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世界的AI革命が生む「活用格差」。米国ユニコーン企業Moloco社CEOに聞く、マーケターの生存戦略

 生成AIの登場以来、ビジネスのあらゆる局面で最重要課題となっているAI活用。特にデジタルマーケティング領域では、その進化が事業の成長を大きく左右する。このような変革期において、企業やマーケターはどのような戦略を描くべきだろうか。本記事では、2025年6月に韓国で開催されたカンファレンス「Molocon25」にて、シリコンバレーで急成長を遂げるアドテク企業MolocoのCEO イクジン・アン氏に取材。日本のデジタル市場のポテンシャルをはじめ、AI時代の生存戦略や日本企業がグローバル市場で勝ち抜くためのヒントに迫った。

ここ10年ほどで、デジタルの大変革が起きた日本

──昨今のデジタル広告の潮流について、米国・アジア・そして日本の潮流それぞれに違いがありますか。所感を教えてください。

アン:各国で違いはあるものの、グローバル全体の潮流に大きな違いはないと考えています。各国・各分野でユニークなサービスやプロダクトが構築されており、それを支えるデジタルの仕組みが存在しています。

Moloco 共同創設者・最高経営責任者(CEO) イクジン・アン氏
YouTube、Googleでソフトウェアとマネタイズの経験を積み、2013年に米国シリコンバレーにてMolocoを共同設立した。MolocoではCEOとして、機械学習と研究開発への継続的な投資を主導。2023年にはゴールドマン・サックスより「2023年 最も卓越した起業家のひとり」として選出されている。またMolocoは、米Inc.誌が発表する「Inc. 5000」年次ランキングにおいて総合95位、サンフランシスコ都市圏では5位にランクイン。Great Place to WorkやDeloitte Fast 500企業としての評価を得るほか、AI技術をアドテク分野に組み込むべく取り組んでいる。

アン:私たちが日本に進出したのは2019年頃ですが、当時は「日本は他の市場と異なるから、厳しいだろう」と周囲から言われていました。しかし、2010年から2020年の間に、生活、広告、企業において大幅なデジタル変革が起こりました。フィーチャーフォンからスマートフォンへ変わり、現金決済からデジタル決済の割合が増え、電車内の広告も紙からデジタルへと移行しています。

 すべての国が少しずつデジタルを受け入れ、デジタル化へと舵を切っていることを肌で感じていますし、そのポテンシャルがある状況です。

AI革命は”都市部”から始まる

──直近3年ほどはAIについても目まぐるしく進化していますが、各国の違いをどのようにとらえてらっしゃいますか。

アン:AIの分野においは、国ごとに違いがあるというより、都市部と地方で違いが大きいと感じています

 また米国には多くのテック企業があり、特にシリコンバレーのテック企業は、AIによって自動化や、ROASの最適化を図っています。AI革命は、特にマーケティング分野を含め、既に始まっています。生活者もGoogle・Amazon・Instagramなど、様々なプラットフォームを通してその革命に触れているところです。

 都市部におけるAIのトレンドで言うと、AIを使うことで柔軟性をもって、各国・各業界・各企業に対応していく動きが見られています。一方で、国内向けAIも共に発展しており、共創することでより裾野が広がっている状況です。

 しかし、地方や伝統的な分野、政府などのAIの採用は非常にゆっくりです。これは米国、アジア、韓国、日本でも同じ傾向が見られます。

──日本のデジタル市場やAIの浸透についてはどのようにとらえていらっしゃいますか?

アン:各国共通の動きとして、速やかにAIを導入・浸透させ、活用していくフェーズに入ってきたと思っています。私の考えでは、市場にAIを受け入れる素地は既にあり、あとは心の準備と導入のためのリソースの問題だけだと認識しています

 日本は、AI革新の最前線の一つとなりうるポテンシャルを持つ国だと思っています。AI企業だけが努力をしているわけではなく、それ以外の民間企業や政府も生成AIに目を向けて取り組んでいます。また、生活者の意識もAI革命を受けて少しずつ変化してきているので、非常に可能性を感じますし、とても楽しみにしています。

 たとえばChatGPTについてですが、2年前にとあるフォーラムに参加した際、既に日本の方々はChatGPTを活用していました。

 私たちは、出前館様と一緒にAI基盤の広告プロダクトをローンチしておりますが、その結果は私自身も驚くほどの素晴らしい結果となりました。飲食店という伝統的な分野でも先進的な取り組みを行う、意識と準備ができていることがよくわかりました。

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この記事の著者

齋藤 ゆう(編集部)(サイトウ ユウ)

大学卒業後、広告代理店に入社しマーケターに。その後、事業会社に転職。金融・美容分野のマーケティング・企画・運営・セールスに携わる。2020年、翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/07/11 09:00 https://markezine.jp/article/detail/49449

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