

 質の高いお客様との接点を作るために、広告主のお金の使い方が変われば、全体を正常化することにもつながると思うんですよね。それを担保するには、データの整備や指標の整備が必要で、そこを両輪として回していかないといけません。

 たとえば、かつてはPVやUUの多さで効果を測っていましたが、スマホ全盛の世の中からすると、「必要な情報を必要な時に見て終わり」というコミュニケーションが増えているんですよ。とすると、闇雲にPVや滞在時間を延ばすのではなく、UUを増やす方向でデジタルコミュニケーションの設計を考えた方が良いという観点が生まれる。

 デジタルにより、お客様との距離が近くなったことは確かですよね。次に、そのデジタルの場でどのようなコンテンツをどう展開していくかは、やはりお客様のことをOne to Oneでどれだけ把握しているかが重要だと思います。中心にいるのはお客様ですから。その視点は、常に持ち続けようと考えています。

押久保:お二人にしか話せない内容の議論になったと思います。本日はありがとうございました。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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2017/06/26 11:00 https://markezine.jp/article/detail/26578

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