若年層マーケティング事業を手掛けるCA Young Labは、デジタルインファクトと共同で、国内YouTuber市場動向調査を実施した。
YouTuberが注目される背景と市場環境
スマートフォンの普及とともに、インターネットにおける動画視聴は幅広い世代に広がり、提供される動画コンテンツの数や種類も拡大が進んでいる。そんな中、近年独自の動画コンテンツを提供するYouTuberの存在が社会的にも注目されている。
YouTuberとは、世界最大規模の動画配信サイト「YouTube」上に自身の動画配信チャンネルを開設し、様々なテーマの動画コンテンツを通して情報発信を行う個人・または団体のクリエイターの総称。オリジナル性溢れる動画コンテンツは、若年層を中心に多くのユーザーを魅了し、一部の人気YouTuberは熱心なファン層を獲得し、視聴者の生活習慣や消費行動に大きな影響力を持ち始めている。
動画視聴の普及にともない、動画広告を活用したプロモーション活動が活発化している。2014年頃よりYouTuberの視聴者への影響力を活かし、主に若年層をターゲットとした商品・サービスをPRするプロモーション手法に高い注目が集まり、その利用が進みつつある。
YouTuberは、動画コンテンツをユーザーに無償で提供する対価として、動画の再生回数に応じてYouTube側から支払われる広告収入(YouTube広告収入)や、広告主とのタイアップ動画の制作によるタイアップ広告収入(タイアップ広告収入)、または自身が関わるリアルイベントの開催や関連グッズからの収入(イベント・グッズ等収入)などを得ている。
本調査では、YouTube広告収入、タイアップ広告収入、および、イベント・グッズ収入の年間総額を推計し市場規模として推計・予測を行った。
2017年の国内YouTuber市場規模は前年比約2.2倍の219億円に
2017年国内YouTuber市場規模は順調な成長を遂げ、前年比約2.2倍、219億円規模に拡大する見込み。
人気YouTuberが配信する動画コンテンツの継続的な高い視聴数と、新たなYouTuberの緩やかな増加にあわせて、YouTuberが提供する動画コンテンツの動画再生回数は増加の傾向にあり、YouTube広告の収入は引き続き増加傾向が見られる。
タイアップ広告収入は、従来広告主によるプロモーション需要の中心を担い、市場の成長を牽引してきた、スマートフォンゲーム会社による出稿増が一段落する一方で、非ゲームアプリや、家電、子供向け商材、エステやコスメなどのサービスを提供する広告主によるプロモーション需要が増加するなど、多様化が見られた。
また登録ユーザー数が数百万人規模のYouTuberは、グッズの販売やリアルイベントの開催による収入も増加するなど、収入モデルの多様化が進みつつあり、その活躍の場とそれに見合う対価を得る手法の幅が広がっている。
引き続きYouTuberの魅力的な個性や、その動画コンテンツが幅広いユーザーに支持されることで、動画コンテンツの再生回数が増加、その支持にも広がりが期待される。
これらを背景に、2022年の国内YouTuber市場は2017年比約2.6倍、579億円規模に達すると予想される。
YouTuberの数は増加傾向も、引き続き人材育成が課題
YouTubeにおいて、登録者数1万人以上のチャンネル数は毎年150%以上の大幅な増加を続けている。このことから、チャンネルを通した強い情報発信力を持つYouTuberの数もまた、持続的な増加傾向にあることがうかがえる。
2017年は、複数人数でコンテンツを配信するYouTuberや、女性YouTuberの活躍が顕著な傾向にあり、YouTuberの人材層の広がりが見られた。配信されるコンテンツは、純粋な娯楽エンターテインメント系のコンテンツから、英会話、料理、メイクなどのハウツー動画など、多岐に渡るものが提供されており、広告主とのタイアップのあり方にも多様化が見られる。
市場の持続的な成長のためには、新たなYouTuberの育成や活動支援への取り組みが、業界全体に求められている。
YouTuberを活用したタイアッププロモーションの課題は?
ユーザーの消費行動に大きな影響力を持つYouTuberは、広告主が視聴者とのあいだで、豊かなコミュニケーションを醸成するための手法として、大きな潜在需要が認められる。一方で、視聴者に対する適正かつ誤解のない情報提供のあるべき姿については、広告業界内においても議論がなされる。
また、企業がYouTuberを活用したプロモーションを実施するうえで、クリエイターであるYouTuberの活動への深い理解を前提に、視聴者とのコミュニケーションの設計や、プロモーション効果の適切な測定方法などについて、更なるノウハウの蓄積が求められる。
これらの取り組みが進むことにより、子供から大人まで幅広い層を魅了し続けるYouTuberを活用した視聴者との深いコミュニケーションが可能なタイアッププロモーション需要は引き続き順調に増加、市場全体の成長を牽引すると予想される。
※1 本調査はYouTuberを中心とするインフルエンサーマーケティング業界関連事業者へのヒアリング調査ならびに公開情報、調査主体およびデジタルインファクトが保有するデータ等を参考に実施。また、以下の基準を対象に市場規模を算出した。
YouTube広告収入:YouTubeを運営するGoogle社からYouTuberまたは、YouTuberを取りまとめて活動支援を行う事業者に対して支払われる広告収入。
タイアップ広告収入:広告主がYouTuberを起用したタイアップ動画制作に支払う広告費
イベント・グッズ収入:消費者が、YouTuberが関連するイベントへの参加やグッズ購入に支払う費用
※2 YouTube収入額は、Google社がYouTubeの広告収入に一定量率を乗じて支払われる仕組みとされており、その料率は将来的に可変的なもの。しかしながら、本調査における2018年以降の市場規模予測数値は、2017年12月時点の料率を前提として算出した。
※3 YouTube有力チャンネルは、YouTube上で登録者数が1万人以上のチャンネルを定義した。
■ 調査概要
調査主体:CA Young Lab
調査時期:2017年10~12月
調査方法:YouTuberを中心とするインフルエンサーマーケティング業界関連事業者へのヒアリング、調査主体ならびに調査機関が保有するデータ、公開情報の収集
調査対象:YouTuber市場
調査機関:デジタルインファクト
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